
「ビットコインの売却や決済をしたら税金がかかる?」
「長期保有(ガチホ)しているだけなら税金は不要?」
ビットコインは値動きの大きさから短期売買を繰り返す人もいれば、長期保有(ガチホ)で資産として持ち続ける人も多い仮想通貨です。しかし、どちらのケースでも、取引の内容によっては税金が発生することをご存じでしょうか?
この記事では、ビットコインの税金の仕組みと具体的な計算方法をわかりやすく解説していきます。ガチホ派の人が気をつけるべき税金のルールや、税負担を抑えるための考え方についても触れていきますので、ぜひ参考にしてみてください。
ビットコインの税金の仕組み
まず初めに、ビットコインなどの仮想通貨取引に対する税金の仕組みについて見ていきましょう。
仮想通貨取引で利益を得た場合、その所得は「雑所得」または「事業所得」として「所得税」などの課税対象となります。
所得とは収入から経費などを差し引いて残った利益のことです。
個人が副業として仮想通貨取引を行う場合は、その利益は「雑所得」に該当することが一般的です。
一方で、個人が仮想通貨取引を事業として行っている場合など一定の条件を満たした場合は「事業所得」に区分される場合もあります。
これらの所得区分は「総合課税」と呼ばれる仕組みの対象となっており、「給与所得」など他の対象所得と合算されて課税所得が算出されます。
また、課税所得金額からは「基礎控除」や「給与所得控除」、社会保険料控除などの各種所得控除を差し引くことが認められていますので、これらを計算して最終的に残った金額が税額計算における課税所得金額となります。
「総合課税」では課税所得金額に応じて段階的に適用税率が上がっていく「累進課税」と呼ばれる仕組みが採用されています。
所得金額と税率の関係を表した「速算表」は以下のとおりです。
所得税の速算表
所得税の基本式
税額 = 課税所得金額 × 税率 - 控除額 |
なお、ここでは代表的な税金として「所得税」についてご紹介しましたが、所得に対しては他にも「住民税」や、「復興特別所得税」などが課せられます。
住民税は所得に対して概ね10%程度、復興特別所得税は所得税額に対して2.1%となっています。
住民税の計算方法について詳しく確認したい方は、ページ下部の関連記事をご覧ください。
ここまでで押さえておきたいポイントは次のとおりです。
● 仮想通貨の利益は「雑所得」または「事業所得」に区分される
● 他の総合課税所得と合算して「所得税」の税率が決まる
● 所得が大きいほど税率が高くなる
これらの基本的な仕組みを把握したうえで、次は税金を計算するうえで必要な損益の計算方法とその損益に基づく税金の計算方法について見ていきましょう。
ビットコインの税金の計算方法
税金計算を行うためには、ビットコインなどの仮想通貨取引で得た利益と損失を計算する必要があります。これを「損益計算」と呼びます。
仮想通貨売買における損益計算の基本は次の通りです。
売却価額 - 取得価額 = 損益 |
つまり、300万円で取得したビットコインを400万円で売却した場合は差し引き100万円の「利益」を得たという計算になります。
逆に、400万円で取得したビットコインを300万円で売却した場合は、100万円の「損失」です。
こうした損益計算を1年間に行った全ての取引に対して行い、結果を合算することで年間の損益を求めることができるのです。
考え方自体はシンプルですが、実際には仮想通貨の一部を売却したり、追加購入したりすることで取得価額が複雑になります。そこで必要になるのが「平均取得単価」です。
前述の基本式に平均取得単価を当てはめると次のようになります。
売却価額(売却単価 × 売却数量) - 取得価額(平均取得単価 × 売却数量) = 損益 |
なお、損益計算における平均取得単価の計算方法には「総平均法」または「移動平均法」があります。
それぞれにメリット・デメリットがありますので、違いをしっかり把握しておきましょう。
総平均法で計算する場合
「総平均法」とは、1年間に行った仮想通貨の取得取引全てを合算して単純平均を算出し、全ての売却取引における取得単価として一律に適用する計算方法です。
メリット
● 単純平均を取得単価として一律に適用するため、計算が簡単
