損益通算とは、利益と損失を相殺することをいいます。
損益通算をすることによって課税所得が減少するため、課税所得×税率で算定される税金の金額を圧縮できる効果があります。たとえば、給与所得を得ているサラリーマンが副業を手掛け、副業の事業所得が赤字になった場合、給与所得と事業所得を損益通算することにより、源泉徴収で納税済税金の還付を受けることが可能です。
しかし、損益通算できる所得には制限があり、損益通算できる所得とできない所得があります。
この記事では、仮想通貨で得た所得は損益通算できるのか、損益通算をする場合の節税のコツについても併せて解説していきます。
目次
仮想通貨(暗号資産)で得た所得は損益通算できるか?
結論から述べると、仮想通貨取引で得た所得は他の所得と損益通算をすることはできませんし、翌年以降に損失を繰り越すこともできません。
ただし、同一年内に発生した同じ雑所得に分類される所得であれば損益通算をすることが可能です。
具体的にどのようなことなのか、順に整理していきましょう。
なお、この記事では仮想通貨の損益通算についてを中心に解説しています。
仮想通貨(暗号資産)で得た利益の分類
まず、仮想通貨の取引で得た所得は、基本的に所得税の「雑所得」に分類されます。
雑所得とは、その他所得税の対象となる、給与所得・退職所得・不動産所得・事業所得・山林所得・利子所得・配当所得・譲渡所得・一時所得の9つの所得のいずれにも該当しない所得のことです。
仮想通貨の収益以外には、公的年金等、非営業用貸金の利子、副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)が該当します。
雑所得の特徴
「雑所得」には、主に次のような特徴があります。
● 特別控除がない
● 赤字の繰越ができない
● 総合課税以外の所得と損益通算ができない
それぞれについて詳しくみていきましょう。
1.特別控除がない
「雑所得」は特別控除を適用することができません。
特別控除とは、所定の条件を満たした所得に対して、一定の額を所得から差し引くことができる制度のことです。
例えば、マイホーム(居住用財産)を売った場合にはその「譲渡所得」に対して最大3,000万円の特別控除が認められるほか、「一時所得」の場合には一律で最大50万円の特別控除を適用できるなど、所得の分類に応じてさまざまな特別控除が用意されています。
しかし現状、「雑所得」についてはこのような特別控除は用意されていないのです。
2.赤字の繰越ができない
「雑所得」は、赤字を翌年以降に繰り越すことができません。
これは「繰越控除」と呼ばれる制度で、株式投資等で損失が生じた場合に、その年の確定申告で控除しきれなかった分を翌年以降3年間にわたって繰り越して控除できるというものです。
大きな赤字が生じた際に年度を跨いで節税ができるため税金対策として活用されることが多い制度ですが、現状ではこちらも「雑所得」での利用は認められていません。
仮想通貨取引で多額の損失を計上したとしても、翌年以降の節税には活用できないのです。
3.総合課税以外の所得と損益通算ができない
「雑所得」は、「雑所得」以外の所得との間で損益通算を行うこともできません。
上述のとおり、損益通算とは、損失と利益があった際にプラスマイナスを相殺して所得を算出することをいい、「不動産所得」「事業所得」「譲渡所得」「山林所得」などは、損失が生じた場合に他の所得と損益通算を行うことが認められていますが、「雑所得」の場合は同じ「雑所得」同士でしか損益通算ができません。
つまり、ビットコイン取引で生じた損失をイーサ取引の利益と損益通算することはできますが、仮想通貨取引で生じた損失を、「給与所得」と相殺して節税することはできないのです。
仮想通貨(暗号資産)取引で損失が出ている場合、確定申告の必要はあるのか
結論から述べると、仮想通貨取引の年間損益が損失(マイナス)の場合、もしくは仮想通貨取引で得た利益から各種経費を差し引いた「雑所得」が20万円以下の場合は、原則として仮想通貨取引を理由とする確定申告は不要です。
ただし、仮想通貨取引以外に雑所得があって仮想通貨の損益と通算して20万円を超える場合や、医療費控除を受けたい場合などは確定申告が必要になります。
その際、雑所得が損失(マイナス)の場合は記載する必要はありませんが、雑所得がプラスの場合は、例え20万円以下であっても記載が必要になりますので注意しましょう。
なお、仮想通貨取引の年間損益には含み益や含み損は含まれません。
例えば、購入したビットコインを値下がり後に売却した場合などは損失が確定していることになりますが、値下がりしたビットコインを保有したまま含み損を抱えている状態は損失が確定していないため税務上の損失とは認められません。
