仮想通貨取引で利益を得た際、収入から必要経費を引いた「所得」が一定額以上であれば、確定申告が必要です。確定申告を失念、また怠ってしまうと、最大14.6%と高金利な延滞税が発生してしまいます。
一方、確定申告にて経費計上をうまく利用して課税対象となる所得の額面を抑えれば、支払うべき所得税を軽減できます。しかし、仮想通貨取引において経費として認められる費用が分からない方もいらっしゃるでしょう。
そこで本記事では、仮想通貨取引で経費として認められる可能性が高い費用や、所得区分による経費の種類について解説します。仮想通貨取引で得た所得に対して、節税対策をしたい方はぜひ参考にしてみてください。
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仮想通貨の確定申告において経費計上が重要な理由
仮想通貨で得た利益は所得とみなされ、所得税が発生します。所得税は累進課税のため、金額が大きくなれば課税される税金は上がります。その際に節税対策として利用できるのが、確定申告による経費計上です。
所得は「収入(利益)-経費=所得」で算出されるため、経費を上手に計上すれば、所得税がおさえられます。経費が多ければ差し引く金額が大きくなり課税所得が下がる、というシンプルかつ効果的な節税方法です。
具体的には、以下の項目が課税対象となります。
● 仮想通貨を売却(譲渡)した際の利益
● 仮想通貨で商品を購入した際の差額
● 仮想通貨を交換した際の差額
● マイニング・ステーキング・レンディングで取得した仮想通貨
注意点として、仮想通貨取引における所得は「売却額-購入額」のような単純計算では算出できません。「総平均法」と「移動平均法」という2つの計算方法があり、どちらかの計算方法で所得を算出します。
総平均法とは、1年間の購入金額を足して平均単価を計算する方法です。すべての売却に対して、同じ購入単価で損益を計算します。移動平均法とは、仮想通貨を購入するたびに取得価額と残高を平均して所得を計算する方法です。
計算方法は「評価方法」とも表記されており、初めて仮想通貨を取得した際にどちらかを選択して税務署に申請する必要があります。申請をしなかった場合は、自動的に総平均法が選択されます。
総平均法と移動平均法の詳細や、より税額が低くなる計算方法を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
仮想通貨の確定申告で経費計上できる可能性が高いもの
令和4年12月、国税庁から『暗号資産に関する税務上の取扱い及び計算書について』の改訂版が発表され、所得区分や必要経費がより明確になりました。
改訂版によると、経費にできる金額は「仮想通貨の売却などに際し直接要した費用の額」とされています。また、仮想通貨取引のための支出と証明できる領収書・証拠があるのかも重要なポイントです。
令和4年12月の公表にて、「直接」が追加されたのもポイントの一つです。これにより、経費として算入できる範囲が狭まったと考えます。
しかし、仮想通貨取引と直接関係のある支出でも、経費計上できないケースは少なくありません。そこで、具体的にどのような費用が経費計上できる可能性が高いのか解説します。
全額経費に計上できる可能性が高いもの
全額経費計上できる可能性の高い費用は、以下の通りです。
● 仮想通貨の譲渡原価
● 仮想通貨取引に関する各種手数料
● マイニング専用マシンの購入費用……など
仮想通貨の譲渡原価とは、売却した仮想通貨の取得時の額面です。以下図のように計算します。
なお、仮想通貨の取引に関する各種手数料は、具体的に以下の項目が対象となり、取得価額と合算して譲渡原価の計算に含めなければなりません。
● 仮想通貨を取得する際に支払う手数料
● 売却時に負担する売却手数料
● 仮想通貨を送金するための送金手数料……など
上述の例のほか、仮想通貨取引に関するコンサルティング費用や、知識を得るための書籍代・セミナー代・セミナーに参加するための交通費なども必要経費として計上できる可能性があります。
他にも、マイニングに必要な専用のマシンやそれらの設備を要するための購入費用も、経費計上の対象です。ですが、マイニング専用のPC設備などは金額が一定以上(10万円以上)であれば減価償却費として複数の年度にわたって経費として計上され、一括で経費計上はできないこととなるので留意が必要です。
その他、仮想通貨の自動取引システムの購入代金なども、経費計上できる可能性があります。
注意点として、解説した費用が必ずしも経費計上できるとは限りません。経費に計上できるか分からない費用については、税理士と相談して決めるのがおすすめです。特に、令和4年のFAQ改訂により、経費計上できる範囲が限定的になったと思われているため、経費計上の可否についてしっかりと相談しておくことが重要です。
金額の一部を経費に計上できる可能性が高いもの
