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仮想通貨取引において、仮想通貨取引所などがハッキングに遭い仮想通貨が流出したり、送金する際にアドレスを間違えて仮想通貨を失ってしまったりすることがあります。このような状態を「GOX(ゴックス)する」といいますが、GOXとは具体的にどういう意味なのかよくわからない方もいるでしょう。

この記事では、GOXやセルフGOXとはどういったものなのか、これまでの事例や回避するための対策法、税金申告の際の注意点などについて解説します。

目次

  1. GOX・セルフGOXとは? 
  2. 過去のGOXの事例
  3. セルフGOXを防ぐための対策
  4. GOX・セルフGOX時の税金申告の方法・注意点
  5. まとめ

GOX・セルフGOXとは?

「GOX」とは、仮想通貨を失うことや引き出せなくなることをいいます。

これは、2014年に起きたマウントゴックス事件が名前の由来となっています。マウントゴックス事件とは、当時最大級規模であった仮想通貨取引所「マウントゴックス」が、ハッキング被害を受けて480億円相当のビットコインが消失した事件です。

この事件以降、外部からのハッキングや誤送信などにより仮想通貨を失うことを「GOXする」と呼ぶようになりました。

仮想通貨を失う原因などの違いにより「GOX」と「セルフGOX」のふたつに分けられます。GOXとは、資金を預けている仮想通貨取引所がハッキングなどの被害に遭い、仮想通貨を失ったり引き出せなくなったりすることをいいます。一方、セルフGOXとは、誤ったアドレスに送金してしまうなど自らの過失により仮想通貨を失うことをいいます。

過去のGOXの事例

これまでに起きたGOXの事例、およびセルフGOXの起きるケースを紹介します。

GOXの事例:コインチェック事件

GOXの事例として、2018年1月26日に起きた「コインチェック事件」が挙げられます。コインチェック事件は、国内大手の仮想通貨取引所「Coincheck」が外部からのハッキングを受け、580億円相当の仮想通貨「NEM(ネム)」が流出した事件です。

コインチェックの社員が悪意のある第三者から送信されたメール内のリンクを開いたことによる「マルウェア感染」が発端となったとされています。事件発生当時のCoincheckは、NEM(ネム)をコールドウォレットではなくホットウォレットで管理していたことや「マルチシグネチャー (ユーザーが仮想通貨を売買・送金する際、資産を守るために電子署名を複数利用する方式のこと)」に非対応であったことが問題視されました。

その後金融庁より業務改善命令が出され、Coincheckは経営を立て直すことに。マネックスグループの傘下となり、2018年4月6日に開催した会見では被害を受けた投資家への返金が完了したことが発表されました。

セルフGOXが起きるケース

近年のトラベルルール(※)の施行などに伴い、セルフGOXが起きるケースが増加傾向にあります。その中でも主な事例について解説します。

※トラベルルール :「仮想通貨の送金を行う交換業者は、仮想通貨の送金時に、依頼者と受取人の詳しい情報を受取人側の交換業者に通知する必要がある」という規則のこと。詳しくはこちらの記事にて解説しています。 

【相手先のアドレスの打ち間違いなどによる送信】 

法定通貨を銀行を通して送金する場合、誤送信と気づいた時点で銀行に「組み戻し」を依頼すると送金を取り消してもらうことが可能ですが、仮想通貨取引においては状況が異なります。中央管理者が存在せず一度ブロックチェーンに取引が記録されてしまうとその記録は変更することが不可能なため、返金処理ができないのです。

なお、たとえ仮想通貨取引所であっても取引記録を変更する権限はないため、原則として組み戻しへの対応は期待できないといえるでしょう。

【ほかのネットワークへの送信】 

基本的に、別のブロックチェーンネットワークへ送金しようとするとエラーが発生するため送金はできません。しかし、例外的にアドレス形式が似ているネットワーク(たとえば、Ethereum・Ethereum Classic・Polygonなど)ではエラーを検知することができずに送信ができてしまうことがあるのです。この場合、誤送信された仮想通貨は消滅する可能性があります。

【返金機能がないウォレットへの送信】 

返金機能がないウォレットへ送信してしまった場合、仮想通貨自体は消失せずに存在していますが、アクセスができないため事実上消滅したと同じ状況となります。実際に2020年10月に、自らのミスにより110万ドル(1億1600万円超)近くを返金機能のないウォレットに誤って送金してしまったユーザーが発見されたことがあります 。

