仮想通貨は価格変動が大きい傾向にあるため、相場次第では非常に大きな利益を得られる可能性がありますが、
一方で大きな収入を得ると納める税金も多額になることを忘れてはいけません。
この記事では、仮想通貨で得た収入にかかる税金について、収入額ごとのシミュレーション結果をご紹介していきます。
税金計算を簡単に行える便利なツールについても紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次 |
仮想通貨の税率早見表
仮想通貨取引で利益を得た場合、所得金額に応じて所得税や住民税などの税金を支払う必要があります。
なお、所得とは収入から必要経費などを差し引いた金額のことです。
所得 = 収入 - 必要経費など |
それでは、所得税と住民税の税率についてそれぞれ見ていきましょう。
所得税
所得税は、所得に対して課税される国税(国に払う税金)です。
累進課税制度が採用されており、所得金額が増えるほど税率が高くなる仕組みになっています。
所得税の税率表
(引用元:国税庁|No.2260所得税の税率)
このように、所得額に応じて5%から最大で45%もの所得税がかかることになります。
税率の各段階ごとに控除額が設定されているため、実際には各段階を超えた分だけ税金が高くなるように設計されています。(課税所得額のうち、各レンジごとの税率を適用して合計した額が最終的な税額になります。)
所得税の基本的な計算式は以下の通りです。
所得税 = 課税所得金額 × 税率 - 控除額 |
なお、仮想通貨で得た利益は「雑所得」か「事業所得」に分類されます。
事業所得の計上に関しては、原則として社会通念上の判断が求められるものの、収入300万円以上かつ帳簿保存があれば事業所得計上可能ということから、その要件を満たしていれば一律事業所得計上が可能とされています。
ただし、仮想通貨取引のみをされている方であっても仮想通貨を事業所得に計上するのは実務的にまれなケースであることから、ここでは雑所得として申請することを前提に話を薦めていきます。
住民税
住民税は、所得に対して課税される地方税(地方自治体に払う税金)です。
自治体によって多少の違いはあるものの、住民税は概ね約10%の税率が掛けられる「所得割」と、一定額が均等に課税される「均等割」で構成されています。
住民税 = 所得割(課税所得金額 × 約10%)+ 均等割(概ね5,000円程度) |
従って、所得税と住民税を合わせると、最小約15%〜最大約55%の税率がかかることになります。
税金シミュレーション(基本編:仮想通貨取引の収入のみの場合)
それでは、実際に仮想通貨で利益を得た場合のシミュレーションを見てみましょう。
ここでは、仮想通貨の税金計算の基本的なイメージを掴めるように、年収が仮想通貨取引による収入のみのシンプルなケースをご紹介します。
なお、ここでご紹介する税額はあくまでも基本的なケースを想定した概算である点にご留意ください。
仮想通貨による年収300万円のケース
まずは仮想通貨取引で年間300万円の収入を得た場合は次の通りです。
所得税・住民税の計算イメージ
| 所得税 | 住民税 |
収入 | 3,000,000円 | |
所得控除額 | ▲922,340円 | ▲872,340 円 |
課税される所得金額 | 2,077,000円 | 2,127,000円 |
税率 | 10% | 10% |
税額 | 約110,200円 | 約212,700円 |
※所得税に関しては最大適用税率を記載
所得税や住民税は、収入から所得控除を差し引いた「課税される所得金額」を基準に行います。(1,000円未満切り捨て)
所得税は「課税される所得金額」に前述の税率表に基づいた税率を掛け、対応する控除額を差し引くことで税額が算出できます。
一方、住民税は「課税される所得金額」に所得割の税額(約10%)を掛け、均等割の税額(概ね5,000円程度)を加えることで税額を算出します。
所得控除の内訳
所得税 | 住民税 | |
基礎控除 | ▲480,000円 | ▲430,000円 |
社会保険料控除 | ▲442,340円 | ▲442,340円 |
所得控除額の合計 | ▲922,340円 | ▲872,340円 |
所得控除にはさまざまな種類が存在し、納税者の状況に応じて活用することができますが、ここでは基本的な「基礎控除」 「社会保険料控除」のみを考慮しています。
「基礎控除」は所得が2,500万円以下の場合に適用できる所得控除で、所得税と住民税で水準が異なる点に注意が必要です。
「社会保険料」については、「国民年金」と「国民健康保険」の保険料が該当します。
「国民年金」の保険料は一律で定められており、令和5年度は月額16,520円です。
一方、「国民健康保険」の保険料は所得に基づく複雑な計算式によって変動しますので、詳細を確認したい方はお住まいの自治体ホームページなどを参照してみると良いでしょう。
