仮想通貨取引は長い金融の歴史のなかでは比較的新しい金融資産ですが、本人が亡くなってしまった場合は、仮想通貨もその他の金融資産と同様に相続財産に該当するため、遺族がその資産を受け継ぐことになります。
そしてここ最近、仮想通貨の相続によって110%も課税されるケースがあることが報じられ、大きな話題となりました。一体なぜそのような状況が発生し得るのでしょうか。
この記事では、仮想通貨の相続に関する基礎知識や相続の手順、税額の計算方法などについて分かりやすく解説していきます。
また、遺す(のこす)側の場合、ご家族が困らないようにどのような備えをしておけばいいのかについても解説します。
仮想通貨に相続税はかかる?
仮想通貨を相続した場合、相続税の対象となります。
相続税とは、亡くなった方(被相続人)から財産を受け継いだ人(相続人)に対して課せられる税金のことです。
不動産や株式、預貯金や現金などのほかにも、金銭に見積もることができる全ての財産が課税対象であるため、仮想通貨もその中に含まれているのです。
また、日本国内だけでなく海外に所在する財産も対象であるため、海外取引所に預けている仮想通貨であっても例外ではありません。
仮想通貨を相続する時の手順
一般的に、相続を行うにはまず相続財産の調査を行い、有無や内容、評価額などを確認しなければなりません。
仮想通貨については、亡くなった方(被相続人)ご自身が管理するウォレットがパソコンやスマートフォンなどのローカル環境にある場合と、仮想通貨取引所などの第三者に預けている場合が考えられます。
後者の場合は、事業者に対して相続手続きを行い、残高確認や払い戻しを受ける必要があります。
具体的な手順について見ていきましょう。
①被相続人が利用していた取引所を特定する
まずは、亡くなった方(被相続人)が利用していた仮想通貨取引所などのサービスを特定する必要があります。
エンディングノートや会計ツールなどで明確に記録が残されている場合はすぐに特定できます。
しかしそうでない場合は、可能な範囲で調べて目星を付けるしかありません。
取引所からのメール履歴がないか、ブラウザに取引所のブックマークが登録されていないか、あるいはスマホに取引所のアプリがないかといった点が手掛かりとなります。
また、亡くなった方(被相続人)が確定申告を行っている場合は、年間取引報告書や取引履歴などの資料が残っていないかを確認することも有効でしょう。
②取引所に対して被相続人が亡くなったことを連絡する
亡くなった方(被相続人)が利用していた取引所を特定できたら、それらの取引所に対して本人が亡くなったことを連絡しましょう。
連絡の際に必要な事項は取引所によって異なります。
国内の仮想通貨取引所であれば、多くの場合はヘルプやFAQの中で相続手続きに関する説明が掲載されていますので、連絡の前に内容を確認しておくと安心です。
なお海外の仮想通貨取引所の場合は国や取引所によって手続き方法が異なります。
日本国内の取引所よりも時間がかかることも想定されますので、早めに問い合わせフォーム等から相談すると良いでしょう。
③取引所の案内に従い相続手続を行う
取引所に連絡を行うと、相続手続きの流れや必要な書類について案内してもらえます。
一般的には、取引所が利用者本人の死亡や相続人との法的関係性を確認する書類として、被相続人・相続人の戸籍謄本などが必要となるほか、相続人の印鑑証明書や本人確認資料が必要な場合もあります。
なお、こうした公的書類は他の仮想通貨取引所や、銀行、証券会社等でも必要となります。
役所から書類を取得する際は、必要な通数を考えて多めに取得しておくと良いでしょう。
④取引所から相続人に対して仮想通貨が払い戻される
必要な手続きが完了すると、取引所から相続人に対して仮想通貨の払い戻しが行われます。
国内仮想通貨取引所の場合、相続手続きによる払い戻しには主に次の方法があります。
● 仮想通貨を日本円に換金して代表相続人の銀行口座に振り込まれる
● 仮想通貨がそのまま代表相続人の口座に移管される(口座開設が必要)
上記のどちらの方式になるかは取引所によって異なりますので、手続きの際に確認しておくと良いでしょう。
亡くなった方(被相続人)の口座は払い戻しと同時に解約され、その取引所における相続手続きが完了します。
その後は、相続人が複数人いる場合は代表相続人が一時的に仮想通貨(または日本円)を預かり、遺産分割の内容に応じて分配していくことになります。
仮想通貨における相続税の計算方法
相続税の仕組みは少々複雑です。
