近年、仮想通貨に関連するキーワードとして「DeFi(ディファイ)」が注目を集めています。
社会現象ともなったビットコインブームを皮切りに、日本や世界では仮想通貨に対する規制や法整備が進み、今では仮想通貨は金融商品のひとつとして社会に浸透しつつあります。
しかし、DeFiはそうした既存の仕組みとは一線を画す、新しい特徴をもつ金融サービスの形として独自の進化を遂げており、今後も発展が続く分野とされています。
この記事では、DeFiの持つ特徴とそのメリット・リスクについて解説するとともに、代表的なサービスや始め方、収益を得る方法についてご紹介していきます。
DeFiの理解を深める一助として、ぜひご活用ください。
目次
DeFiの特徴
DeFi (Decentralized Finance)とは、ブロックチェーン技術を活用することで実現された新しい金融サービスの形で、直訳すると分散型金融という意味になる言葉です。
対となる概念としてCeFi(Centralized Finance)という言葉もあり、こちらは中央集権型金融を意味します。銀行や証券会社、仮想通貨取引所等はCeFiに属しますが、DeFiにはこれら既存の金融機関とは大きく異なる特徴があります。一つずつ見ていきましょう。
中央管理者が存在しない
既存のCeFi(中央集権型金融)では、サービスの提供主体である銀行や証券会社、取引所などが中央管理者として存在し、利用者は中央管理者を通じて売買などを行う必要がありました。
しかしDeFiでは、ブロックチェーン技術のひとつである「スマートコントラクト (契約の自動化)」の応用によって、利用者同士が直接繋がって自動的に取引が執行されます。
すなわち、公開されているDeFiのプログラムやサービスを使って取引を行うのはあくまでも利用者本人同士であり、両者の間で媒介や取次を行ったり、利用者に代わって資産を管理したりする中央管理者が存在しないのです。
匿名性が高い
DeFiには本人確認等を行う中央管理者が存在しません。そのため、既存の取引所とは異なりKYC(顧客の身分確認)なしで誰でも利用することができる、極めて匿名性の高い仕組みとなっています。
マネーロンダリング対策やテロ資金供与対策の観点では課題はあるものの、国籍や身分などを問わず、インターネットを利用している人であれば、事実上誰であっても取引できるという環境は、既存の金融サービスと非常に異なる点と言えるでしょう。
構成可能性 (コンポーザビリティ)
プロダクトの構成可能性 (コンポーザビリティ) が高いという点も、DeFiが持つ大きな特徴の一つです。構成可能性とは、あるプロダクトがひとつの部品 (コンポーネント) として機能し、それ自体が独立したサービスであると同時に、他のサービスの部品としても転用できるという概念です。これはサービスの知的財産権を独占せずにオープンソースとして公開することで、より多くの人に活用されることとなり、相乗効果的にサービス価値が向上していくという発想に基づいています。
DeFiのメリット
DeFiにはCeFiと異なる新しい特徴が多くありますが、ここからは利用者の目線から見た具体的なメリットについて解説していきます。
手数料が低い
CeFiの場合は金融機関が取引の仲介・実行を行うため、手数料が発生します。
しかしDeFiであれば当事者間が直接取引を行うため、金融機関への手数料は必要ありませんし、事務処理の時間もかかりません。このため、DeFiは金銭的・時間的コストを大幅に削減できるというメリットがあります。
地理的制約がない
既存のCeFiでは中央管理者が法令や規制の対象となるほか、中央銀行や各種公的機関の仕組みにも依存することになる為、提供するサービスを国や地域ごとに用意する必要があります。しかしDeFiであればこのような制約を受けないため、世界中のどこからでも共通のDeFiサービスにアクセスすることが可能です。
DeFiのリスク
DeFiはその特徴から多くのメリットがありますが、同様にリスクも存在します。
その危険性についても正しく把握したうえで利用できるよう、DeFiのリスクについて確認していきましょう。
資産喪失は自己責任
DeFiは中央管理者が存在せず、取引はあくまでも利用者本人の責任によって行われます。
また匿名性が非常に高いことから、多くの場合は取引の相手方が誰であるかも特定できません。つまり資金の紛失等の問題が発生した場合、調査や解決をしてくれる組織が存在しないことを意味します。
また中央集権的な金融機関であれば、仮に利用者がキャッシュカードの暗証番号を忘れてしまったとしても銀行が本人確認を行って再発行を行ってくれます。しかしDeFiは全てが利用者の自己責任となります。そしてほとんどの場合、一度手元から離れてしまった仮想通貨を取り戻す術はありません。
システムに脆弱性がある場合がある
既存の金融機関の場合は、利用者はその企業や国の認可体制などを信用してお金を預けることになりますが、DeFiの場合は信用する相手としての中央管理者が存在しません。
そのため、スマートコントラクトの中身がオープンソースとして万人によって検証可能であることがDeFiの信頼の元となっているのです。
しかし人間が作ったものである以上、バグや不備などの脆弱性が生じる可能性はゼロとは言い切れません。こうした脆弱性を突かれる形で資金を失った場合であっても、自己責任となってしまうことは念頭に置いておく必要があるでしょう。
主要なDeFiサービス
DeFiの分野には様々な種類のサービスが存在し、世界中で展開し続けています。
中でも代表的なサービスについて見ていきましょう。
DEX (分散型取引所)
日本語では分散型取引所と訳されるDEX (Decentralized Exchange) は、DeFiにおける最も代表的なサービスのひとつです。中央管理者がいない取引所で、異なる種類のトークンを交換する「スワップ」や、トークンを運用して報酬を得る「イールドファーミング」などの機能があります。