なお、税金計算上は控除として使える社会保険料ですが、実際には税金と同じように支払わなければならないコストでもあります。
実際に手元に残る「手取り収入」は、年収から所得税・住民税・社会保険料を引くことで概算を求めることができます。
手取り収入:2,234,760円 |
年収300万円のうち、約76万円が税金・社会保険料としてかかり、手取りは約230万円という結果になりました。
仮想通貨による年収500万円のケース
続いて、仮想通貨取引で年間500万円の収入を得た場合を見てみましょう。
所得税・住民税の計算イメージ
| 所得税 | 住民税 |
収入 | 5,000,000円 | |
所得控除額 | ▲1,114,140円 | ▲1,064,140円 |
課税される所得金額 | 3,885,000円 | 3,935,000円 |
税率 | 20% | 10% |
税額 | 349,500 円 | 393,500円 |
※所得税に関しては最大適用税率を記載
収入の増加に伴って課税所得額が増えたため、所得税の税率が10%に上がっています。
所得控除の内訳
所得税 | 住民税 | |
基礎控除 | ▲480,000円 | ▲430,000円 |
社会保険料控除 | ▲634,140円 | |
所得控除額の合計 | ▲1,114,140円 | ▲1,064,140円 |
また、年収300万円のケースと比較すると社会保険料も増えていますが、これは所得の増加に伴って「国民健康保険」の保険料が上がるためです。
手取り収入概算:3,622,860円 |
年収500万円のうち、約137万円が税金・社会保険料としてかかり、手取りは約380万円という結果になりました。
仮想通貨による年収1500万円のケース
次に、仮想通貨取引で年間1,500万円の収入を得た場合のシミュレーションです。
所得税・住民税の計算イメージ
| 所得税 | 住民税 |
収入 | 15,000,000円 | |
所得控除額 | ▲1,548,240円 | ▲1,498,240円 |
課税される所得金額 | 13,451,000 円 | 13,501,000円 |
税率 | 33% | 10% |
税額 | 2,902,800円 | 1,350,100円 |
※所得税に関しては最大適用税率を記載
年収300万円・500万円では住民税よりも少なかった所得税ですが、年収1,500万円では倍以上の金額となっています。
所得税は所得が大きいほど税率が高くなり、税額が飛躍的に高くなっていく傾向があります。
所得控除の内訳
所得税 | 住民税 | |
基礎控除 | ▲480,000円 | ▲430,000円 |
社会保険料控除 | ▲1,068,240円 | |
所得控除額の合計 | ▲1,548,240円 | ▲1,498,240円 |
なお、今回ご紹介したケースでは基礎控除の金額に変動はありませんでしたが、基礎控除は所得が2,400万円を超えると段階的に減少し、2,500万円超では0円となります。
このように、所得が増えるにつれて税負担が増える要素は所得税の税率以外にも存在しますので注意が必要です。最終的に、年収1,500万円のうち532万円以上が税金・社会保険料としてかかり、手取りは1,000万円を下回る結果となりました。
手取り収入:9,678,860円 |
税金シミュレーション(応用編:給与と仮想通貨取引の収入がある場合)
前項では、仮想通貨による収入のみがあるケースを用いて、仮想通貨の税金計算の基本的なイメージをご紹介しました。
しかし、実際には仮想通貨取引の収入だけで生計を立てられる人は稀で、主たる収入源として勤務先から給与を貰っているケースが多いことでしょう。
ここでは、サラリーマンが副業として仮想通貨取引を行っている場合の税金計算についてご紹介します。
なお、このシミュレーションは税金計算のわかりやすさを重視した、シンプルなケースに基づく概算である点にご留意ください。
給与年収250万円+仮想通貨による年収50万円のケース
それでは、給与年収250万円と仮想通貨による年収50万円(総年収300万円)のケースを見ていきましょう。
所得税・住民税の計算イメージ
| 所得税 | 住民税 |
収入 | 3,000,000円 |
|
所得控除額 | ▲1,649,600円 | ▲1,599,600円 |
課税される所得金額 | 1,350,000円 | 1,400,000円 |
税率 | 5% | 10% |
税額 | 67,500円 | 140,000円 |
※所得税に関しては最大適用税率を記載
同じ年収300万円でも、仮想通貨取引の収入のみの場合と比較して所得税・住民税ともに少し安い結果となりました。
これは、所得控除額の違いによるものです。
所得控除の内訳
所得税 | 住民税 | |
基礎控除 | ▲480,000円 | ▲430,000円 |
給与所得控除 | ▲830,000円 | |