相続人が取得した財産に直接税率を掛けて税額を計算するというものではないのです。
ここでは相続税の基礎について簡単に説明したのち、相続における仮想通貨の評価についてご紹介します。
相続税の基礎知識
相続税はどのように計算をするかというと、亡くなった方(被相続人)の遺産額から基礎控除額を差し引いた額(課税遺産総額)を、民法で定められた相続分(法定相続分)によって按分した額に税率を掛けて算出します。
課税遺産総額 = 遺産額 - 基礎控除額 |
基礎控除額は法定相続人の人数に応じて次のように決まります。
基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数) |
これらの計算によって課税遺産総額がプラスになった場合に、相続税が発生することになるのです。
また、法定相続分については相続人の構成によって異なり、基本的に配偶者がいる場合は必ず相続人に該当し、配偶者以外の親族は子供、父母祖父母、兄弟姉妹の順序で相続人となります。
法定相続分
そして、次の表が相続税の税率です。
対象の金額が大きいほど税率が高くなる累進課税の仕組みが採用されているため、15%以上の場合は控除額が設定されています。
相続税の早見表
以上の前提を踏まえて、遺産額が1億円で相続人が3名(配偶者1名と子ども2名)の場合における相続税を見てみましょう。
課税遺産額
遺産額1億円 - 基礎控除額4,800万円 = 5,200万円 |
法定相続分
配偶者 5,200万円 × 1/2 = 2,600万円 子供A 5,200万円 × 1/4 = 1,300万円 子供B 5,200万円 × 1/4 = 1,300万円 |
相続税額
(2,600万円 × 15% - 50万円) + (1,300万円 × 10%) + (1,300万円 × 10%) = 600万円が相続税の総額 |
このように、相続人それぞれの法定相続分に応じた税率で税額を算出し、それらを合算することで、相続人が負担すべき相続税の総額が決まります。
なお、これはあくまでも相続税の総額を決めるための計算ですので、実際に各相続人の相続や税金の割合ついては、相続人が話し合って決めることになります。
仮想通貨の相続税評価額
相続税計算の元となる遺産額は、亡くなった方(被相続人)が保有していた様々な財産の価値を合算して求められます。
日本円の現金や預貯金の場合はそのままの金額で加算できますが、仮想通貨や有価証券、不動産のような資産については、評価額を算出しなければなりません。
仮想通貨の場合、その銘柄に活発な市場が存在する(仮想通貨取引所に上場されている)か否かによって評価方法が異なります。
活発な市場が存在する場合は、相続発生時(被相続人が亡くなった日)におけるその仮想通貨の取引価格(市場価格)を用いて評価額を算出します。
● 相続発生時における取引所の残高証明書の金額を採用
● 相続発生時における取引所・販売所等の取引価格を採用 など
一方、活発な市場が存在しない銘柄の場合は、その仮想通貨の内容や性質などを勘案し、個別に評価をする必要があります。
必要に応じて税務署の相談窓口や税理士などに相談しつつ、慎重に判断するようにしましょう。
仮想通貨の相続で110%の税率になる場合
仮想通貨の相続に関して、場合によっては税率が100%を超える可能性があることがSNS等で話題になりました。
税率が100%を超えるということは、受け取る額よりも支払う税金の方が多いという、何とも理不尽な状況と言えます。
どうしてこのような事がおこるのでしょうか。
それは相続税が仮想通貨の含み益に対しても課税されるためです。
仮に、1,000万円で購入した仮想通貨の価格が100倍に高騰して10億円になったとします。
この状態で保有者が亡くなった場合、仮想通貨の評価額は10億円となり、相続税の最大税率である55%が適用されることになります。
一方で仮想通貨の取得価格自体は1,000万円であるため、相続人がこの仮想通貨を日本円に換金する際には9億9千万円の所得が生じたものと見なされ、所得税の最大税率である45%が課税されることになります。
ここに住民税の約10%を加えると、なんとこの相続に関連して約110%もの税金が課せられることになるのです。
なお、土地や有価証券などの相続であれば、取得費加算の特例という税法が適用可能となっているために、被相続人(亡くなられた方)の取得価額をそのまま引き継ぐ計算にはなりませんが、仮想通貨は取得費加算の特例が適用できないがゆえに、上記のように税率が100%を超える可能性があることとなっております。