● Uniswap
Uniswap (ユニスワップ) は、2018年にローンチした最初期のDeFiとして有名な老舗DEXです。当初はイーサリアムのブロックチェーン上のみで動作していましたが、スケーラビリティの問題に対応するため、近年はPolygonなどのレイヤー2と呼ばれるブロックチェーンにも対応しています。
● SushiSwap
SushiSwap (スシスワップ) はUniswapのオープンソースコードを元にして、2020年にローンチされたDEXです。イーサリアムを中心に多くのブロックチェーンに対応していることが特徴です。サービスの一部は日本語表示にも対応しています。
レンディングプラットフォーム
DeFiには、ユーザー同士でトークンを貸し借りすることができるサービスも存在します。
貸す側は保有するトークンを貸し出すことで金利のように収入を得ることができ、借りる側は調達したトークンを運用したり、ガバナンストークンであればDAO (自立分散型組織) の意思決定に参加することなどが可能です。
● Compound
2018年にローンチされたCompound (コンパウンド) は、DeFiプロジェクトの中でも歴史の長い老舗のレンディングプラットフォームです。DAO (自律分散型組織) の形態をもつコミュニティによって運営されており、ガバナンストークンであるCOMPの所有者が運営方針の意思決定に投票で参加することができます。
COMPはCompoundで貸し借りを行うことで獲得できるほか、DEX等でCOMP自体を売買することも可能です。
● Aave
Aave (アーベ) はトークンの貸し借りの他にも、独自のサービスを多数展開していることで評判のレンディングプラットフォームです。中でも、借入と返済を同時に行う代わりに担保が不要なフラッシュローン (Flash Loan) や、ユーザー間で与信枠を貸与できる信用委任 (Credit Delegation) といったサービスが特徴的です。ガバナンストークンとしてAAVEを発行しており、投票を通じて運営に参加することも可能です。
DeFiのやり方
さて、DeFiの特徴や主なサービスがわかったところで、実際にDeFiの取引を始めるにはどうしたら良いのかが気になるところではないでしょうか。ここからはDeFiのやり方について簡単に解説していきます。
DeFiで収益を得る方法
DeFiで収益を得るには様々な方法がありますが、特に代表的なものは次の3つです。
● イールドファーミング (流動性マイニング) で報酬を得る
DEXなどに対して異なる2種類のトークンを預け入れることで、見返りとして報酬を得ることができます。DEXには異なるトークンをスワップ (交換) するサービスがありますが、これは流動性プールと呼ばれるところにトークンがプールされていることで実現しています。すなわち、流動性プールにトークンを預けてスワップ (交換) 可能な状態にすることを流動性の提供といい、提供した人はスワップ利用者が支払う手数料の一部を報酬として受け取ることができるのです。
● レンディングで金利収入を得る
保有しているトークンを他のユーザーに貸すことで金利収入を得ることができます。既存の金融機関の場合は、銀行員などが借り手の信用を審査して融資しますが、DeFiの場合はこのような対応ができません。そのため、借り手に融資額以上の担保を条件付ける仕組みとすることで信用の問題をクリアしています。
● トレードで売買益を得る
最後に最もわかりやすい方法として、トレードによる売買益があります。DEXではトークンを別の種類のトークンとスワップ(交換)することができますが、交換レートは需要と供給のバランスによって刻々と変化します。そのため、通常の仮想通貨のトレードと同様に、安く買って高く売ることで利益を狙うことも可能です。
いずれも大きな利益を生む可能性があることで人気の方法となっていますが、トークン自体の価格が急落すると損失となる場合もあるなど、相応のリスクが存在することにも留意しておく必要があるでしょう。
なお、DeFiで得た所得も課税対象です。ゆえに会社員の方なら20万円以上の所得が発生したら確定申告を行う必要があります。税理士が解説するDeFiの損益計算方法のやり方はこちら をご覧ください。
DeFiを始めるのに必要なもの
DeFiはインターネット環境さえあれば誰でも始めることができますが、最初にいくつかの準備が必要です。代表的なものについて見ていきましょう。
● 仮想通貨が必要
当然のことながら、DeFiの取引を行うにはイーサリアムなどの仮想通貨が必要です。もし持っていない場合は、国内仮想通貨取引所に登録して購入しましょう。
● DeFiのサービスに対応したウォレットが必要
中央集権的な金融機関は自社の口座内で利用者の資産を管理するのが一般的ですが、DeFiは利用者が管理するウォレットと連携することでサービスを提供します。
MetaMaskなどのウォレットアプリをインストールし、購入した仮想通貨をウォレットに入れておきましょう。
上記の二つがあれば、あとは各DeFiのサイト上からウォレットに接続することでサービスを利用することができるようになります。対応しているトークン、ウォレット、ネットワーク設定などはDeFiごとに異なりますので、サービスの説明をよく確認するようにしましょう。
まとめ
DeFiは分散型金融という言葉が示すとおり、中央管理者が存在せず利用者自身が管理者として自己責任を負う必要がありますが、その一方で規制の少ないオープンな環境の中で様々な新しい可能性が生まれ続けている分野でもあります。
ご興味のある方は、この機会にぜひDeFiの世界に触れてみてはいかがでしょうか。