デメリット
● 全ての取得取引を終えるまで平均単価が確定しないため、期中に損益のシミュレーションを行いづらい
● 取引の順序を無視した単純平均を採用するため、税務上の損益が実際の損益と乖離しやすい
「総平均法」は初心者でも計算しやすい方法である一方で、上記のようなデメリットも存在する計算方法です。
なお、個人が届出をしない場合は自動的に「総平均法」を選択したものと見なされます。
移動平均法で計算する場合
「移動平均法」とは、仮想通貨を取得する都度、それまでの平均取得単価を計算し直す方法です。売却取引では、それぞれの取引時点における取得単価を適用して損益を求めます。
メリット
● 取引の時点で損益が確定するため、期中に損益状況を把握することができ、節税や納税資金の準備などをしやすい
● 総平均法と比較して税務上の損益と実際の損益の乖離が生じない
デメリット
● 取得取引のたびに平均取得単価が変わるため、計算が複雑になる。
このように、「移動平均法」ではより正確な損益計算や状況把握が可能になる反面、計算の作業負担が増大するという特徴があります。
法人が特に届出をしない場合は、自動的に「移動平均法」を選択したものと見なされます。
利益認識のタイミングにも注意
仮想通貨取引による利益は単純な売却取引以外のタイミングでも発生します。中には、感覚的に利益が発生したと気が付きにくいケースもあるため注意が必要です。
課税対象になる取引の例
● 仮想通貨を日本円で売却する
● 仮想通貨を他の仮想通貨と交換する
● 仮想通貨で支払って商品・サービスを購入する
● 仮想通貨で報酬や対価を受け取る(レンディング・マイニング等)
● 仮想通貨を無償で受け取る(エアドロップ等)
例えばビットコインを売ってイーサリアムを購入する取引の場合、税務上は一度ビットコインを売却して得た日本円を使い、イーサリアムを購入したものと見なされます。そのため、仮想通貨同士の交換取引でも売却損益が日本円ベースで発生することになるのです。
また、報酬や対価などとして仮想通貨を受け取った場合、その時点で仮想通貨の時価に相当する利益が日本円ベースで発生することになります。
一方で、ガチホ戦略で仮想通貨を長期保有している場合など、ただ仮想通貨を購入して保有しているだけであれば税金はかかりません。
課税対象となる取引については関連記事でも詳しくご紹介しています。損益認識の発生タイミングを正しく把握することで、税金への影響を意識しながら取引判断を行えるようになりますので、興味のある方はぜひ併せてご覧ください。
ビットコインの税金の計算例
それでは、仮想通貨取引を通じて得た利益の税金について、計算例を見ていきましょう。
ビットコイン取引以外の所得が全くない人が、ビットコイン取引で300万円の利益(ガチホ中のレンディング報酬等を含む)を得た場合の税金計算は次のようになります。
税金計算例①
課税所得金額 所得税額 |
※事例をシンプルにするため、国民年金・国民健康保険料等の控除は省略しています。
また、500万円の給与所得がある人が、副業としてビットコイン取引で200万円の利益(ガチホ中のレンディング報酬等を含む)を得た場合の税金計算は次のようになります。
税金計算例②
課税所得金額 給与所得500万円 - 給与所得控除144万円 + 雑所得200万円 - 基礎控除48万円 = 508万円 所得税額 508万円 × 20% - 427,500円 =588,500円 |
※事例をシンプルにするため、国民年金・国民健康保険料等の控除は省略しています
ここでは税金計算の考え方をわかりやすくイメージできるように、所得税に関する重要なポイントを抜き出してご紹介しています。
更に精度を高めて計算する場合は、課税所得金額から社会保険料や各種控除などを差し引く必要があるほか、住民税などについても考慮が必要になります。
より詳しく計算してみたい方は、下記のページで税金計算シミュレーションをしてみてください。所得金額や家族構成、各種控除などを入力するだけで、精度の高いシミュレーションを行うことができます。
仮想通貨の税金計算シミュレーション
なお、確定申告の具体的なやり方や必要書類などについては、ページ下部の関連記事を併せてご覧ください。
