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仮想通貨取引をする上で気を付けたいのが詐欺などの被害です。仮想通貨関連の不正行為には、外部からのハッキングをはじめさまざまなタイプのものがありますが、最近は「ラグプル」という不正行為も起きています。

仮想通貨取引人口の拡大に伴って詐欺の手口も巧妙化しており、被害に遭う可能性が絶対にないとは言い切れない状況です。

この記事では、ラグプルという詐欺の具体的な手口や過去の事例などを解説するとともに、対策方法を紹介します。

目次

  1. ラグプルとは? 
  2. ラグプルの手口
  3. 過去のラグプルの事例
  4. ラグプルへの対策方法
  5. ラグプルにおける税金申告の注意点
  6. まとめ

ラグプルとは?

ラグプル(Rug Pull)とは、「出口詐欺」という意味で、仮想通貨の開発者・運営サイドが秘密裏に資金を引き出し持ち逃げするという詐欺手法のひとつです。

ラグプルの由来は、人の足下に敷かれてあるラグ(Rug)を引っ張る(Pull)と、ラグの上に立っている人は足元をすくわれたうえ、ラグの上のものを持ち去られてしまうという状態が、出口詐欺と類似しているためといわれています。

仮想通貨業界においては2022年に急増した詐欺行為ですが、ラグプル自体は従来から株式や金投資関連でも行われていた古典的な詐欺手法です。

ラグプルの手口

ラグプルは仮想通貨の中でもDeFi、NFT、GameFiなどで多く行われている傾向があり、いずれの分野でも最新のプロジェクトがターゲットになっていることが多いです。

ラグプルを行う詐欺集団は、投資家に対し「新しい仮想通貨プロジェクトの開発」といった話を持ち掛け、開発に積極的に関与するように仕向けます。興味を持った投資家が投資をすると詐欺集団の開発者が新しい仮想通貨を作成しますが、プロジェクトの達成前に資金を引き出して逃走するという流れで詐欺が行われます。

ラグプルは、その手法の違いにより「ハードラグプル」と「ソフトラグプル」のふたつに分類されます。

ハードラグプル

ハードラグプルとは仮想通貨自体に詐欺的な機能を組み込むことで、投資家の資産を騙し取る手法のことをいいます。「不正を行う」という目的が明確なため、犯罪性の高い行為といえます。

具体的には、仮想通貨の売却が自由に行えないやDEXからの出金ができない、高額な手数料の請求を受けるなどの被害が報告されています。

ソフトラグプル

ソフトラグプルとは仮想通貨の価格を意図的に吊り上げ、上げ切ったところでDEXなどで売り切り、価値のなくなった仮想通貨を市場に投棄(放棄)する手口のことをいいます。現時点では、明確な犯罪性があるとは認められていませんが、倫理上問題のある行為といえるでしょう。

ソフトラグプルでは、大規模なプロモーションや過剰なキャンペーンを行ったりインフルエンサーなどを介した情報拡散をしたりすることで投資家から資金を調達します。その後、開発者や運営者に割り当てられている資金のみが引き出され、音信不通になることが多いようです。

過去のラグプルの事例

ラグプルの過去の事例はいくつかありますが、有名なのは「イカゲーム (SQUID)」と「SudoRare」です。

イカゲーム (SQUID)

イカゲーム (SQUID)は、人気ドラマ「イカゲーム (Squid Game)」に便乗して2021年10月20日に販売された仮想通貨です。ドラマの影響もあり、発行後数日間のうちに31万%という高い上昇率を記録し、多くのメディアでも取り上げられました。

しかし、同年11月1日に創設者が、投資家がSQUIDを売却できないように操作したうえで流動性プールの資金を抜き取り売却し、約4億円(330万ドル)の利益を得て逃亡しました。

SudoRare

分散型NFT取引所である「SudoRare」は、自動マーケットメーカー(AMM)やNFTマーケットプレイスとしての機能を果たしており、Wrapped Ethereum(wETH)・ルックスレア(LOOKS)・XMONなどの仮想通貨のステーキングができると広告宣伝されていました。

2022年8月23日、開始からわずか6時間ほどで公式サイトがオフラインになり、1億円以上の仮想通貨が失われた ことから、ラグプルが発生した可能性が高いと判断されました。        

