ビットコインなどの仮想通貨に投資をする人はここ数年で何倍も増加しました。一方で仮想通貨投資により一定額以上の利益を得た場合、「雑所得」として税金がかかり、確定申告をする必要があることは知らない方が多いのが実情です。
この記事では、仮想通貨にかかる税金と確定申告について、仮想通貨に精通した税理士監修のもと、初めての方にもわかりやすく解説していきます。
<この記事の内容をざっくり言うと> ・仮想通貨取引で得た所得は原則として「雑所得」 |
目次
- 仮想通貨(暗号資産)にかかる税金とは?
1.1仮想通貨の所得区分は「雑所得」
1.2仮想通貨の税率は最大55% - 仮想通貨(暗号資産)の確定申告はいくらからから必要か
2.1確定申告のやり方 - 仮想通貨(暗号資産)取引で損益が発生するタイミング
3.1仮想通貨を売却したとき
3.2仮想通貨と他の仮想通貨を交換したとき
3.3仮想通貨で買い物をしたとき
3.4ステーキング報酬やレンディング利子をもらったとき
3.5NFTを購入したとき - 仮想通貨(暗号資産)の税金の申告の際の注意点
4.1損益通算禁止
4.2損失の繰越控除禁止 - 仮想通貨(暗号資産)の税金を申告しないとバレる?
5.1確定申告をしなかった場合のペナルティ - 仮想通貨(暗号資産)の税金計算方法
6.1仮想通貨の所得の計算方法
6.2平均取得単価算出方法は「移動平均法」と「総平均法」
6.3ビットコインなどの仮想通貨で100万円稼いだら税金はいくら? - 仮想通貨(暗号資産)取引をしている人ができる税金対策
- 仮想通貨(暗号資産)の計算を簡単にするためのツール
仮想通貨(暗号資産)にかかる税金とは?
仮想通貨取引を通じて利益を得た場合、その所得は「所得税」や「住民税」の課税対象となります。所得とは、収入から必要経費を差し引いて残った利益のことです。
ここでは仮想通貨の税金に関する基本について見ていきましょう。
仮想通貨の所得区分は「雑所得」
所得税は、給与や賞与などの「給与所得」、株式投資で得た「譲渡所得、配当所得」、不動産から得た「不動産所得」など、その性質に応じて10種に細かく分類されています。
その中から、仮想通貨取引によって生じた利益は、原則として「雑所得」に区分されます。
一部、仮想通貨取引の利益で生計を立てている方や、事業用資産として保有している方の場合には、「事業所得」として取り扱うことも考えられます。
そして、所得税は、『総合課税』と『分離課税』の2つの課税方式に分けられます。
総合課税は、他の所得と合算して課税される方式です。一方、分離課税は、他の所得と区別して特定の所得に対して独立して税額を計算する方式です。
仮想通貨取引による雑所得には、総合課税が適用されます。
仮想通貨の税率は最大55%
総合課税では、所得が大きくなればなるほど、税率も高くなる仕組み(累進課税)が適用されています。所得税は最高で45%、住民税・復興特別所得税を合わせると最高で55%の税率となります。
<所得金額と税率>
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
参考:国税庁「No.2260 所得税の税率」
FXや株式投資によって生じた所得も雑所得に区分されますが、分離課税が適用されますので、こちらの税率は一律「20.315%」となります。現在、仮想通貨は分離課税の対象ではありませんが、申告分離課税とするための要請も業界団体によって政府および関係省庁に提出されています。
仮想通貨(暗号資産)の所得はいくらから確定申告が必要か
結論からいうと、会社員の方は仮想通貨取引での利益が20万円を超える場合、確定申告を行う必要があります。
また、被扶養者(専業主婦や学生など)に該当する場合は、48万円を超える所得が出た場合、確定申告が必要です。
ただし、仮想通貨取引での利益に関わらず会社員であっても確定申告が必要となるケースは以下の通りです。
●給与収入が年間2,000万円を超える人
●給与所得や退職所得以外の所得金額(仮想通貨による所得を含む)の合計額が20万円を超える人
