商品やサービスを購入する際に多くのケースで発生する消費税は、私たちの生活に最も身近な税金と言えます。
それでは、仮想通貨取引にも消費税がかかる場合はあるのでしょうか。
この記事では仮想通貨における消費税の課税関係と、その背景や理由について解説していきます。
消費税は通常の税金と異なり、負担をするのは消費者ですが、納税義務者は事業者(個人事業主を含む)となっています。そのためこの記事でも両方の視点を含めてご紹介します。
目次 |
仮想通貨の取引で消費税はかかるのか?
それでは、仮想通貨取引に消費税がかかるのか、いくつかの観点に分けて見ていきましょう。
仮想通貨の譲渡(売却)に消費税はかからない
消費税法では、事業者が事業として対価を得て行う資産(商品など)の譲渡、また資産の貸付や役務の提供などに対して消費税が課税されることとされています。
基本的に対価を得て行う取引はそのほとんどに消費税が課されると考えて良いでしょう。
しかし、土地・有価証券・外貨の譲渡や住宅の家賃など、一部の取引については非課税取引として指定されており、「支払い手段」の譲渡も非課税取引に区分されます。
仮想通貨は「支払い手段」の1つとして位置付けられているため、仮想通貨の譲渡には消費税がかからないということになります。
そのため、仮想通貨を購入する際に消費税を支払う必要はなく、また売却する際も消費税を請求する必要はないのです。
なお、消費税課税事業者の場合、一般課税で申告する際には仕入控除税額を確定するために課税売上割合の計算が必要になりますが、仮想通貨の売却については非課税売上高に含めて計算する必要はないものとされています。
仮想通貨取引所の取引手数料には消費税がかかる
前項で仮想通貨の購入に消費税はかからないと述べましたが、消費税が非課税となるのは仮想通貨そのものに対してのみである点に留意が必要です。
通常、仮想通貨取引所を経由して仮想通貨を購入する場合は取引手数料を支払うことになりますが、このような手数料には消費税がかかることになります。
なお、別途断りがある場合を除き、消費税込みの手数料が記載されているため別途支払う必要はありません。
手数料は仮想通貨取引所が提供している役務(サービス)に対する対価であり、消費税の非課税取引には該当しないためです。
売買以外の取引で消費税はかかるのか?
仮想通貨自体を売買するのではなく、仮想通貨を商品やサービスに対する対価、すなわち支払い手段として使用する場合はどうでしょうか。
商品の対価として仮想通貨を支払う場合や受け取る場合、もしくは役務の報酬として仮想通貨を受け取る場合など、それぞれのケースにおける消費税の取扱いについて見ていきましょう。
商品・サービスを受け取って仮想通貨を支払った場合
商品・サービスを受け取り、その対価として仮想通貨を支払う場合、その取引は現金で支払う場合と同様に消費税の課税対象となります。(商品・サービスが非課税取引に該当する場合は除く)
なお、仮想通貨で商品・サービスを購入する際には、仮想通貨の取得原価と譲渡価額の差額から所得計算を行う必要がありますが、この場合の譲渡価額には消費税を含めるものとされています。
例
550万円(消費税込)の商品を1BTCで購入した。BTCは400万円で購入したものであった。 ⇒ 税込譲渡価額550万円 - 取得原価400万円 = 150万円が課税所得 |
商品・サービスを提供して仮想通貨を受け取った場合
自分が事業として商品・サービスを提供し、その対価として仮想通貨を受け取った場合、その取引は現金で支払いを受ける場合と同様に消費税の課税対象となります。(商品・サービスが非課税取引に該当する場合は除く)
取引相手に対して消費税を含めて請求する必要がでてきますので、注意が必要でしょう。
マイニング報酬を受け取った場合
マイニングと消費税の関係についてはどうでしょうか。
マイニングはブロックチェーンを維持するためにマイナーが行う作業であり、役務の提供と捉えることもできます。
しかし、マイニング報酬はブロックチェーンのシステムが自動的に支払っているものであり、そこに中央管理者は存在しません。誰が報酬を支払っているか特定できないため、課税対象者を特定することができません。
そのため現時点では、マイニング報酬は「消費税の対象外とすることが妥当である」と考えられています。
この考え方は国税庁の研修機関である税務大学校の研究結果として、国税庁のウェブサイト上で公開されています。
仮想通貨取引の消費税非課税化の背景
仮想通貨が登場し、日本国内でも取引されるようになった当初、日本政府は仮想通貨を「価値を記録したもの(価値記録)」と位置付けていました。
そのため、通貨または商品・サービスと価値記録を交換する取引は消費行為と位置付けられ、単純な仮想通貨の売買取引も消費税の課税対象とされていたのです。
しかし仮想通貨の普及が進むにつれて政府の仮想通貨に対する認識も変化していき、2017年度税制改正大綱において仮想通貨が「支払いの手段」として位置付けられることが決定されました。
それまでは「もの」として扱われていた仮想通貨が「支払い手段」となったことで、有価証券や外貨などと同様に消費税の非課税取引に該当することになり、より仮想通貨を使いやすい環境になったと言えるでしょう。
まとめ
この記事では仮想通貨取引で消費税がかかる場合とかからない場合の違いや、その理由と背景についてご紹介してきました。
最近の消費税に関する主要な出来事として、2023年10月から開始されたインボイス制度の開始が挙げられます。
これは適格請求書発行事業者が発行するインボイス(請求書等)に記載された税額のみを消費税の仕入税額控除に算入できるという制度です。
仮想通貨取引所によってインボイス制度への対応状況は異なるため、支払った取引手数料は仮想通貨取引所ごとに集計して管理しておく必要があります。
仮想通貨専門の損益ツール「クリプタクト」であれば、仮想通貨取引の損益計算が簡単にできるだけでなく、取引手数料を取引所ごとにソートすることもできます。
(クリプタクトの取引所別集計画面。取引高や支払手数料の合計額が取引所別に表示される)
クリプタクトは、国内外の90以上の仮想通貨取引所から取引履歴を取得し、損益計算まで行うことができるツールです。一部の取引所ではAPI連携を利用して取引履歴を自動的に取得できるため、仮想通貨取引に関する税金計算を効率的にサポートします。
なお、仮想通貨に関する法整備は消費税非課税化以降も、継続的に進められています。
2020年には金融商品として仮想通貨が追加されたほか、利用者保護の強化が行われました。また2023年には法律がステーブルコインに対応したことで、国内事業者による新しいステーブルコイン発行への道が大きく開かれることになりました。
仮想通貨を取り巻く環境は日々大きく変化を続けているため、変化をいち早く察知して、仮想通貨を最適に取引・管理していくためには、常に最新情報へのアンテナを張っておくことが大切です。
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