確定申告の要否を確認する際は、税務上の年間損益を正確に把握することが大切なのです。
仮想通貨(暗号資産)の損益通算の方法
仮想通貨取引は同じ「雑所得」同士であれば損益通算が可能です。
「損益通算」を活用して仮想通貨の税額を抑える方法について見ていきましょう。
適切な処理をすれば翌年度以降の税額を相対的に低く抑えることが可能
節税するためには実現損益をできるだけ0に近づけることが重要です。
というのも、仮想通貨の取引で得た所得にかかる税金は累進課税のため所得が大きくなればなるほど税率も高くなるからです。また、仮想通貨での損失は次年度以降に持ち越すことはできないといったことも理由のひとつです。
そのため、年末までに調整取引を行って仮想通貨の含み益や含み損をできるだけ相殺しておくことで、その年の税金や翌年以降の税金を低く抑えられる場合があるのです。
では、どのように損益通算によって納税額の圧縮や納付済の税金の還付を受けられるようにするのでしょうか。個々人の状況によって対策が変わってきますので以下の説明に沿って対策をご検討ください。
まずそれぞれの仮想通貨の種類別に損益を計算しましょう。
仮想通貨の損益(実現損益)は以下の計算式で求められます。
実現損益の計算式
売却金額-(取得単価×売却数量) |
たとえば、取得単価が150万円だったビットコインを3枚500万円で売却した場合は、以下のように計算します。
損益=売却金額500万円-(取得単価150万円×売却数量3枚)=50万円
保有している仮想通貨それぞれにおいて上記のような計算を行い、各仮想通貨の損益を算出し、その合計が仮想通貨全体での損益となります。そして、以下のようなケースでは損益通算を行うことで節税につながります。
【①合計所得がプラスで含み損がある場合の対策】
仮想通貨全体では利益が出ていても、個々の仮想通貨の中には含み損を抱えているものがあるケースがあります。
課税所得を圧縮するために、含み損を抱えている仮想通貨を売却し損失を確定すると、仮想通貨全体の利益を圧縮することができます。
たとえば、仮想通貨全体で200万円の利益があってもイーサリアム(ETH)が50万円の含み損を抱えている場合、イーサリアムを売却し損失を確定することで仮想通貨全体の利益を150万円に圧縮することが可能です。
※含み損:仮想通貨の購入時よりも時価が値下がりしているときの差額
【②合計所得がマイナスで含み益がある場合の対策】
上記①とは逆のケースで、仮想通貨全体では損失となっていても、含み益のある仮想通貨がある場合は、売却し利益を確定することで仮想通貨全体の損失を縮小することが可能となります。
この場合、売却するタイミングが重要です。
たとえば仮想通貨全体では200万円の損失があってもイーサリアムが80万円の含み益を内包している場合、同一年内にイーサリアムを売却し利益を確定すれば、仮想通貨全体の損失は120万円となります。
しかし、イーサリアムを翌年に売却した場合は、80万円は利益となり課税対象となってしまうのです。
仮想通貨の取引で生じた損失は翌年に持ち越すことができないため、年内に利益確定をすることで翌年度以降に発生する可能性のある所得を抑えることが可能となります。
※含み益:仮想通貨の購入時よりも時価が値上がりしているときの差額
仮想通貨の年をまたぐ場合の税務処理については、ページ下部の関連記事でも解説していますのでぜひ併せてご覧ください。
仮想通貨取引で得た所得は税務上の特典が少ない「雑所得」に分類されてしまいますが、それでも年末までに調整取引を行うことで、税金を可能な限り低く抑えることが可能です。
このような調整取引を行うためには、利益が出ている時はもちろん、損失が出ている時であっても正確な損益(実現損益と含み損益)を把握しておくことが大切です。
仮想通貨(暗号資産)の確定申告を簡単に終わらせる方法
この記事では、仮想通貨で得た所得を損益通算する場合は「雑所得」同士に限られることや、実際に損益通算をする場合の節税のコツなどについてご紹介してきました。
仮想通貨取引で一定以上の利益を得た場合は確定申告が必要になりますが、仮想通貨の利益(雑所得)を正確に申告するためには、事前準備と膨大な量の計算が必要不可欠です。
ただでさえ面倒な確定申告ですから、正確な損益計算をできるだけ簡単に終わらせられるように、自動化できる計算部分は専用のツールに任せてしまうのが良いでしょう。
仮想通貨専門の損益計算ツール「クリプタクト」であれば、税務上の計算方法に沿って損益を算出してくれるため、表示される「実現損益」の金額がそのまま確定申告における仮想通貨の利益(雑所得)として使用できます。
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