仮想通貨(暗号資産)の保有者は日々増加傾向にあります。その背景には、ビットコインのETF化が世界では進むなど、市場の注目が集まっていることが挙げられます。ただし、仮想通貨取引で一定以上の利益(所得)があると税金が課されることをご存じでしょうか?
この記事では、仮想通貨にかかる税金について、仮想通貨に精通した公認会計士・税理士である村上裕一先生監修のもと、初めての方にもわかりやすく解説していきます。
<この記事の内容をざっくり言うと> ・仮想通貨取引で得た利益(所得)は原則として「雑所得」 |
目次
- 仮想通貨(暗号資産)にかかる税金とは?
1.1仮想通貨の取引による所得は原則「雑所得」
1.2仮想通貨の税率は最大55.945%
1.3仮想通貨の税金は高い? - 仮想通貨の所得はいくらから確定申告が必要?
2.1確定申告のやり方 - 仮想通貨(暗号資産)の税金を申告しないとバレる?
3.1仮想通貨取引の所得を申告しなかった場合のペナルティ - 仮想通貨(暗号資産)の税金のより詳細な計算方法
4.1仮想通貨取引で得た利益の計算方法
4.2取得単価は「総平均法」か「移動平均法」で計算 - 仮想通貨(暗号資産)取引で課税対象となる所得が発生するタイミング
5.1仮想通貨を売却したとき
5.2仮想通貨と他の仮想通貨を交換したとき
5.3仮想通貨で買い物をしたとき
5.4仮想通貨を売却したとき
5.5ステーキング報酬やレンディング利子をもらったとき
5.6NFTを購入したとき - 仮想通貨(暗号資産)の税金の申告の際の注意点
6.1損益通算禁止
6.2損失の繰越控除禁止 - 仮想通貨(暗号資産)取引をしている人ができる税金対策
- 仮想通貨(暗号資産)の計算を簡単にするためのツール
仮想通貨(暗号資産)にかかる税金とは?
仮想通貨取引で生じた利益は課税対象です。
その利益が一定以上の金額となると所得税がかかるほか、金額にかかわらず住民税や復興特別所得税がかかります。
なお、仮想通貨の「利益」は、売買で得たもうけ(たとえば買った値段より高く売れたときの差額)を指します。一方、「所得」は、その利益から必要な経費(手数料や通信費など)を引いた後に残るお金のことです。
そして、税金はこの「所得」に基づいて計算されます。
仮想通貨の所得区分は「雑所得」
所得税は所得の種類ごとに計算方法が決まっています。
所得は、給与や賞与などの「給与所得」、株式投資で得た「譲渡所得、配当所得」、不動産から得た「不動産所得」など、その性質に応じて10種に細かく分類され、仮想通貨の取引で得た所得は原則として、「雑所得」に区分されます。
所得の分類
一部、仮想通貨取引の利益で生計を立てている方や、事業用資産として保有している方の場合には、「事業所得」として取り扱うことも考えられますが一定の条件を満たす必要があります。
仮想通貨の税率は最大55%
仮想通貨取引からの所得は「雑所得」として扱われます。「雑所得」の所得税は、1年間での他の所得(給料や副業の収入など)と合計して計算します。これを「総合課税」といいます。
総合課税では、所得が多いほど税率が高くなる仕組み(累進課税)が採用されています。
所得税の場合、最高で45%の税金がかかります。
さらに雑所得は住民税(10%)・復興特別所得税(所得税額×2.1%)の対象となるため、所得税と合わせると税率は最高で55.945%にの税率になります。
所得税額は次の「所得税の速算表」を使用すると簡単に求められます。
所得税の計算方法は、「課税所得金額×税率-控除額」です。
<所得金額と税率>
参考:国税庁「No.2260 所得税の税率」
会社員の場合、毎月の給料から所得税が天引きされ、年末調整で税金が自動的に清算されます。しかし、仮想通貨取引の所得は、年末調整では対応できないため、自分で「確定申告(1年間の所得を計算して「税金がいくら必要か」を税務署に報告する手続き)」を行い税金を納めなければなりません。
仮想通貨の税金は高い?