セルフGOXを防ぐための対策

セルフGOXは誤送金など自分のミスで発生するものなので、対策をとれば発生を回避することが可能です。セルフGOXを防ぐための対策法を3つ紹介します。

アドレスの手入力は避ける

第一に、送信先のアドレスを正しく入力することが基本です。手入力は入力ミスが起こる可能性があるため、コピー&ペーストをするか送信先のQRコードを読み込むようにしましょう。  
どうしても手入力をする必要がある場合は、送信する前に忘れずに再確認することを徹底しましょう。

少額でテスト送金を試してみる

送金する際には、まず少額でテスト送金することを心がけることも大切です。とくに、初めて送金する場合や高額な金額を送金する場合は、少額な送金が無事に着金したことを確かめてから残りの金額を送金すると良いでしょう。

なお、少額のテスト送信でも送金手数料がかかりますが、GOXで高額な仮想通貨を失ってしまうリスクを考えると必要な支出と考えられるでしょう。

「ラベル」機能を活用する

仮想通貨取引所によっては、「ラベル」の登録機能があるところがあります。ラベルとは、ユーザー自身が送信先アドレスを管理するために利用できるメモの項目のことをいい、自分で送信先がわかりやすくなるよう、好きな名前を設定することが可能です。

送金が無事に着金すれば、次回以降はラベルを指定するだけなのでテスト送金をする必要もなくなり、不必要な手数料を支払うこともなく手間や時間も省けます。

GOX・セルフGOX時の税金申告の方法・注意点

仮想通貨取引で生じたGOXやセルフGOXの損失を、ほかの所得と相殺したり必要経費として計上したりしたいと考える方もいるかもしれません。または、「雑損控除」に該当するかを知りたい方もいるでしょう。

このような処置は可能なのか、それぞれのケースで確認していきましょう。

ほかの所得と相殺:できない

仮想通貨取引で生じた損失を、給与所得などのほかの所得と相殺(損益通算)することはできません。所得税法で、損益通算が可能な所得は不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得のみと決められているためです。

それゆえ、会社員などの給与所得者が仮想通貨取引で生じたGOXやセルフGOXの損失を、給与所得と相殺することはできないのです。

必要経費に計上する:場合による

2023年7月時点において、GOXやセルフGOXにおける損失の税金関係について、国税庁からの明確なルールは示されていません。そのため、必要経費に計上できるかどうかは不透明という状況ですが、一般的に下記の事項に該当するのであれば損失計上が可能と見ています。

仮想通貨取引所がハッキングに合ってしまい、取引所が倒産するのであれば、貸倒損失として必要経費に計上することが可能になります。ですが、法的な倒産などの貸倒損失の要件である要件を満たす必要がありますので、ご留意ください。

また、セルフGOXのように、自らの誤操作を原因に仮想通貨を失った場合は、貸倒損失として計上することはできません。雑所得であるために、必要経費の算入も難しいと思われています。仮想通貨の損益通算・費用計上できるものについて詳しくはこちらをご覧ください

雑損控除:受けられる可能性がある

雑損控除とは、災害・盗難・横領などにより損害を受けた場合で所定の要件を満たすときに受けられる所得控除です。

外部からのハッキングなどによるGOXは「盗難」によるものと解釈することが可能なため、雑損控除の適用が受けられる可能性があるとも考えられます。一方、セルフGOXは詐欺や横領ではなく、自身の過失によるものであるため対象にならないと考えられるでしょう。

なお、実際に雑損控除を受ける際には、盗難にあったことの証明(被害届など)や対象の資産が「生活に通常必要でない資産」に該当しないことが求められますので、こちらは顧問税理士等と相談の上、慎重に進めていくのが良いでしょう。適切な税金申告の手続き方法については、今後の国税庁からの通達や税制改正が待たれるところです。

まとめ

GOXは仮想通貨取引所がハッキングなどに遭い仮想通貨が流出することをいい、セルフGOXとは誤送金など自らのミスにより仮想通貨を失うことをいいます。GOXを個人の対策のみで回避することは難しいですが、セルフGOXであれば対応策をとることでリスクを回避することが可能です。

ご自身の資産を守るために、こうした情報にもアンテナを張ってできる限りの対策をしてリスクに備えましょう。

なお、仮想通貨の損益通算ツール「クリプタクト」が運営している当ブログでは、仮想通貨関連の最新情報を含むさまざまな記事を定期的に公開しています。最新情報が知りたい方は、クリプタクトに登録すると受け取れるメルマガを登録したり公式Twitterアカウントをフォローしたりしてみてください。