皆さんはDeFi(ディファイ)という言葉を目にしたことがありますでしょうか?
DeFiとは「Decentralized Finance」のことを指しており、仮想通貨の投資手法として近年話題になっています。DeFiにおいては、「管理者がいない」「取引の手数料が安い」「24時間365日いつでも取引ができる」「通常の銀行預金より高い利率で運用できる」などの多くのメリットがあり、利用者が増えています。
一方、DeFiにおいては、「税金の計算が困難」という課題を抱えています。
この記事では、DeFiにおいてよく行われる取引手法である「スワップ」「レンディング・ステーキング」「イールドファーミング」についての損益計算はどのようになるかについて、暗号資産やNFTを専門とする税理士が解説します。
仮想通貨のスワップ
スワップとは、仮想通貨同士を交換する行為を指しています。
国税庁は、仮想通貨同士の交換でも損益が発生する、と明記しています。そのため、スワップを行うだけでも課税対象の利益が生じ、税金が発生することがあります。
これは、税金の計算上においてスワップという行為は「仮想通貨を時価で売却し、売却した価額で他の仮想通貨を購入した」とみなされるためです。
例えばですが、10年前に1ビットコイン(BTC)を50万円で購入し、そのBTCが時価が上がったタイミングで20イーサリアム(ETH)(1ETH=30万円)とスワップした場合は、
600万円(20ETH × 30万円)- 50万円(1BTCの購入価額)=550万円の利益
として550万円の利益に対して税金がかかることとなります。
ステーキング・レンディング
保有している仮想通貨をロックすることでブロックチェーンのネットワークに貢献し、報酬を得る行為をステーキングと言います。また、保有している仮想通貨を貸し付けることにより利息を得る行為をレンディングと言います。
このステーキングとレンディングはともに課税対象となります。
具体的にはステーキングで得られる報酬の時価相当額を利益として計上します。また、レンディングにおいては、利息相当額を利益として認識します。
そのため、ステーキングの報酬もしくはレンディングの利息相当の報酬を得た場合、獲得した日時、獲得した枚数、獲得した時点での当該仮想通貨の時価を把握し、利益として計算しなければなりません。
イールドファーミング
イールドファーミングとは、仮想通貨をロックし、流動性を提供することで報酬を得る行為を指します。ステーキングと似ている行為ではありますが、イールドファーミングでは2種類の仮想通貨をロックするという点で異なっています(ステーキングは1種類の仮想通貨をロックする)。
このイールドファーミングですが、ステーキングと同様に受け取った報酬相当額を利益として認識する必要があります。
ただし、イールドファーミングの場合、預けた2種類の暗号資産のそれぞれの時価が増減するために、返済される暗号資産の枚数が異なることがあります。これによって生じた損失をインパーマネントロスと言います。
例えばですが、1ETHと2,000USDTをイールドファーミングとして預けたものの、引き出した時には、0.8ETHと2,200USDTが戻ってくることがあります。この場合、0.2ETHは損失、200USDTは利益として計算されます。
そのため、どのコインを何枚ずつ預けたのか、その結果そのコインが何枚ずつ返ってきたのかを確認し、増えたコイン、減ったコインを把握して細かに計算していくこととなります。
DeFiの損益計算は難しい
以上が主要なDeFiでの取引と税金となります。
DeFiにおいては、損益計算をまずは実施し、正しい損益の金額を算定、その上で確定申告に進める必要がありますが、実際には以下の理由から、DeFiの損益計算は困難になりやすい面があります。
【DeFiの損益計算が難しい理由】 ✔ 中央管理者がいないため、自分で取引履歴を出力したり、メモ等で対応する必要がある ✔ ウォレットアドレスと個人情報が紐づいていないため、送金の用途が分かりずらい ✔ DeFiには多くの複雑な取引が存在しており、ブロックチェーンエクスプローラーから判断するのが困難になりやすい |
では、実際にDeFi取引を実施している場合の主要な計算方法について、下記で解説します。
計算方法①:自分で計算する
まず1つ目は自分で計算するやり方となります。
損益計算を実施するためには、以下の資料が必要となります。
(この資料は、計算方法②でも計算方法③でも必要となります)
【損益計算のための必要資料一覧】 ・DeFiの年間のすべての取引履歴 ・DeFi以外の仮想通貨取引所の取引履歴 ・年始における仮想通貨の保有枚数と取得価額 ・年度末における仮想通貨ごとの保有枚数 ・DeFiの取引ごとの内容(日時、仮想通貨の種類・枚数、取引の種類、送金目的、送金先など) |
DeFiの取引履歴に関しては、どこかのサイトからCSV形式でダウンロードする、もしくは自身のメモをベースに取引履歴を集計する必要があります。
そして、その取引履歴をその内容に従ってエクセルなどの表計算ソフトを活用して利益を計算する必要があります。
また、DeFi以外の通常の仮想通貨取引所での取引も、DeFiの取引と同様に集計し、計算の対象に含める必要があります。
さらに、取引時点の仮想通貨の時価についても、Coinmarketcap等の仮想通貨の時価を確認できるサイトを利用する必要があります。
計算方法②:損益計算ツールを活用する
続いて、損益計算ツールを活用しての損益計算となります。
クリプタクトなどの損益計算ツールであれば、以下の点で効率的に損益計算を実行することができます。
✔ 仮想通貨取引所によって異なっている取引履歴フォーマットをそのまま取り込むことができる ✔ DeFiの一部のチェーンの取引については、ウォレットアドレスを入力するだけでウォレットアドレスに紐づく取引を一覧で抽出することができる ✔ 数多くの仮想通貨が登録されており、仮想通貨の時価を自動で抽出することができる |
以上の利点から、計算方法①の自分で計算する場合に比べ、効率的に計算をすることができます。
ですが、仮に損益計算ツールを活用したとしてもDeFiの取引を完全に自動で計算することはできませんので、ご留意ください。
DeFiの取引はとても複雑です。完全に自動でDeFiの全ての取引を判別することはできませんので、ご承知おきください。
そのため、自動で判別できなかった取引については一つ一つ確認していく必要がありますので、DeFiの取引内容の記憶、メモをベースに取引の種類を分別していく必要があります。
計算方法③:税理士等専門家に相談する
最後は、税理士などの仮想通貨の損益計算の専門家を利用する方法です。
DeFiにおいては、次々と新しい取引手法が出来ており、税法が追いついていない部分があります。
税理士などの専門家に相談することで、そういった複雑な分野に対する税務のケアも対応ができます。さらに、仮想通貨の税務に詳しい税理士であれば、数多くの仮想通貨の損益計算の実績を持っているため、損益計算ノウハウも多く有しています。
ですが、税理士等の専門家を利用するといっても、DeFiの取引の複雑性から、取引の送金目的について第三者は分かりかねる部分があります。そのため、DeFi取引がある仮想通貨の損益計算においては、完全には専門家に丸投げの計算はできないという点に留意が必要です。