社会保険料控除 | ▲1,068,240円 | |
所得控除額の合計 | ▲1,649,600円 | ▲1,599,600円 |
所得控除の内訳を見ると、仮想通貨収入のみのシミュレーションには無かった給与所得控除が加わっています。
給与所得控除は給与収入を得ている人が適用できる所得控除で、控除額が非常に大きいのが特徴です。
また、社会保険料控除についてはサラリーマンなどが加入する「厚生年金」と「健康保険」の保険料が該当します。
「厚生年金」と「健康保険」の保険料は給与の金額に応じて決まります。都道府県や加入している健康保険組合によって細かい金額は異なりますが、ここでは全国健康保険協会の東京都における保険料(令和5年度)を元に計算しています。
なお、このケースでは青色申告控除は適用していません。
青色申告控除を適用するには事業所得や不動産所得が必要ですが、通常、仮想通貨取引による収入が300万円に満たない規模の場合は雑所得に区分されるのが一般的であるためです。
手取り収入:2,452,900円 |
このケースの手取り収入は約245万円という結果になりました。
給与年収250万円+仮想通貨による年収250万円のケース
続いて、給与年収250万円はそのままで、仮想通貨による年収が250万円に増えたケース(総年収500万円)です。
所得税・住民税の計算イメージ
| 所得税 | 住民税 |
収入 | 5,000,000円 | |
所得控除額 | ▲1,649,600円 | ▲1,599,600円 |
課税される所得金額 | 3,350,000円 | 3,400,000円 |
税率 | 20% | 10% |
税額 | 242,500円 | 345,000円 |
※所得税に関しては最大適用税率を記載
同じ年収500万円ですが、今度は仮想通貨取引の収入のみの場合と比較して所得税・住民税ともに税額が少し高い結果となりました。
「給与所得控除」や「社会保険料控除(厚生年金保険料と健康保険料)」は給与所得に応じて決まるため、仮想通貨取引の収入が増えても所得控除額が増えないためです。
所得控除の内訳
所得税 | 住民税 | |
基礎控除 | ▲480,000円 | ▲430,000円 |
給与所得控除 | ▲830,000円 | |
社会保険料控除 | ▲339,600円 | |
所得控除額の合計 | ▲1,649,600円 | ▲1,599,600円 |
結果として所得税と住民税の金額は割高に見えますが、実際には社会保険料が低い水準のままであるため、手取り収入では仮想通貨取引の収入のみのケースより多くなっています。
手取り収入:4,072,900円 |
給与年収250万円+仮想通貨による年収1,250万円のケース
最後に、給与年収250万円はそのままで、仮想通貨による年収が1,250万円に増えたケース(総年収1,500万円)を見てみましょう。
所得税・住民税の計算イメージ
| 所得税 | 住民税 |
収入 | 15,000,000円 | |
所得控除額 | ▲1,649,600円 | ▲1,599,600円 |
課税される所得金額 | 13,350,000円 | 13,400,000円 |
税率 | 33% | 10% |
税額 | 2,869,500円 | 1,340,000円 |
※所得税に関しては最大適用税率を記載
仮想通貨取引による収入が300万円を超えている場合、帳簿の保存等の一定条件を満たすことで事業所得として認められる可能性があります。
所得控除の内訳
所得税 | 住民税 | |
基礎控除 | ▲480,000円 | ▲430,000円 |
給与所得控除 | ▲830,000円 | |
社会保険料控除 | ▲339,600円 | |
所得控除額の合計 | ▲1,649,600円 | ▲1,599,600円 |
最終的に、年収1,500万円のうち約454万円が税金・社会保険料として掛かり、手取り収入は約1,045万円程度となりました。
手取り収入:10,450,900円 |
まとめ
今回の記事ではシミュレーションを通じて、所得が大きいほど税金や社会保険料が高くなり、手取り収入の割合が下がっていく具体的なイメージをお伝えしました。
また、所得の構成や金額に応じて適用できる控除が変わり税額に大きく影響するため、税金計算は正確かつ確実に行わなければなりません。
特に仮想通貨取引においては、膨大な取引から年間利益を計算する煩雑なプロセスが必要になります。
複数の取引所やウォレットに散らばった取引履歴情報を1件も漏らさず収集し、その全ての明細を日本円に時価換算しながら、1件ごとの損益を計算していく必要があるのです。
税理士などの専門家に依頼する方法もありますが、個人投資家があまりコストをかけずに税金計算を行いたい場合は、専用のツールを活用することがおすすめです。
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