仮想通貨のデルニューについて、税金面での注意点も解説.jpg

価格変動のリスクをできる限り排除しつつ利益を追求する方法として注目されているのが、現物取引と先物取引を組み合わせた「デルタニュートラル戦略(通称デルニュー)」です。

しかし、この戦略は取引が複雑になることから、税金面で多くの注意点が存在します。

この記事では、デルタニュートラル戦略とはどのようなものなのかを改めて説明したのち、実際に行った場合は税金面でどのような注意点があるのかについて税理士監修のもとわかりやすく解説していきます。

目次

  1. デルタニュートラル戦略とは? 
    1.1. ポートフォリオのリスクをゼロに近づける 
    1.2. FRのインカムゲインで稼ぐ
  2. デルタニュートラル戦略の税金に関わる注意点 
    2.1. 取引の頻繁さ 
    2.2. 損益認識のタイミングの難しさ 
    2.3. 異なる金融商品間の損益計算
  3. まとめ

デルタニュートラル戦略とは?

まず始めに、デルタニュートラル戦略の概要について見ていきましょう。

ポートフォリオのリスクをゼロに近づける

「デルタニュートラル戦略」とは、ポートフォリオにおけるデルタ値をゼロに保つことで、資産価値が市場価格の変動による影響を受けないようにする(ニュートラルにする)戦略のことです。

デルタ値とは、原資産の価格変動に対して資産価値の影響度合いを示すリスク指標のことで、影響の強さに応じて0〜1の数値で表されます。この値が1の場合、原資産の価格が上昇(または下降)したときにオプションの価値も同様に上昇(または下降)します。デルタ値が0の場合、原資産の価格変動はオプションの価値に影響しません。

例えば、ビットコインだけを保有するポートフォリオは、ビットコイン価格の変動に直接影響されます(デルタ値は1)。しかし、「デルタニュートラル戦略」を用いる場合、現物のビットコインと同等の価値を持つショート(売り)ポジションを取ることで、価格の変動による影響を相殺し、デルタ値をゼロに保ちます。 

この戦略により、価格変動のリスクを可能な限り排除する一方で、資金調達率(以下、FR)などの手数料収入を得ることが可能となります。この収入は、価格の変動から独立したインカムゲインとしてポートフォリオに寄与します。                        

FRのインカムゲインで稼ぐ

FRとは無期限先物取引においてポジションを保有している際に発生する手数料のことで、スワップ金利・スワップポイントなどとも呼ばれています。

FRがプラスの場合、ロングポジション(買い)の投資家が手数料を払い、ショートポジション(売り)の投資家が手数料を受け取ります。一方、FRがマイナスの場合はその逆です。

 

 ロング(買い)ポジションショート(売り)ポジション
FR(資金調達率)がプラス手数料を支払う手数料を受け取る
FR(資金調達率)がマイナス手数料を受け取る手数料を支払う

 


つまり、FRがプラスの状態であれば、「デルタニュートラル戦略」で価格変動リスクをヘッジしながら、ショート(売り)ポジションから手数料収入を得ることができるのです。

なお、仮想通貨の無期限先物取引が可能な海外取引所のひとつである、BybitにおけるFRは以下の通りになっています。

 

通貨ペアFR(資金調達率)
BTC/USDT0.0028%
ETH/USDT0.0093%
XRP/USDT0.0098%
ADA/USDT0.0100%
DOGE/USDT-0.0007%


参照:Bybit(2024年5月9日午前8時におけるFR)

FRの手数料は8時間置きに決済されます。

従って、例えば上記のADA/USDTペアで10,000ADAのショート(売り)ポジションを保有した場合は、8時間置きに1ADA(10,000 × 0.01%)を獲得することができます。

仮にFRが変動しなかった場合、1日に3ADA、1ヵ月で90ADA、1年では1,000ADA以上を、仮想通貨の価格変動リスクに晒されることなく安定的に稼げるという計算になるわけです。

もちろん、FRは市場動向に応じて常に変動しており、下落相場ではマイナスになる場合があります。

また、場合によっては現物価格と先物取引価格に大きな乖離が生じる場合もありますので、ポジションの調整が間に合わなければデルタニュートラルを維持できなくなる可能性もあるでしょう。

このように、デルタニュートラル戦略は全くのノーリスクというわけではありませんが、それでも価格変動リスクを     抑えて安定的な利益を得る投資戦略として注目されているのです。