●2か所以上から給与をもらっている人
●住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の適用を初めて受ける人
●雑損控除、医療費控除などを受ける人や、寄付控除の適用を受ける人(※ふるさと納税の場合は納付先が6自治体以上の場合)
●配当控除の適用を受ける人
上記のようなケースに該当しているにも関わらず、確定申告を行わない場合は脱税と判断される可能性があります。
なお、前述したケースのように何らかの理由で確定申告を行う場合は、仮想通貨取引の所得が20万円以下であっても雑所得としてその金額を申請する必要がありますので注意しましょう。
確定申告のやり方
そもそも確定申告とは、その年の1月1日~12月31日までの1年間に得た所得金額と税額を計算し、その結果を税務署に申告して税金を納める一連の手続きのことを指します。
原則、翌年の2月16日~3月15日の期間に確定申告書を税務署に提出して行います。会社員や公務員などの給与所得者の場合は、勤務先で行う「年末調整」によって所得の申告が完結するケースが多いため、確定申告が不要になっています。
そのため「確定申告」が身近ではない人も多いことでしょう。
ただし、上記の条件に当てはまる場合は確定申告が必要です。
確定申告の具体的なやり方については、ページ下部の関連記事で詳しく説明していますのであわせてご覧ください。
仮想通貨(暗号資産)取引で損益が発生するタイミング
仮想通貨取引によって生じた利益というと単純に売買による利益を想定する方が多いと思いますが、実際にはこのほかにもさまざまなタイミングで利益が発生しています。
ここでは「利益が出るタイミング」について事例とともに詳しく紹介します。ご自身の取引と照らし合わせて確認してみましょう。
①仮想通貨を売却したとき
ビットコイン(BTC)などの仮想通貨を売却したときの価格と、その仮想通貨を取得したときに要した金額(取得価額)との差額が利益となります。
※取得価額は、手数料など取得に必要な経費も含めて計算します。
利益が発生するタイミングとしては、こちらのパターンが最もイメージしやすいのではないでしょうか。
例
1BTCを300万円で購入し、1BTCが350万円の時に売却した →50万円の利益が発生 |
②仮想通貨と他の仮想通貨を交換したとき
先ほどは「法定通貨(円)」と「仮想通貨(BTC)」のパターンでしたが、ビットコインやイーサリアムなど「仮想通貨同士」で交換をした場合も利益が発生するタイミングとなります。
例
保有していたBTCを使ってETHを購入した場合 ①1/1 1BTCを300万円で購入 ②7/1 購入したBTCを全てETHに交換 ※1BTCの価格は400万円 |
この時①から②までの半年間で1BTC当たりの価格が100万円上昇しています。
本来300万円で購入したはずのBTCですが、400万円のときにBTCを日本円に換金後、その日本円でETHを手に入れた、と考えてみるとどうでしょう。100万円分得している状態になります。
購入時の価格(取得単価)と交換時の価格(時価)を比較した際に、交換時の価格の方が高ければ、その差額が利益となります。
③仮想通貨で買い物をしたとき
仮想通貨で商品やサービスを購入した場合も、利益が生じるタイミングとなります。上記の交換時の仕組みと同様の考え方で問題ありません。仮想通貨を一旦売却して日本円に換金した後、その日本円で商品を購入した、という流れになりますよね。
こちらも、取得単価と商品購入時の時価を比較した際の差額が利益となります。
④ステーキング報酬やレンディング利子をもらったとき
ステーキング報酬やレンディングの利子として仮想通貨を受け取った場合も、利益が発生します。
上記の他にも、マイニングで得た報酬や、ゲームで得た報酬なども利益となる可能があります。これらの計算方法については複雑な部分もございますので、国税庁(国税庁「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」)の見解をご確認ください。
⑤NFTを購入したとき