なお、総合課税では累進課税方式が適用されるとお伝えしましたが、同じ雑所得でもFXや株式投資によって生じた所得は、税率は一律「20.315%」となる分離課税方式が適用されます。ゆえに所得が増えても高率の課税を避けられるようになります。
よくある収入源と比較してみると以下のようになります。
<所得の種類と課税方式の違い>
「仮想通貨の税金は高い」と言われる理由の一つには、このように総合課税が適用されており、税率が一律ではなく、所得が増えるほど税率が高くなる累進課税が採用されていることがあります。
現在クリプタクトの運営会社、pafinの代表の斎藤 岳が税制検討部会長を務める「一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)」は仮想通貨取引による所得を申告分離課税(2種類ある分離課税の方式のうち、確定申告時の段階で分離課税する方式)とするための要請も政府および関係省庁に提出しています。
昨今の業界団体の動きについて詳しく知りたい方はこちらの記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
仮想通貨(暗号資産)の所得がいくらから確定申告が必要?
仮想通貨の所得は一定の金額を超える場合、確定申告が必要になる場合があります。
かんたんな診断方法は以下の通りです。
会社員の方は仮想通貨取引での所得を含めた雑所得が20万円を超える場合、確定申告を行う必要があります。
ただし、仮想通貨取引の所得が20万円以下であっても以下のような条件にあてはまり確定申告が必要な場合は、仮想通貨の所得が1円以上あれば、雑所得に仮想通貨取引による所得も記載する必要があります。
条件例
●給与収入が年間2,000万円を超える人
●給与所得や退職所得以外の所得金額(仮想通貨による所得を含む)の合計額が20万円を超える人
●2か所以上から給与をもらっている人
●住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の適用を初めて受ける人
●雑損控除、医療費控除などを受ける人や、寄付控除の適用を受ける人(※ふるさと納税の場合は納付先が6自治体以上の場合)
●配当控除の適用を受ける人
上記のようなケースに該当しているにも関わらず、確定申告を行わない場合は脱税と判断される可能性があります。
なお、前述したケースのように何らかの理由で確定申告を行う場合は、仮想通貨取引の所得が20万円以下であっても雑所得としてその金額を申請する必要がありますので注意しましょう。
確定申告のやり方
確定申告のおおまかな流れは以下の通りです。
1. 1年間の収支を計算
2. それをもとに確定申告書を作成
3. 作成した確定申告書を提出
確定申告の具体的なやり方については、以下の記事で詳しく説明しています。あわせてご覧ください。
仮想通貨(暗号資産)の所得を申告しないとバレる?