相続放棄をすることで課税を免れることはできますが、仮想通貨だけでなく故人の遺産全てを放棄しなければならないため、辛い選択になることでしょう。
上記は極端な例ではありますが、含み益を大きく抱えた状態の仮想通貨を相続する場合は、相続税に加えて売却時の所得税・住民税についても考慮しておく必要があるのです。
仮想通貨を相続する(のこす側)際の注意点
それでは、自身が遺す側(被相続人)として仮想通貨の相続対策を考える際にはどのような注意点があるのでしょうか。
ここでは次の3点についてご紹介します。
仮想通貨の取引情報を整理しておく
相続に際しては、亡くなった方(被相続人)の遺産を調査するプロセスで非常に多くの労力を要します。
もし相続人が遺産の一部を見つけられなかった場合、そのまま永遠に失われてしまう可能性がありますし、後日判明した場合は相続手続きや税金の申告をやり直さなければいけなくなるかもしれません。
ただでさえ悲しく辛い相続手続きですので、そのような事がないように生前のうちからエンディングノートなどに財産を整理・記録して、いざというときに遺された家族がわかるようにしておくことが大切です。
特に仮想通貨の存在は本人以外にはわかりづらい可能性が高いため、しっかりとわかるように記録しておきたいところです。
そのような場合に便利なのが、仮想通貨専門の損益計算ツール「クリプタクト」を活用する方法です。
「クリプタクト」は、毎年の確定申告に向けた仮想通貨の損益計算をサポートしてくれる会計ツールです。
この際、各取引履歴がどの仮想通貨取引所を利用したものであるかや、こまめに履歴をアップロードしていれば、各保有銘柄の最新の残高、日本円換算での評価額なども表示されるため、遺された家族のためが仮想通貨取引を行ったことがなくても情報をたどりやすい環境にすることが可能です。
「クリプタクト」で、毎年必要な税金計算を大幅に効率化しながら、いざという時の記録も整理してみてはいかがでしょうか。
巨額の含み益がある状態はできるだけ避ける
先程ご紹介したように、巨額の仮想通貨を相続した場合、相続税と所得税などの合計が100%を超える場合があり、相続放棄を余儀なくされる可能性があります。
これは現在の法制度上、相続した仮想通貨の取得原価が引き継がれ、売却時の差益に所得税等が課せられるためです。
つまり、相続の観点では巨額の含み益がある状態が危険と考えられますので、そのような状態をできる限り避けることで、リスクを軽減することが可能です。
例えば、他の銘柄で損失が発生した年は含み益がある銘柄を売却することで利益と損失を相殺させ、課税されることなく含み益を解消していく方法などが考えられます。
「クリプタクト」を活用すれば、リアルタイムで実現損益や含み損益を正確に把握し損益計算ができるため、このように税金の着地点を想定しながら取引をコントロールすることも可能です。
仮想通貨が巨額の場合は法人設立という手段もある
相続税と所得税の合計が100%を超えてしまう可能性があるのは、仮想通貨の所得に対する税金が高い(所得税と住民税の合計が最大約55%)ことが原因の一つとしてあげられます。
一方で、これが株式であれば分離課税として約20%の税金で済み、相続税とあわせても100%を超える心配はありません。
そこで、巨額な仮想通貨投資を行っている場合は、資産管理会社を設立して仮想通貨などの資産を持たせ、遺族にはその法人を相続させるという方法も考えられるでしょう。
「クリプタクト」では法人評価損益計算など、法人会計に必要な機能もサポートされており、個人から法人、小額投資家向けから億り人向けのプランなど、幅広いユーザーニーズに応じたプランが用意されています。
将来的に法人設立を検討している方も無料からお試しいただけますので、ぜひこの機会に「クリプタクト」の利用をご検討ください。
まとめ
この記事では、仮想通貨の相続についての基礎知識や相続の手順、計算方法や注意点などについて解説してきました。
また、ご自身に万が一のことがあった際に備えて、遺す側(被相続人)として相続対策を考える際の注意点についてもご紹介しました。
仮想通貨取引はボラティリティが高く、大きな利益を得られる可能性がある一方で、高い税率によって巨額の納税が発生しやすい傾向にあります。
仮想通貨の税金について正しい知識を身に付けておくことで、大切な資産を守り、育てていくことに繋がることでしょう。
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