
仮想通貨取引をしている方であれば、少ない元手で一攫千金のチャンスを夢見たことが一度はあるのではないでしょうか。
一方で、利益が出たら納税の必要があり、大金を稼ぐほど税金の負担は大きくなるため、もし「億り人」になったらいくら税金を払うことになるのか気になっている方も多いことでしょう。
そこで、この記事ではビットコインなどの仮想通貨取引で「億り人」になった場合の納税とその注意点について、実例や税金シミュレーション、税金対策なども交えながら分かりやすく解説していきます。
税金計算を簡単に済ませる方法もご紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
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暗号資産の億り人(おくりびと)の現在とは?
仮想通貨市場の急速な成長とともに増えてきた「億り人」は、一攫千金を象徴する存在として広く社会からも注目されてきました。
初期仮想通貨ブームの最中であった2017年には、仮想通貨取引で1億円以上の雑所得を申告した人が331人もいたことが国税庁から公表されています。
このように値上がりした仮想通貨を現金化した「億り人」もいれば、現金化せずにそのまま含み益を持ち続ける「億り人」もいます。
2021年の東洋経済新報社の記事に掲載されたA氏も、そんな「億り人」の一人です。
A氏は2014年から仮想通貨の取引をはじめ、2017年の仮想通貨ブームの際には資産が10億を超えたものの、その後の暴落で一時は2億円を下回ったといいます。
しかしその後も保有を続けた結果、仮想通貨価格の上昇によって再び資産が膨れ上がり、2021年時点では7億円を超える水準と なりました。
税金を考慮して取引は頻繁に行っていないものの、近年はDeFi(分散型金融)の発展によって仮想通貨を保有したまま運用することもできるようになったため、数千万円規模の「利息」収入を得ているといいます。
参考記事:「7億稼いだ「億り人」の意外にも質素な生活模様」(2021/02/17付)
税金をしっかりと考慮しながら、巨額の資産と収入を得た事例と言えるでしょう。
仮想通貨の「億り人」が税金で苦しんだ理由とは
さて、仮想通貨の値上がりによって生まれた「億り人」ですが、その後にいわゆる「税金地獄」に陥り、税金が支払えなくなる事例も多発しました。
例えば、東洋経済新報社の2021年の記事によると年収300万円の女性が多額の追徴課税を課せられた事例が紹介されています。
この女性は仮想通貨取引で多額の含み益を得た後、他の仮想通貨に交換。その後に大暴落したものの、税務署からは約5,300万円の申告漏れを指摘され、約3,000万円の追徴課税を課せられています。女性は暴落によって資金を失っていたため一括で支払うことができず、毎月の収入から少額ずつ滞納分を返済し続ける苦しい状況になったといいます。
参考記事:「年収300万彼女が追徴課税3000万受けた深刻理由」(2021/9/19付)
巨額な富を得たはずなのに、税金が支払えないとはいったいどういうことなのでしょうか。
その理由は、仮想通貨の税金の仕組みにあります。
仮想通貨の税金は「天引き」ではなく自己申告制です。
サラリーマンの給与であれば税金が予め引かれて振り込まれるため、税金が払えなくなる心配は基本的にありません。これを源泉徴収といいます。
しかし、仮想通貨の税金には源泉徴収がなく、利益を受け取った投資家自身が1年分の利益を集計し、翌年3月15日までに確定申告して納税する必要があります。
このため、納税を考えずに手元の利益を使い切ってしまうと、税金を支払えなくなり、資金繰りが破綻する可能性があるのです。
また 、仮想通貨の利益を現金化していなくとも税金が発生する点にも注意が必要です。
例えば、購入時よりも大きく値上がりしたビットコインを、イーサリアム(ETH)に交換する取引を行った場合、実際には現金化していなくとも、一度ビットコインを売却して得た現金でイーサリアム(ETH)を購入したもの見なされて多額の税金が課せられます。
翌年に税金を支払うためにイーサリアム(ETH)を売ろうとした時に、もしイーサリアム(ETH)が暴落してしまっていた場合、イーサリアム(ETH)を全て売っても納税額が足りないという事態が発生し得るのです。
このように、税金について基本的な理解がないまま大きな利益を得ると、思わぬ「税金地獄」に直面する可能性があります。
仮想通貨取引を行う際には、いつ大きな利益を得ても大丈夫なように、仮想通貨の損益計算ができる体制を整え、最低限の税金知識を身に着けておくことが大変重要となるのです。
仮想通貨で1億円の利益が出たら、納税額はどうなる?