では、仮想通貨取引で一定の所得があるにもかかわらず、確定申告を行わない場合どうなるのでしょうか。
税務署には個人の資産や仮想通貨取引所における取引に対しての調査権限(たとえば「質問検査権」や「帳簿書類の提示・提出要求権」)があり、調査が必要と認められる場合、質問や帳簿書類などの検査・提出を求めることができます。
また、令和2年度の税制改革により、仮想通貨デリバティブ取引について支払調書制度等の対象となりました。 支払調書とは、報酬などを支払った者(取引所など)が個人に対して支払った金額や内容などを記載した書類のことです。これにより、誰にいくら支払ったかが税務署に明らかになってしまいます。注意しましょう。
確定申告をしなかった場合のペナルティ
税金を「正しい金額で」、「期限までに」納付しなかった場合は追徴課税を受けることになります。
状況(未申告なのか、過少申告なのか等)に応じて課せされる税金が変わってきますので、その種類と税率についてはこちらの記事をご覧ください。
仮想通貨(暗号資産)の税金のより詳細な計算方法
上述通り、所得税の速算表を使えばおおまかな所得税額がわかります。
ただし、この金額は支払う税金の総額となるため、別途いくらしはらう必要があるのか知りたい方も多いかもしれません。
弊社の仮想通貨の税金シミュレーションツールを使えば、あなたの仮想通貨の所得に対する税金(所得税、住民税、復興特別所得税)がいくらになるのか無料で簡単に計算が可能です。
仮想通貨取引で得た利益の計算方法
仮想通貨取引による利益を知るには、1年間(1月1日~12月31日)で仮想通貨の売却取引時に生じた利益(または損失)である「実現損益」の算出が必要です。
実現損益の計算式は以下の通りです。
実現損益=(売却価格―取得単価)×売却枚数 |
取得単価は「総平均法」か「移動平均法」で計算
仮想通貨取引の実現損益は「総平均法」か「移動平均法」で求めた取得単価をもとに計算されます。申請をしない場合、個人の方であれば「総平均法」、法人の場合は「移動平均法」が自動適用される事となっています。
総平均法とは
総平均法は、1年間の購入金額を平均して取得原価(平均取得単価) とする方法です。
取引件数が多い方は計算を簡略化できますが、価格変動が大きいほど実際の取得金額とは乖離が発生してしまいます。
移動平均法とは
移動平均法は、仮想通貨を取得するたびに平均単価を毎回計算して取得原価とする方法です。
価格変動の大きい仮想通貨ではこの方法が推奨されていますが、取得のたびに計算が必要となるため、相当な労力が必要となります。
一度選択した計算方法は翌年以降も継続して使用するルールがありますので、注意が必要です。
また、評価方法の変更を行う場合は別途手続きが必要となります。さらに、一度適用した評価方法の変更は、3年程度の期間が必要になっており、頻繁に評価方法を変更することができなくなっています。
いずれもメリット・デメリットはありますが、ご自身に合った計算方法を選択する必要があります。
総平均法と移動平均法それぞれの具体的な計算方法について知りたい方は以下の記事で事例付きで解説しています。併せてご覧ください。
仮想通貨(暗号資産)取引で課税対象となる所得が発生するタイミング
仮想通貨を取得後、保有しているだけでは、税金はかかりません。
ただし多くの人が「取引」と認識していない、さまざまなタイミングでも損益が発生しています。
ここでは「所得が発生するタイミング」について事例とともに詳しく紹介します。ご自身の取引と照らし合わせて確認してみましょう。
①仮想通貨を売却したとき
損益が発生するタイミングとしては、こちらのパターンが最もイメージしやすいのではないでしょうか。
ビットコイン(BTC)などの仮想通貨を売却したときの価格と、その仮想通貨を取得したときに要した金額(手数料等を含む)との差額が利益となります。
例
1BTCを300万円で購入し、1BTCが350万円の時に売却した →50万円の利益が発生 |
②仮想通貨と他の仮想通貨を交換したとき
先ほどは「法定通貨(円)」と「仮想通貨(BTC)」のパターンでしたが、ビットコインやイーサリアムなど「仮想通貨同士」で交換をした場合も損益が発生するタイミングとなります。
例
保有していたBTCを使ってETHを購入した場合 ①1/1 1BTCを300万円で購入 ②7/1 購入したBTCを全てETHに交換 ※1BTCの価格は400万円 |
この時①から②までの半年間で1BTC当たりの価格が100万円上昇している点に注意が必要です。
本来300万円で購入したはずのBTCですが、400万円のときにBTCを日本円に換金後、その日本円でETHを手に入れた、と考えてみるとどうでしょう。
