毎年2月中旬~3月中旬にかけて行われる確定申告について、2024年(令和6年)はどのような変更があるのか、気になっている人も多いのではないでしょうか。
この記事では、国税庁から発表されている「令和5年分の所得税等の確定申告書」の様式案をもとに、個人として仮想通貨取引により生じた所得に対し確定申告される方に向けて、変更点と抑えておくべきポイントを解説します。
なお、2023年度分の確定申告の期間は、2024年(令和6年)2月16日~3月15日です。
2023年版確定申告の方法を今一度振り返りたい方はこちらの記事を参考にしてください。
2023年度分、仮想通貨の確定申告において変更はあるのか?
なにか変更がある予定なのか、「記入内容」および「申請方法」のふたつのポイントにわけて説明します。
記入内容
確定申告書には「第一表」と「第二表」があり、仮想通貨取引によって生じた所得に関して記入する欄はいずれにもあります。(赤枠内)
現在公表されている案では仮想通貨取引によって生じた所得を記入する欄に記入内容の変更はありませんので、これまでも確定申告を行ったことがある方は特にあらたに準備しておく情報はありません。
【第一表および第二表】
(第一表)
(第二表)
ただし、第二表内の以下2点の書き方が変更となる予定です。これらの項目に関係する場合は留意しておきましょう。
● 配偶者や親族:「国外居住」欄の書き方が変わる ●住民税:特定株式の収入に関する「申告不要制度」の記入欄が消えた |
「国外居住」とは、仕事の転勤や留学などにより自分の出身国や国籍の国以外の国で生活していることを指します。
令和5年度の税制改正にて適用を受けるための要件が厳格化されているため記入の方法が異なる可能性があります。これは、国外居住親族に係る扶養控除の適用における所得要件(所得48万円以下)の判定に関して、国外での所得金額の把握が困難であることから、実務上は国内源泉所得が用いられているケースが多く、国外で一定以上の所得を稼いでいる親族でも控除の対象とされているという問題が指摘されてきた背景があります。
「申告不要制度」とは、住民税の申告不要制度は、配当などについて住民税申告のみを不要とする制度です。
令和4年分までのように所得税と住民税で異なる申告方法を選択することができましたが、令和5年分以降の所得税確定申告では、上場株式等の配当や譲渡所得について、所得税と住民税の申告方法を統一しなければならないとされています。それゆえ、この点が変更になっています。
申請方法
申請方法もこれまで通り、紙での提出またはe-Taxを通じて提出する方法がとられる見込みです。
必要な書類は税務署で配布されているか、税務署のウェブサイトからダウンロードできます。令和5年分の様式は2023年12月に正式発表される予定のため、紙での申請、e-Taxを通じての申請は2024年1月ごろから可能と理解しておくとよいでしょう。
その他変更点のまとめ
上述のとおり仮想通貨取引によって生じた所得にかかわる事項は変更点がないようですが、白色申告または青色申告をされている人においては一部提出資料に変更があります。
収支内訳書(白色申告の個人事業主・雑所得者)
●取引先の「登録番号」を任意で記入する欄が新設された
青色申告決算書(青色申告の個人事業主)
●売上と仕入の明細欄が新設された
●取引先の「登録番号」を任意で記入する欄が新設された
それぞれ詳しく解説していきます。
収支内訳書とは、所得税や住民税の確定申告の際に提出する、具体的な収入や支出の内訳を詳細に記入する書類です。
収支内訳書は、申告する所得の種類に応じて異なる項目を記入する必要があります。2ページ目の「売上金額の明細」と「仕入金額の明細」欄には、取引先の「登録番号」を記入できるようになりました。これは、2023年10月より始まったインボイス制度の導入によるもので、登録番号を書けば、所在地の記入を省略できるそうです。
青色申告決算書とは、中小企業や個人事業主が利用できる、税金の申告と計算を簡略化するための特別な書類です。
この書類は通常の申告書類に比べて書類の内容が簡素化されており、所得税や法人税の計算が容易になっています。青色申告決算書を使用することで、税金の申告期限内に必要な情報を提供し、税金の負担を軽減することができます。この書類の3ページ目には「売上(収入)金額の明細」と「仕入金額の明細」が新設されています。(代わりに昨年まで同ページにあった「地代家賃の内訳」欄が、この2ページ目に移動しています。)ここには、主要取引先の名称・取引額などを記入します。そのほか、新設された欄には、取引先の「登録番号」も記入できます。これは上述のとおりインボイス制度導入により変更されたものです。
なお、国税庁より発表されている変更点のまとめ資料はこちらです。
記入箇所に変更がなくても注意すべきポイント
令和4年12月、国税庁から『暗号資産に関する税務上の取扱い及び計算書について』の改訂版が発表され、所得区分や必要経費がより明確になりました。改訂版によると、経費にできる金額は「仮想通貨の売却などに際し直接要した費用の額」とされています。これまで費用として計上していた項目が対象となっているか認識を確認しておくようにしておきましょう。経費として計上できるものの詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
また、過去からの「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」が公表されるタイミングを見ていると、年末に偏る傾向があるように見られます。
過去に当情報が公表されたタイミングは、平成30年11月21日、令和元年12月20日、令和2年12月18日、令和3年6月30日、令和3年12月22日となっているため、2023年の12月にも何かしら新しい情報が公開されるかもしれませんので、こちらにも留意するべきでしょう。
まとめ
仮想通貨取引によって生じた所得にかかわる事項は現在公表されている案では記載箇所の変更はありません。ただし12月以降に発表される正式版がでるまでは確定事項ではないため最新情報を手に入れるようにしましょう。当ブログでは令和5年度版のe-Tax申請方法についても詳しく解説した記事を今後公開予定です。そのほか、仮想通貨取引にかかる税金についてなど最新情報を知りたい方はメルマガに登録、またはTwitter公式アカウントをフォローしてみてください。
なお、2023年9月29日(金)から10月18日(水)までの期間限定で、新たに「クリプタクト」を利用されるユーザーを対象に通常55,000円のアドバンスプランの内容が使い放題となるキャンペーンを実施しています。