運営側が、自分たちだけがアクセスできる流動性プールから仮想通貨を持ち出し、ETHやLOOKS、USDCなどの仮想通貨で外部に送金したことが突き止められています。

ラグプルへの対策方法

ラグプルは最初から投資家から集めた資金を奪うことを目的としており、その手口を見破ることは簡単なことではありません。そのうえ、利益が期待できることや将来的に有望などと魅力的な宣伝がされていることもあり、投資意欲を掻き立てるものでもあります。

しかし、ラグプル被害に遭わないためにはそういった魅力的な文言に惑わされず、自分でできる予防・対策を講じておくことが大切です。

①プロジェクトの実体を確認する

投資したいプロジェクトを見つけたら、まずはそのプロジェクトが実体のあるもので信憑性のあるものなのかを確認しましょう。プロジェクトの公式サイトには、ホワイトペーパーが公表されているはずです。

ホワイトペーパーには、仮想通貨を発行する目的や流通規模、実現までのロードマップ(計画書)などが記載されているので、仮想通貨の将来性などを判断するだけでなく、詐欺かどうかを見極めるための材料にもなるでしょう。

また、プロジェクトの開発者や運営者の名前が明記されているかもチェックポイントになります。過去の実績などもあるとプロジェクトの信憑性も高くなるでしょう。

②流動性のロックの有無を確認する

プロジェクトにより発行される仮想通貨が、規定に則ったものであるかどうかも確認しましょう。特に、仮想通貨がロックアップされているかは注意したいところです。ロックアップされていない場合、開発者や運営者などが資金を持ち逃げする可能性が考えられます。

通常、事前に決めた期間が経過するまでロックされたスマートコントラクトが流動性を確保しており、その期間についてはホワイトペーパーなどに記載されているのが一般的です。仮に記載されていない場合は、ロックについてうやむやにしている可能性があり詐欺目的であると考えられるでしょう。

なお、ロックを外部監査が行うと決められているプロジェクトであれば、より健全なプロジェクトといえるでしょう。

③SNSの評判・注意喚起を確認する

興味のあるプロジェクトについて、個人がSNSなどで発信している情報をチェックするのもひとつの方法です。プロジェクトに興味を持ち、すでにプロジェクトに対して調査した人が、何らかの詐欺を疑った場合、SNSで注意喚起をしていることがあります。

インターネット上の情報を鵜呑みにする必要はありませんが、注意喚起の対象となったプロジェクトである場合、より慎重な確認作業が必要になるでしょう。

ラグプルにおける税金申告の注意点

ラグプルの詐欺に遭い損失が出た場合、ほかの仮想通貨取引で得た利益と相殺したいと考える方もいるでしょう。

しかし、個人の雑所得の場合は、詐欺により失った資金は必要経費として認められておらず、利益と相殺することはできないとされています。
ただし、事業所得や法人運用の場合は資産の状況も報告する(=貸借対照表を提出する)ことから、必要経費になるとみられています。

ちなみに、ハッキングにより仮想通貨で損失が出た場合は、要件を満たしていれば「雑損控除」を受けられる可能性があります。ただし、雑損控除の対象となるのは、災害関係や横領、盗難であり、詐欺による被害は対象外とみられています。そのため、ラグプルでは雑損控除の適用もできない可能性が高いです。

現時点においては、法的な救済措置はないと考えられています。
とはいえ、仮想通貨関連の詐欺行為や税務処理などについては法律で正式に定められていないため、今後の法整備の動きに注目しましょう。

まとめ

魅力的なプロジェクトや最新のプロジェクトなどに投資する際には、そのプロジェクトが信頼できるものなのか十分に確認したうえで取り組むことが大切です。

最近の仮想通貨を利用した詐欺は巧妙化しており、見抜くのは容易いことではありません。しかし、最新情報を取り入れてできる限りの対策を施したいものです。

なお、仮想通貨の損益通算ツール「クリプタクト」が運営している当ブログでは、こうした仮想通貨取引をするうえで知っておきたい情報を定期的に公開しています。最新情報が知りたい方は、クリプタクトに登録すると受け取れるメルマガを登録したり公式Twitterアカウントをフォローしたりしてみてください。