ビットコインの税金の節税方法
税金計算を行うためには、まずはビットコインなどの仮想通貨取引で得た利益と損失を計算する必要があります。これを「損益計算」と呼びます。
仮想通貨売買における損益計算の基本は次の通りです。
売却価額 - 取得価額 = 損益 |
つまり、300万円で取得したビットコインを400万円で売却した場合は差し引き100万円の「利益」を得たという計算になります。
逆に、400万円で取得したビットコインを300万円で売却した場合は、100万円の「損失」です。
こうした損益計算を1年間に行った全ての取引に対して行い、結果を合算することで年間の損益を求めることができるのです。
なお、損益計算における取得単価の計算方法には「総平均法」または「移動平均法」があります。
それぞれにメリット・デメリットがありますので、違いをしっかり把握しておきましょう。
ビットコインの税金の計算例
所得税の税金の計算方法は次の通りです。
1.各種の所得の合計額から所得控除を差し引いて、課税される所得金額を求める。
2. 課税される所得金額に所得税の税率を乗じ、控除額を差し引いて、所得税額を求める。
また、所得税の税率は次の通りです。

(引用元:国税庁|No.2260所得税の税率)
たとえば、ビットコイン取引以外の所得が全くない人が、ビットコイン取引で300万円の利益を得た場合の税金計算は次のようになります。
税金計算例①
課税所得金額 300万円 - 基礎控除48万円 = 252万円
252万円 × 10% - 97,500円 = 154,500円 |
※事例をシンプルにするため、国民年金・国民健康保険料等の控除は省略しています
また、500万円の給与所得がある人が、副業としてビットコイン取引で200万円の利益を得た場合の税金計算は次のようになります。
税金計算例②
課税所得金額 給与所得500万円 - 給与所得控除144万円 + 雑所得200万円 - 基礎控除48万円 = 508万円 所得税額 508万円 × 20% - 427,500円 =588,500円 |
※事例をシンプルにするため、国民年金・国民健康保険料等の控除は省略しています
ここでは税金計算の考え方をわかりやすくイメージできるように、重要なポイントを抜き出してご紹介していますが、更に厳密に計算する場合は、課税所得金額から社会保険料や各種控除などを差し引く必要があります。
確定申告の具体的なやり方や必要書類などについては、こちらの記事を併せてご覧ください。
ビットコインの確定申告はいくらから必要か
ここまでにご紹介してきたとおり、総合課税とは「給与所得」など他の所得区分と合算した所得金額に対して課税される制度であり、申告が必要になる所得額は働き方等さまざまな条件により異なります。
とはいえ、おおよその目安としては次のようになります。
確定申告が必要になる水準(目安)
仮想通貨の利益 | |
サラリーマン | 20万円 |
個人事業主 | 48万円 |
その他の所得がない主婦・学生など | 48万円 |
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
サラリーマンの副業なら20万円超で確定申告が必要
会社員や公務員など、給与所得を得ている場合は通常、勤務先が行う年末調整によって税金の申告と納税が完結します。
しかし、給与所得以外の副業として20万円を超える所得を得た場合は、年末調整とは別に自分自身で確定申告を行わなければなりません。
なお、住民税の申告は20万円以下の所得でも必要になりますので留意が必要です。
20万円以下の所得であれば、確定申告は不要なものの、住民税の申告のために市役所等に問い合わせて対応する必要があります。
給与所得がある場合の仮想通貨にかかる税金の詳細や計算上の注意点などについては、ページ下部の関連記事でも詳しく解説しています。該当する方はぜひ併せてご覧ください。
個人事業主や主婦・学生は納税額がある場合に確定申告が必要
個人事業主や主婦・学生など給与所得が無い人がビットコイン取引で収入を得た場合は、損益計算を行って納税額の有無を確認する必要があります。