金額の一部を経費計上できるものもあります。具体的には、以下の項目です。
● スマートフォンやパソコン等の購入費用
● 家賃・電気代・通信費
仮想通貨取引のために購入したスマートフォンやパソコン等の費用は、一部経費計上できる可能性があります。
ただし、単価10万円以上の製品に関してはその年で全額計上できません。10万円以上の製品は減価償却の対象になるためです。耐用年数に応じて、少しずつ経費計上して減価償却しなければなりません。
自宅の家賃・電気代・通信費も経費計上できますが、自宅の場合は按分計算が必要です。按分とは、私生活に必要な部分とビジネスに必要な部分を分けて考える計算方法で、確定申告では頻出します。個人事業主として自宅で仮想通貨取引をしている方は、特に把握しておくべき考え方です。
仮想通貨の確定申告において経費計上できるものは所得区分にも関係している
これまで経費計上できる可能性のある項目について解説してきました。しかし、仮想通貨の所得は原則「事業所得」と「雑所得」のどちらかに該当し、経費計上できる項目はどちらにあたるのかによって少し変わります。
そこでここでは、事業所得・雑所得の概要、分類基準について紹介します。どちらに区分されるのか判断するのにお役立てください。
事業所得・雑所得の概要
所得税法第三十七条において、以下のように経費に計上できるものとして以下の内容が明記されていますが、②に該当する費用は仮想通貨取引で発生した取得が含まれる「その他雑所得」の場合、計上できません。
①総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用
②その年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用
③不動産所得・山林所得・雑所得を得るために用意した資産を損失した際の金額
②の経費は、その他雑所得の場合そもそも発生しないためです。事業として仮想通貨取引をしているのであれば、事業に伴う経費として計上できます。
業務所得・雑所得(業務に係る・その他)の分類基準
令和4年に一部改正された『所得税基本通達の制定について』で、明確な基準が示されました。事業所得・雑所得いずれかに分類する基準は、以下の通りです。
※1「その所得の収入金額が僅少と認められる場合・その所得を得る活動に営利性が認められない場合」は個別に判断する
※2 資産の譲渡は譲渡所得・その他雑所得に分類される
ポイントは、事業所得として判断される300万円のラインが「所得」ではなく「収入」である点です。収入とは、自分の手元に入る額面であって利益ではありません。
つまり、売却額が300万円を超えた場合、利益がマイナスであっても事業所得の対象となる可能性があるのです。ただし、事業所得が赤字の場合は、そもそも事業ではないと税務署から否定される可能性もあるので留意が必要です。
事業所得に分類される基準は、以下の表をご覧下さい。
また、仮想通貨取引を帳簿に残しているのかによっても、所得区分が変わります。仮想通貨取引による所得が事業所得であった場合、青色申告が使用できるため、さらに税負担を軽減できます。
青色申告制度とは、不動産所得・事業所得・山林所得の場合にのみ選択できる制度です。最大65万円の控除が利用でき、赤字があった際は3年にわたって繰り越せます。仮想通貨取引を事業として行っており、従業員として家族を雇用している場合は、家族へ支払う給与も経費計上が可能です。
ただし、自己判断で経費を計上すると、税務調査に入られた時に追加徴税される可能性があります。経費を計上する際は、税理士事務所に相談してから確定申告をしましょう。
経費計上できるかは仮想通貨取引の収入額・帳簿の有無によって異なる
上述のとおり、仮想通貨取引で利益を得た場合、額面によっては確定申告が必要です。その際、経費を上手に利用すれば、所得税を節税できます。
仮想通貨取引で得た所得は「事業所得・雑所得」のいずれかに該当し、収入額や帳簿書類の有無によって異なります。事業所得に該当した場合、雑所得よりも経費計上できる項目に幅があり、より効果的な節税が可能です。
しかし、仮想通貨で得た所得・譲渡価額・手数料を考慮した譲渡原価の計算は複雑です。さらに複数の取引所で取引をした場合には、すべての取引を合算して実現損益を算出する必要があります。
仮想通貨の損益計算ツールcryptact(クリプタクト)を活用すれば、取引所のアカウントページよりダウンロードできる取引履歴や送金履歴をアップロードするだけで、取引手数料や送金手数料も加味した損益計算を自動で行うことができ、確定申告に必要な所得計算の簡略化が可能です。
※送金手数料を損益算入する場合は、設定をオンに変更する必要があります。
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