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普段から仮想通貨に触れている方であれば、エアドロップという言葉を見聞きしたり、あるいは実際に参加した経験のある方も多いことでしょう。

エアドロップとは、あらかじめ定められた条件をクリアすると、仮想通貨を無料でもらえるイベントのことで、これまでも多くのエアドロップが国内外で開催されてきました。受け取る側にとってはなにも悪いことのない話のようですが、そもそもどうしてエアドロップが開催されるのか、そしてエアドロップを受け取る際に注意点はないのか、気になるところではないでしょうか。

この記事では、エアドロップが開催される背景と過去事例、エアドロップで仮想通貨を得た場合の税金の取り扱いについて、わかりやすく解説していきます。エアドロップに参加される際は、ぜひ参考にしてみてください。

目次

  1. エアドロップはなぜ開催される?
  2. 仮想通貨エアドロップの事例
  3. エアドロップによって受け取った仮想通貨にかかる税金とは?
  4. 仮想通貨のエアドロップによる損益計算例
  5. まとめ

エアドロップはなぜ開催される?

エアドロップは新たな仮想通貨が誕生する際などに、その運営主体がプロモーションやマーケティング戦略の一環として実施されるケースが多いです。

エアドロップされる仮想通貨には、市場価値が低いものや、まだ流通が始まっていないトークンなどを配布するケースが多くありますが、将来性や先行者利益を見込んで多くの投資家がエアドロップに参加しています。

無料で大勢の人に仮想通貨が配られることから、空からコインが降ってくる様子になぞらえてエアドロップ(AirDrop)と表現されるようになりました。

仮想通貨エアドロップの事例

これまでたくさんの仮想通貨エアドロップがおこなわれてきましたが、ここでは代表的な例を3つご紹介します。

Uniswap(UNI)のエアドロップ

UNIは、2018年にローンチされた分散型取引所「Uniswap」のガバナンストークンです。

2020年9月、2020年9月1日までにUniswapを利用したことのあるユーザーや、Unisocks(SOCKS)トークンのホルダーなどを対象に、一律で400UNIが付与されました。

時価にして1600ドルにも及ぶ高額なエアドロップであり、同時期にアメリカ政府が新型コロナウイルスに対する景気刺激策として給付した1,200ドルよりも上回ったことから、「Uniswap給付金」などと呼ばれ大きな話題になりました。

Symbol(XYM)のエアドロップ

Symbol(XYM)は、シンボル(Symbol)ブロックチェーンで利用されるネイティブトークンで、2021年3月にネム(NEM/XEM)のアップデートとして誕生しました。

2022年2月、XEMの保有者に対し、「オプトイン」という意思表示を行うことを条件にスナップショット時(保有量を確定する時点)とXEM残高と同量のXYMが付与されました。

また、日本国内の取引所では、2021年10月にGMOコインがユーザーへXYMの付与を行ったほか、2022年2月にはCoincheckもXYMの付与を実施するなど、国内取引所による大規模なエアドロップとして話題を呼びました。

APENFT(NFT)のエアドロップ

APENFTはNFTアートの発展を目的に設立されたAPENFT財団が運営するプラットフォームであり、NFTトークンはそのガバナンストークンとしてTRONのブロックチェーンを活用して開発されました。

APENFTのエアドロップは非常に大規模かつ長期に及ぶもので、2021年6月から2023年6月までの25カ月間にわたり、毎月10日時点のTRONブロックチェーン上のBTC、ETH、TUSD、TRXなどの保有者に対してNFTトークンを付与するという内容でした。

これに伴ってTRON(TRX)の取り扱いがある国内取引所でも毎月10日にスナップショットを取得するなどの対応が行われていましたが、APENFT財団が2023年1月以降のエアドロップの停止を発表したため、現在は行われていません。

LayerZeroのエアドロップ

LayerZero(レイヤーゼロ)は、異なるブロックチェーン間でトークンの受け渡しを可能にするクロスチェーン相互運用プラットフォームであり、LayerZero財団によって運営されています。

2024年6月にはコミュニティや投資家に対する大規模なエアドロップが実施され、同プラットフォームのネイティブトークンであるZROが、10億枚配布されました。

配布されたZROの多くはロックされており、2028年までに段階的にアンロックされていく予定です。

Sanctumのエアドロップ

Sanctumとは、ソラナ(SOL)プラットフォーム上で稼働するリキッド・ステーキングのプロジェクトです。 
SOLなどのステーキング可能な仮想通貨を預け入れることで、預け入れた仮想通貨の債権を証明するトークン(Liquid Staking Token : LST)を受け取ることができ、ステーキング報酬を得ながらLSTの取引や運用もできるというサービスを提供しています。

2024年7月には、SanctumのガバナンストークンであるCLOUDのエアドロップ実施が発表されており、コミュニティへの参加や貢献度合いに応じて配布量が決まる方式が採用されるなど、プロジェクトを盛り上げる工夫が行われています。

エアドロップによって受け取った仮想通貨にかかる税金とは?