所得税には基礎控除(48万円)が認められており、ビットコイン取引を含む全ての収入の合計が48万円を下回る場合は課税所得がゼロとなるため納税額は発生しません。
一方で収入が48万円を超える場合は、確定申告が必要になる可能性がありますので詳細な税金計算を行って確認するようにしましょう。
さらに、仮想通貨取引をしている人が親や配偶者の扶養に入っている場合、仮想通貨取引による所得が48万円を超えると扶養の対象外となります。扶養者(親や配偶者)が扶養控除や配偶者控除を受けられなくなり、税金が高くなる場合がありますので注意しましょう。
ビットコインの税金の節税方法
ビットコイン取引による利益は通常、「雑所得」または「事業所得」に分類され、総合課税として最大45%の所得税が課せられます。
約10%程度の住民税も合わせると最大55%もの税率がかかる可能性があり、これは一律20%程度の分離課税が行われる株式投資などと比べると非常に重たいと感じる方も多いことでしょう。
そこで、少しでもビットコインの税金を軽減するための節税方法として、代表的な2つの方法をご紹介します。
事業所得として青色申告を活用する
限定的なケースではあるものの、個人が仮想通貨取引を事業として行っている場合、仮想通貨取引による所得を「事業所得」に区分できる可能性があります。
仮想通貨による所得が「事業所得」に区分されることで損益通算や繰越控除など税制上有利な仕組みを使えるようになるほか、青色申告を行って青色申告特別控除も受けられるようになります。
具体的には、確定申告の方法として青色申告を選択することで、一律65万円の所得控除を受けることが可能です。
前述の税金計算例①を青色申告で行った場合の計算は次のようになります。
課税所得金額
300万円 - 基礎控除48万円 - 青色申告特別控除65万円 = 187万円 |
所得税額
187万円 × 5% =93,500円 |
※事例をシンプルにするため、国民年金・国民健康保険料等の控除は省略しています
青色申告を活用することで、このように所得税額を大きく圧縮することができるのです。
ただし、青色申告を活用するためには複式簿記に基づく正確な会計を行い、所定の帳簿を作成して保存する必要がある点には留意が必要です。
さらに、社会通念上の概念も求められることになるため、仮想通貨取引を事業所得として計上するには慎重な判断が必要になります。
税務署もしくは税理士と相談の上、進めていくことを推奨します。
仮想通貨取引における損益通算の活用
損益通算を活用することも、課税所得を圧縮する上で非常に有効な手段となります。
例えば、ビットコイン取引で得た利益と、イーサリアム取引で発生した損失は相殺することが可能です。
この制度を利用することで、多額の課税所得が見込まれる年に含み損のある仮想通貨をあえて損切りすることで、課税額を大幅に圧縮できる可能性があるのです。
例
ビットコイン取引で300万円の利益を得た。 ⇒課税所得は300万円 |
含み損があったため年内に売却した場合
ビットコイン取引で300万円の利益を得た。 ⇒課税所得は100万円(300万円 - 200万円)に圧縮できた |
ただし、雑所得の損益通算は同じ総合課税の雑所得同士でしか行うことはできません。また、同一年内の損益しか通算することはできませんので、常に課税所得の着地見込みを想定しながら税金の管理を行うことが重要です。
まとめ
この記事ではビットコイン取引に関する税金の計算方法や確定申告の要否、節税の方法などについて解説してきました。
ビットコインにかかる税金が高いこと、そして正しく計算をして適切な節税を行うことで、納税額が大きく変わることをイメージいただけたことと思います。
このように、ビットコイン取引による税金を適格に把握してコントロールするためには、正確かつ効率的な損益計算を行うことが欠かせません。
ビットコイン取引の損益計算を行うためには、年内に行った全ての取引履歴を漏らさずに収集し、各時点における日本円換算の損益を算出したうえで、それらを集計するといった手間のかかるプロセスが発生します。
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