100万円分得している状態になります。
このように、交換に使用した通貨の購入時の価格(取得単価)と交換時の価格(時価)を比較した際に、交換時の価格の方が高ければ、その差額が利益となります。
③仮想通貨で買い物をしたとき
仮想通貨で商品やサービスを購入した場合も、損益が生じるタイミングとなります。上記の交換時の仕組みと同様の考え方で問題ありません。
仮想通貨を一旦売却して日本円に換金した後、その日本円で商品を購入した、という流れになりますよね。
こちらも、取得単価と商品購入時の時価を比較した際の差額が損益となります。
④ステーキング報酬やレンディング利子をもらったとき
ステーキング報酬やレンディングの利子として仮想通貨を受け取った場合も、利益が発生します。
上記の他にも、マイニングで得た報酬や、ゲームで得た報酬なども利益となります。受け取った報酬相当の仮想通貨を売却した時点ではなく、受け取った時点で利益が発生し、税金が発生するので留意が必要です。これらの計算方法については複雑な部分もあるため、国税庁(国税庁「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」)の見解をご確認ください。
⑤NFTを購入したとき
NFTを購入する際に、仮想通貨で代金を支払うケースは多いと思います。NFT購入そのものには課税は発生しませんが、NFT購入時に支払った「仮想通貨」の時価上昇に伴う課税が生じる可能性があります。
仮想通貨の交換と同様に、NFT購入時の仮想通貨の時価が、その仮想通貨の取得時よりも高ければ、その差分が利益となり仮想通貨の売却益が発生する可能性があります。
例
NFTを1ETHで購入した。この時点のETHの時価は40万円だった。ETHは1年前に購入したもので、その時点のETHの時価は30万円だった。 → 40万円 - 30万円=10万円が利益となります。 |
その他、贈与や相続など、他者から無償で受け取った仮想通貨に対しても、それぞれ贈与税や相続税での申告義務が発生します。
仮想通貨業界は目まぐるしい変化の中で、従来の考え方や計算方法では対応できないサービスが次々と生まれています。だからこそ、法整備が進む中で課税されるタイミングやどのような税金が適用されるかは随時しっかりと認識しておきましょう。
仮想通貨の税金の申告の際の注意点
仮想通貨取引による所得を申告する際には、株式やFX取引などの申告とは異なる注意点が存在します。それは「損益通算」と「繰越控除」ができないことです。
それぞれについて見ていきましょう。
損益通算禁止
雑所得に区分される仮想通貨取引の損益は、他の所得(給与所得や事業所得など)と損益を相殺することができません。
例えば仮想通貨取引で損失が出た場合、その損失を他の所得から差し引いて税金を減らすことはできませんし、他の所得で損失が出ている場合も、仮想通貨の所得から差し引くことはできません。
ただし、同じ雑所得同士であれば損益の通算が認められているため、仮想通貨Aで得た利益と仮想通貨Bで発生した損失は相殺可能です。
このように、仮想通貨同士の損益通算を上手に活用することで、税負担を軽減することができるのです。
損失の繰越控除禁止
株式やFX取引などでは、損失が出た場合にその損失を翌年以降に繰り越し、利益が出た年の税金を減らすことが可能です。しかし仮想通貨取引では、この「繰越控除」が認められていません。
仮想通貨取引で発生した損失を税金の軽減に活用できるのはその年限りですので、こうした特徴をしっかりと理解しておくことが重要です。
仮想通貨取引をしている人ができる税金対策
上述のとおり、仮想通貨取引による雑所得には、総合課税が適用されます。所得が大きくなればなるほど、税率も高くなる仕組み(累進課税)となるため、税務上認められた方法によって税額を減らす方法についても知識を持っておくことが重要です。
たとえば、具体的には以下のような方法があります。
・取引にかかる経費を計上し利益を減少させる
・含み損益を把握して適切な売買をする
・仮想通貨同士の損益通算を利用する
・法人成りによる節税をおこなう
・青色申告の適用を検討する
・ふるさと納税や各種税控除を利用する
・利益確定は年間20万円以下に抑える
これらの仮想通貨の節税術について詳しく知りたい方はページ下部の関連記事もあわせてご覧ください。
仮想通貨の計算を簡単にするためのツール
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※参照元URL:国税庁「暗号資産に関する税務上の取扱い及び計算書について(令和4年12月)|国税庁」
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