それでは、仮に仮想通貨取引で1億円相当の利益が出た場合、納税額はどれほどになるのでしょうか。
ここでは税金計算の仕組みを確認しつつ、実際にシミュレーションしていきましょう。
仮想通貨の税金の仕組み
仮想通貨取引を通じて利益を得た場合、その所得は「雑所得」として「所得税」「復興特別所得税」「住民税」の課税対象となります。
このうち、特に大きいのが「所得税」です。
「所得税」の税率は、「雑所得」や「給与所得」などと合算した課税所得額に応じて税率が5%〜最大45%の範囲で変動します。
つまり、稼いだ金額が大きいほど税率が段階的に高くなっていく仕組みになっているのです。
所得税の税率表
(引用元:国税庁|No.2260所得税の税率)
なお、各段階を超えた分から税率が高くなっていく「累進課税」制度が採用されているため、最大の場合でも所得全額に対して45%が適用されるわけではありません。
とはいえ、上記の表を見てわかるように、「億り人」となって1億円以上の所得を得た場合は、所得の半分以上に対して税率45%が適用されることになります。
なお、「復興特別所得税」は2037年までの時限的な税金ですが、所得税額に対して2.1%が課税されます。
「住民税」は居住している自治体によって詳細が異なる場合がありますが、所得金額に対して約10%程度の課税となることが一般的です。
これらを合わせると所得額に対する税率は55%以上に及ぶ場合もあり、現在の日本の税制では「億り人」に課せられる税金は非常に高額なものとなるのです。
税金シミュレーション
それでは、実際に「所得税」の金額をシミュレーションしてみましょう。
サラリーマンBさんの例
年収500万円のサラリーマンBさんは副業で仮想通貨投資を行っている。 数年前に購入した仮想通貨が大幅に値上がりし、今年売却したことで1億円の利益を得た。 |
このケースでは、Bさんは給与所得500万円と、雑所得1億円、あわせて1億500万円の所得を得ていることになります。
ここから、各種所得控除を差し引くことができます。ここでは計算をシンプルにするため保険料控除等は省略しますが、Bさんの場合は給与所得控除として144万円を控除することができますので、課税所得額は1億356万円となります。
これに前述の所得税率を適用すると、下記の計算となります。
【所得税】
1億356万円 × 所得税率45% - 税額控除4,796,000円 = 41,806,000円の所得税
【復興特別所得税】
41,806,000円 × 復興特別所得税率2.1% = 877,926円の復興特別所得税
【住民税】
1億356万円 × 住民税率約10% = 約10,356,000円
(詳細は自治体によって異なる場合があるためおおよその金額です)
合計するとBさんには5千万円以上の所得税がかかることがわかります。
しっかりと納税資金を確保しておけば問題ありませんが、もし、不注意で利益を全て使い切ってしまったとしたら、本来の年収が500万円のBさんにとっては非常に重たい巨額の負債を抱える恐れがあるのです。
なお、ご自身の税額がどのくらいになるか知りたい場合には仮想通貨の損益計算ツール「クリプタクト」のサイトにて無料でシミュレーションが可能です。ぜひ試してみてください。
無申告の場合、あとから20〜40%の「罰則」も
前項では、『億り人』にかかる税金が非常に大きいこと、そしてそれゆえに納税資金をしっかり確保しておかないと大変な事態に陥ることをご紹介しました。
中には、『確定申告をしなければバレないのではないか』『税金から逃げられるのではないか』と考えてしまう方もいるかもしれません。
しかし、それは非常に危険な考えと言えます。
納税は全ての国民の義務であるという前提はもちろんのこと、追徴課税や罰則のリスクを考えても全く賢明とは言えません。
税務署には申告漏れや脱税を見つけるための強力な権限があり、銀行口座や取引所の取引内容などを調査する「税務調査」を行うことができます。
また、日本は世界各国と租税条約を締結することにより、各国の税務当局を通じて海外取引所等の取引内容を照会することも可能です。
そのため、仮想通貨の申告漏れは必ず発覚すると考えた方が良いでしょう。
申告漏れが発覚すると、追徴課税などの重いペナルティを課せられることになります。
特に、全く申告をしていない場合は本来の納税額に対して最大約20%の「無申告加算税」が加算されます。また、隠蔽などの悪質性が認められた場合は40%が加算される場合もあるのです。
納税義務を果たすことはもちろん、自分の身を守るためにも、仮想通貨で得た利益の申告は必ず正確に行うことが大切です。