一般的に、日本国内の居住者が所得を得た場合は所得税や住民税の課税対象となります。

これは仮想通貨取引の場合も同様ですが、エアドロップのように無料で受け取った仮想通貨の場合はどのように考えれば良いのでしょうか。

国税庁が示している指針に沿って、市場価値の有無に着目して見ていきましょう。

参考資料:国税庁「暗号資産に関する税務上の取り扱いについて」

市場価値がない仮想通貨・トークンを受け取った場合

国税庁の指針ではエアドロップに関する直接的な記述はありませんが、似た性質のものとしてハードフォーク(暗号資産の分裂)について言及されています。

そこでは「所得税法上、経済的価値のあるものを取得した場合には、その取得時点における時価を基にして所得金額を計算します。」としたうえで、「分裂(分岐)時点において取引相場が存しておらず、同時点においては価値を有していなかった」仮想通貨については、「取得時点では所得は生じず」としています。

この考え方をエアドロップにも適用すると、貰った時点で価値がない仮想通貨・トークンの場合は所得にはならないものと考えられています。

市場価値がある仮想通貨・トークンを受け取った場合

市場価値がある仮想通貨を取得したケースについては、国税庁の指針ではマイニング・ステーキング・レンディングを例に言及されています。

そこでは「その取得した暗号資産の取得時点の価額(時価)については所得の金額の計算上総収入金額に算入」するものとされています。

「所得税の計算上、経済的価値のあるものを取得した場合は、その取得時点における時価をもとにして所得金額の計算を行う。」こととなっているため、エアドロップで獲得したトークンに価値がついているのであれば、受け取った時点の価値をベースに所得を計上することになります。ゆえに、エアドロップを受け取った際は、その時点での時価が存在するかどうかを確認する必要があるでしょう。

なお、エアドロップで受け取った場合は、あくまでも受け取った時点の時価をベースに収益を計算することとなります。エアドロップで受け取った際は時価がなく、受け取ってから1か月後に価値が大きく上がったのであれば、そのトークンを売却するまでは個人の所得税法の利益が発生しないこととなります。


仮想通貨のエアドロップによる損益計算例

それでは、実際に仮想通貨のエアドロップを受け取った場合の税金計算について、サンプルケースに沿って見てみましょう。 
2024年に以下のエアドロップを受け取った。

・ハードフォークによって新規仮想通貨Aを100枚(取得時に市場価値なし) 
・プロモーションによって既存仮想通貨Bを200枚(取得時の市場単価1,000円)

この場合、仮想通貨Aは市場価値がないため取得時に認識すべき所得はありません。

一方で仮想通貨Bについては、下記の計算で所得を認識する必要があります。

( 取得数量200枚 × 取得時の単価1,000円 ) = 200,000円の所得(雑所得)

上記以外の取引がない場合、2024年の仮想通貨による所得(雑所得)は20万円ということになります。

続いて、これらの仮想通貨を売却する際の計算についても見てみましょう。仮想通貨売買の損益は、基本的に下記の計算式で算出します。

譲渡価格 - 取得価格 = 損益

この基本は、エアドロップで得た仮想通貨であっても同じです。 
2025年に以下の売却取引を行った。

・仮想通貨Aを100枚売却(売却時の市場単価500円) 
・仮想通貨Bを200枚売却(売却時の市場単価1,500円)

この場合、仮想通貨Aは市場価値がない状態で取得しているため取得単価は0円となります。

一方で仮想通貨Bについては単価1,000円の時に取得して、取得時点で課税対象となっています。このような場合は、取得時点の時価が取得単価と見なされます。

よって、損益計算は下記の通りとなります。

【仮想通貨Aについて】 
譲渡価格( 数量100枚 × 単価500円 )- 取得価格0円 
= 50,000円の所得(雑所得)

【仮想通貨Bについて】 
譲渡価格( 数量200枚 × 単価1,500円)- 取得価格(数量200枚 × 単価1,000円) 
= 100,000円の所得(雑所得)

従って、上記以外の取引がない場合、2025年の仮想通貨による所得(雑所得)は15万円ということになります。

なお、サラリーマンが副業として仮想通貨取引を行っている場合は、仮想通貨含む副業収入合計が年間20万円を超えると確定申告を行う必要があります。

まとめ

エアドロップは無料で仮想通貨を貰えるため大変魅力的なイベントですが、取得した仮想通貨についてはしっかり時価計算を行い、一定以上の所得を得た場合は確定申告を行う必要があります。

また貰った時点では価値がなかったとしても、その後に売却したり他の仮想通貨と交換をした時点で所得が生じることになるため、仮想通貨取引を行う際には常に正確な損益計算が欠かせません。

仮想通貨の取引で確定申告が必要となる条件や対象となる場合のやり方については、下記の関連記事にて詳しく解説しています。気になる方はチェックしてみましょう。

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