2022年4月1日より、日本の暗号資産取引所で「トラベルルール」の適用が始まりました。ただし、見聞きしたことはあるが、よく分からない・・という人も多いかもしれません。
今回の記事では、「トラベルルール」の概要やこのルールの適用により取引所を利用する個人はどのような影響を受けるのかを解説します。
この記事は2023年5月31日に内容を一部更新しております。
目次 |
仮想通貨のトラベルルールとは
まずは、仮想通貨のトラベルルールについて、概要を説明します。
海外では、仮想通貨が資金の不正な利用やマネーロンダリング等の抜け道になりうるという観点から、その防止策としてトラベルルールの導入が進みつつあります。
そんな中、日本でも仮想通貨のトラベルルールの適用が始まりました。
このルールの適用は既に始まっていますので、どのようなルールなのかを理解しておきましょう。
仮想通貨のトラベルルールとは、「利用者の依頼を受けて暗号資産の送付を行う暗号資産交換業者は、送付依頼人と受取人に関する一定の事項を、送付先となる受取人側の暗号資産交換業者に通知しなければならない」というルールです。
FATF(金融作業部会)が、マネーロンダリング及びテロ資金供与対策についての国際基準(FATF基準)において、各国の規制当局に対して導入を求めているものです。
このルールにおいて、仮想通貨の交換業者は、仮想通貨を移転する際、その移転元・移転先に関する情報を取得するとともに、移転先が利用する仮想通貨交換業者への通知が求められます。
このルールがあることで、仮想通貨の移転元・移転先の情報が明らかになり、仮想通貨の不正な利用を抑止する効果が期待できるとされています。
日本国内でも、2022年4月より、トラベルルールが適用されることになりました。
トラベルルールの目的
トラベルルールの目的は、不正利用があった際にその追跡ができるようにすることです。
マネーロンダリング・テロ資金供与対策という観点で見ると、テロリストその他の犯罪者などが自由に電子的な資金の移転ができてしまう状況は、未然に防止する必要があります。
トラベルルールが適用されることで、詳細情報の通知無しに資金を移動させることができなくなります。
したがって、万が一、仮想通貨の不正利用があったとしてもその追跡が可能になり、不正利用の抑止力としての効果が期待できるとされています。
トラベルルール適用後の適用後、取引所の利用者が受ける影響・変更点
トラベルルールが適用されると、送金時または送金アドレスの設定時に仮想通貨交換業者に対し、移転される仮想通貨に関する一定の情報を提供する必要があります。
具体的には、以下の情報を提供する必要があります。
追加で提供が必要となる情報
①受取人の氏名
②受取人のために暗号資産の送付を受ける暗号資産交換業者(受取側の暗号資産交換業者)の有無
③受取側の暗号資産交換業者が有る場合はその名称
④受取人の住所
⑤取引の目的
移転元がこれらの情報を提供しない場合は、仮想通貨の移転を行うことはできなくなります。
また、以下の情報について、受取側の暗号資産交換業者に対し通知が行われます。
①送付人の情報(氏名・住所・暗号資産アドレス)
②受取人の情報(氏名・暗号資産アドレス)
出典:トラベルルール導入について 日本暗号資産取引業協会
https://jvcea.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/202203-travel_rule.pdf
https://jvcea.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/10/20221019_info.pdf
トラベルルールのメリット
次に、トラベルルールのメリットについて詳しく見ていきましょう。
不正利用やマネーロンダリングが減る
トラベルルールが適用されることで、仮想通貨の不正利用やマネーロンダリングが減ることが期待できるとされています。
これまでは、移転先のアドレスなど簡単な情報を提供するだけで、仮想通貨を移転することが可能でした。
しかし、トラベルルール適用後は、仮想通貨の移転が行なわれる際、前述のとおりその仮想通貨に関する各種情報が通知されます。
出どころを明らかにしたくないような資金は、そもそも移転することができないため、仮想通貨の不正利用を抑制する効果が期待されているようです。
仮想通貨取引をより安心してできるようになる
過去に仮想通貨に関連した犯罪や不正を耳にしたことがあり、不安に思った経験がある人もいるかもしれません。
トラベルルールの適用により不正利用が減ることで、「知らないうちに不正利用に加担してしまっていた」といったリスクも減るため、より安心して仮想通貨を利用できるようになるかもしれません。
もちろん、トラベルルールによりすべての不正利用・マネーロンダリング等を防ぐことができるとはいえませんが、少なくとも今までに比べると、不正利用やマネーロンダリングに仮想通貨を利用しにくくなる可能性はあります。
トラベルルールのデメリット
トラベルルール適用には、先ほど述べたようなメリットがあると考えられる一方で、いくつかのデメリットも予測されます。
デメリットについても理解しておきましょう。
送金の手間が増える
トラベルルールが適用されると、送金ごとに所定の情報を入力する必要が生じるようになり、資金の移転の際の手間が増えてしまいます。また、送金に際してこれまでより時間を要する可能性はあります。
安全を強化するために手続きの手間が増えることは仕方の無いことではありますが、今後、安全性と利便性の両方が実現することに期待しましょう。
なお、以下の場合などは「トラベルルール」の適用対象外となります。
● ハードウェアウォレットを利用する
● 個人ウォレットへ送る
上記のように取引所間ではない取引の場合は、「トラベルルール」は適用されません。
「トラベルルール」に関する重要なアップデート
政府は2023年6月からこのルールをさらに強化することを決定しました。このルール下では、送金依頼を受けた取引所は送金する際に送金先の取引所に所定の情報を通知することが求められます。
ここで取引所の利用者として留意しておきたいことは、このルール施行に伴い、入出金ができないケースがあるということです。これは、暗号資産交換業者で使われる送金システムが統一されていないためです。トラベルルールへの対応状況については各社異なるため、それぞれのHPにて最新情報を確認するようにしましょう。
まとめ
「トラベルルール」の目的は、仮想通貨の不正利用やマネーロンダリングを減らすことです。
「トラベルルール」適用により、今までよりも送金の手間や時間がかかる可能性はあるものの、安全に仮想通貨取引ができるようになることが期待されています。ただし、場合によっては入出金ができない場合があります。最新の対応状況については各社のHPを確認するようにしましょう。
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