具体的なペナルティの内容は関連記事内でも紹介しています。あわせてご覧ください。
仮想通貨の税金対策
仮想通貨取引を通じて「億り人」となるような大きな利益を得た場合は、必ず確定申告をして税金を支払う必要があります。
とはいえ、税務上認められている範囲内で課税所得額を低くする工夫を行うことで、ある程度の節税を行うことは可能です。
ここでは、代表的な3つの方法についてご紹介します。
● 各種税控除を活用する
● 取引にかかる経費を計上して利益を減らす
● 含み損益を把握して課税所得額を抑えるよう取引する
それぞれ見ていきましょう。
各種税控除を活用する
税金の申告にあたっては、さまざまな税控除を利用することで所得全体を減らすことが認められています。
所得控除としては「基礎控除」、「給与所得控除」、「社会保険料控除」、「医療保険料控除」などがサラリーマンにも身近な控除として知られていますが、仮想通貨取引で事業規模の収入(年間300万円を超えるケースなど)がある場合は、事業所得として青色申告を行うことで「青色申告控除」を適用できる可能性もあるでしょう。
こうした節税術についてはこちらの記事で税理士による解説を掲載していますので、ぜひご覧ください。
仮想通貨の税金地獄の抜け道?税理士による節税術7選
取引にかかる経費を計上して利益を減らす
所得とは収入から必要経費などを差し引いて残った利益のことですので、経費を計上することで所得を抑えることができます。
例えば、仮想通貨取引においては次のようなものが必要経費と考えられます。
● 仮想通貨取引所に支払った売買手数料
● 売買の際にかかったトランザクション手数料(ガス代)
● 電気代・通信費
● スマートフォン・パソコン購入費 など
(ただし、仮想通貨売買に直接必要な支出と認められる部分に限る)
特に、売買取引にかかった手数料などは経費として認められる可能性が高いため、しっかりと把握して漏れなく計上するとよいでしょう。
取引所への支払手数料については国内取引所が発行する「年間取引報告書」を確認する方法があります。
とはいえ、「年間取引報告書」は必ずしも全ての取引所が発行してくれるものではありません。海外取引所やDEX(分散型取引所)なども含めて多数の取引所を利用している場合は、手数料を確認・集計するだけでも一苦労となることでしょう。
仮想通貨専門の損益計算ツール「クリプタクト」であれば、登録した取引所への支払い手数料を自動集計して表示してくれるため、効率的に節税対策を行うことができます。
含み損益を把握して課税所得額を抑えるように取引する
仮想通貨取引の利益は、同じ総合課税の雑所得の損失と相殺することができます。
これを「損益通算」と呼び、所得をコントロールする有効な節税手法となっています。
例えば、ビットコイン取引で1億円の利益を得た場合、そのままでは所得も1億円増えて多額の税金が発生することになってしまいます。しかし、もし別の仮想通貨取引で8,000万円の損失が発生していれば通算して所得は2,000万円に抑えることができます。
所得が下がることで、所得×税率=税金となっているために、税金も抑えることができます。
この方法を応用し、常に自身のポートフォリオにおける含み損益を把握しておくことで、課税所得が多くなりそうな時は含み損のある銘柄を敢えて損切りをするなどの対策を行い、税金を大幅に圧縮することができるのです。もちろん、この方法を行うには確定損益や含み損を正確に把握できていることが前提となります。
手作業でこのような状況を正確に把握するのは大変ですが、仮想通貨専門の損益計算ツール「クリプタクト」では、確定損益や含み損益を自動的に計算されてサマリー画面に一覧表示されます。
損益計算ツールを上手に活用する
各種控除の活用は基本的な節税対策ですが、「億り人」のように所得が大きくなるにつれて控除額が少なくなったり、適用外になるなど、恩恵が小さくなる傾向にあります。
一方で経費の計上や損益通算による節税は、仮想通貨取引の規模が大きくなるにつれて節税効果も大きくなります。
そのため、こうした節税をしっかりと行うためにも、仮想通貨専門の損益計算ツールを上手に活用することが重要です。「クリプタクト」であれば、国内外130カ所以上の仮想通貨取引所からの取引履歴取得に対応しており、ガイドに沿って簡単な操作を行うだけで面倒な損益計算を自動的に処理できます。
また、経費として計上可能な売買手数料の集計や、確定損益・含み損益なども自動的に計算されるので損益計算における手間を大幅に削減できます。海外取引所やDeFi(分散型金融)での取引も無料で計算できるFreeプランが用意されていますので、ぜひこの機会に「クリプタクト」をお試しください。