なお、無期限先物取引が可能なBybitについてはこちらの記事でも詳しくご紹介しています。興味のある方は併せてご覧ください。

デルタニュートラル戦略の税金に関わる注意点

デルタニュートラル戦略を実践する場合は、税金面で考慮しなければならない注意点がいくつか存在します。

一般的にサラリーマンが副業として仮想通貨投資を行う場合、年間20万円以上の利益を得ると確定申告が必要になります。

自分で仮想通貨投資の損益を算出しながら税金計算を行うことになりますので、税金面での注意点を把握しておくことが非常に重要です。

ここでは主な注意点を3つご紹介します。順に見ていきましょう。

取引の頻繁さ

一般的に、デルタニュートラル戦略を実践する場合は、高い頻度でポジションを調整する取引が必要になるため、税金計算が煩雑になる傾向があります。

仮想通貨の現物と先物のショートポジションを同量保有することで価格変動リスクを大幅に相殺することはできますが、これは完全に     デルタニュートラルな状態とは限りません。

現物価格と先物価格の間には価格差が存在するため、完全に1:1というわけではないためです。

そのため、デルタニュートラルな状態を維持するためには市場状況に応じて定期的なリバランス取引が不可欠となります。現物保有残高と先物取引のショート(売り)ポジションを適切に増減させる必要があるのです。

もちろん、売買取引を行う以上、それらのリバランス取引も全て損益計算をして所得計上しなければなりません。                
更に、それらのキャピタルゲイン・ロスに加えて、FRによる収入を得たタイミングでも所得が発生することになります。

Bybitの場合、FRの決済頻度は8時間おきと非常に高いため、計算すべき取引件数は膨大なものになってしまうのです。

損益認識のタイミングの難しさ

デルタニュートラル戦略では、ポジションの調整タイミングが税務上の損益認識タイミングに影響を与えることがあります。

例えば、ビットコイン(BTC)の現物を保有し、相当量のビットコイン先物契約をショート(売り)してデルタニュートラルなポジションを構築したとします。

この取引について年内にポジションの調整を行わずにそのまま翌年に持ち越した場合、年末時点で含み益や含み損があったとしてもその年の税務上は認識されず、実際にポジションを解消する翌年以降に所得として認識されることになります。

一方で、年内にポジションの調整を行ったり、ポジションを解消した場合は、実現損益をその年の所得として認識する必要があります。

ポジションを調整するタイミングによって、税務上の所得にズレが生じることを意識しながら取引を行う必要があるのです。

異なる金融商品間の損益計算

デルタニュートラル戦略では、市場の動向に応じて異なる金融商品(仮想通貨の先物、オプション等)や、通貨ペアを跨いだポジション調整を頻繁に行う必要があります。

これらの調整はポジションの売買や、仮想通貨間のスワップ(交換)取引という形で実施されることが一般的ですが、こうした取引においても適切に損益認識を行い、税金を計算しなければなりません。

例えば、ビットコイン(BTC)でデルタニュートラルなポジションを構築している人が、イーサ(ETH)でもデルタニュートラル戦略を実践していたとします。

それぞれのポジションを調整する際に、ビットコイン(BTC)とイーサ(ETH)を交換したい場合もあることでしょう。

こうしたスワップ(交換)取引は一見してただ等価交換をしているだけのように見えますが、税務上は一度片方の仮想通貨を売却してから別の仮想通貨を購入したと見なされるため、売却時と同様に損益認識が必要になるのです。

まとめ

デルタニュートラル戦略は仮想通貨の価格変動リスクを抑えながら、FRによる安定したインカムゲインを追求する、ユニークな投資戦略です。

ハイリスク・ハイリターンに陥りやすい仮想通貨投資においてリスクを     抑えることができる方法である反面、取引の頻度が増え、損益計算が非常に煩雑になるという特徴も併せ持っています。

膨大で複雑な損益計算を手作業で行うには限界がありますので、正確かつ効率的に計算を行える専用ツールを使用することをおすすめします。

仮想通貨専門の損益計算ツール「クリプタクト」であれば、国内外90カ所以上の仮想通貨取引所などからの取引履歴の取得に対応しているほか、19,000銘柄以上の仮想通貨の時価情報も保有しているため、画面に沿った簡単な操作をするだけで損益計算が完了します。

また、ウォレットアドレスを指定するだけでブロックチェーンから取引履歴を取得し、取引を自動識別・計算する機能(アドバンスプラン以上)も搭載されています。

カスタムファイル機能を通じて架空の取引を入力することで、リアルタイムに実現損益のシミュレーションもできます。

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