NFTを購入する際に、仮想通貨で代金を支払うケースは多いと思います。NFT購入そのものには課税は発生しませんが、NFT購入時に支払った「仮想通貨」の時価上昇に伴う課税が生じる可能性があります。
仮想通貨の交換と同様に、NFT購入時の仮想通貨の時価が、その仮想通貨の取得時よりも高ければ、その差分が利益となり仮想通貨の売却益が発生する可能性があります。
例
NFTを1ETHで購入した。この時点のETHの時価は40万円だった。ETHは1年前に購入したもので、その時点のETHの時価は30万円だった。 → 40万円 - 30万円=10万円が利益となります。 |
その他、贈与や相続など、他者から無償で受け取った仮想通貨に対しても、それぞれ贈与税や相続税での申告義務が発生します。
仮想通貨業界は目まぐるしい変化の中で、従来の考え方や計算方法では対応できないサービスが次々と生まれています。だからこそ、価値のある立派な資産と捉え、法整備が進む中で課税されるタイミングやどのような税金が適用されるかは随時しっかりと認識しておきましょう。
仮想通貨の税金の申告の際の注意点
仮想通貨取引による所得を申告する際には、株式やFX取引などの申告とは異なる注意点が存在します。それは「損益通算」と「繰越控除」ができないことです。それぞれについて見ていきましょう。
損益通算禁止
雑所得に区分される仮想通貨取引の損益は、他の所得(給与所得や事業所得など)と損益を相殺することができません。
例えば仮想通貨取引で損失が出た場合、その損失を他の所得から差し引いて税金を減らすことはできませんし、他の所得で損失が出ている場合も、仮想通貨の所得から差し引くことはできません。
ただし、同じ雑所得同士であれば損益の通算が認められているため、仮想通貨Aで得た利益と仮想通貨Bで発生した損失は相殺可能です。
このように、仮想通貨同士の損益通算を上手に活用することで、税負担を軽減することができるのです。
損失の繰越控除禁止
株式やFX取引などでは、損失が出た場合にその損失を翌年以降に繰り越し、利益が出た年の税金を減らすことが可能です。しかし仮想通貨取引では、この「繰越控除」が認められていません。
仮想通貨取引で発生した損失を税金の軽減に活用できるのはその年限りですので、こうした特徴をしっかりと理解しておくことが重要です。
仮想通貨の税金の申告をしないとバレる?
仮想通貨の取引は源泉徴収ではなく、納税者が自ら確定申告という手続きを通じて税務署へ申告する必要があります。
それでは、もし確定申告が必要であるにも関わらず申告をしなかった場合はどうなるのでしょうか。
結論から述べると、申告漏れは必ず発覚すると考えるべきです。ここでは確定申告を怠った場合のリスクを紹介します。
確定申告をしなかった場合のペナルティ
税金を正しい金額で期限までに納付しなかった場合は追徴課税を受けることになります。
支払い状況に応じて課せされる税金が変わってきますので、その種類と税率、もし税金を払えない場合はどうすればいいのかについて詳しくはページ下部の関連記事記事で解説しています。
「少ない利益だったら」・「海外取引所での取引だけなら」などの理由で「やらなくてもバレない」と思われている方も多いようです。
しかし、税務署には個人の資産や仮想通貨取引所におけるやり取りに対しての調査権限があるため調査されたのち、追徴課税となる可能性は大いにありますので注意しましょう。
仮想通貨(暗号資産)の税金計算方法
仮想通貨を含む所得に対する所得税の計算方法は、「課税所得金額×税率-控除額」です。
具体的な税金の計算には、上述の所得税の速算表を使えば簡単に所得税の金額を計算することが可能です。
例)課税所得が300万円の人
300万円×10%-97,500円=202,500円
仮想通貨の所得の計算方法
上述の通り、仮想通貨の所得は総合課税の対象となるため、同じ総合課税の対象となる所得を足し合わせ、上述の所得による税率のテーブルと照らし合わせて計算する必要があります。
そこで必要になるのが、1年間に仮想通貨の売却取引時に生じた利益(または損失)である「実現損益」の算出です。
実現損益の算出方法の基本は以下の通りです。
実現損益=(売却価格―平均取得単価)×売却枚数 |
取引回数が一回(その年以前を考慮しても)、仮想通貨の種類は一種類の場合は、その一回の取引における「売却価格―取得価格」が実現損益となりますが、多くの場合、複数回取引をするのが一般的です。
そして仮想通貨の場合は、銘柄ごとに計算をする必要があるため「平均取得単価」を用いる必要があります。
そして、平均取得単価の算出方法には、「移動平均法」と「総平均法」の2つがあり、確定申告の際にはいずれかを選択する必要があります。一度選択した計算方法は翌年以降も継続して使用するルールがありますので、注意が必要です。
また、評価方法の変更を行う場合は別途手続きが必要となりますが、何も届出をしない場合、所得税では「総平均法」、法人税では「移動平均法」が自動適用される事となっています。さらに、一度適用した評価方法の変更は、3年程度の期間が必要になっており、頻繁に評価方法を変更することができなくなっています。
平均取得単価算出方法は、「移動平均法」と「総平均法」
移動平均法は、仮想通貨を取得するたびに平均単価を毎回計算して取得原価とする方法です。
価格変動の大きい仮想通貨ではこの方法が推奨されていますが、取得のたびに計算が必要となるため、相当な労力が必要となります。
総平均法は、1年間の購入金額を平均して取得原価とする方法です。
取引件数が多い方は計算を簡略化できますが、価格変動が大きいほど実際の取得金額とは乖離が発生してしまいます。
いずれもメリット・デメリットはありますが、ご自身に合った計算方法を選択する必要があります。
総平均法と移動平均法それぞれの具体的な計算方法について知りたい方は以下の記事で事例付きで解説しています。併せてご覧ください。
ビットコインなどの仮想通貨で100万円稼いだら税金はいくら?
では実際にどのくらいの税金がかかるのか知りたい方もいるかと思います。
もし仮に仮想通貨の所得しかなかった場合、仮想通貨取引の100万円が総所得金額となります。
「課税所得=総所得-所得控除」で算出できるため、仮に所得控除を48万円とすると、課税所得は、52万円が課税所得となります。
上記の税率テーブルに当てはめて考えると、200万円以下は5%のため、
所得税は、52万円(課税所得) × 5% – 0円 = 2.6万円
が支払う所得税となります。また、住民税が別途10% かかりますので、住民税もおよそ5万円程度かかることとなります。
仮想通貨取引をしている人ができる税金対策
上述のとおり、仮想通貨取引による雑所得には、総合課税が適用されます。所得が大きくなればなるほど、税率も高くなる仕組み(累進課税)となり、最高で45%、住民税・復興特別所得税を合わせると最大で55%の税率となります。
仮想通貨取引で得た所得に対してかかる税金は、あらかじめしっかりと把握しておくことが必要ですし、税務上認められた方法によって税額を減らす方法についても知識を持っておくことが重要です。
たとえば、具体的には以下のような方法があります。
・取引にかかる経費を計上し利益を減少させる
・含み損益を把握して適切な売買をする
・仮想通貨同士の損益通算を利用する
・法人成りによる節税をおこなう
・青色申告の適用を検討する
・ふるさと納税や各種税控除を利用する
・利益確定は年間20万円以下に抑える
これらの仮想通貨の節税術について詳しく知りたい方はページ下部の関連記事もあわせてご覧ください。
仮想通貨の計算を簡単にするためのツール
実際に取引履歴を参考に利益を計算するのはなかなか骨が折れる作業であり、専門的な知識が無ければ難しいのでは?と感じる方も多いと思います。
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※参照元URL:国税庁「暗号資産に関する税務上の取扱い及び計算書について(令和4年12月)|国税庁」
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