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分散型科学(DeSci)とは?

分散型科学(DeSci)とは、ブロックチェーンを活用して分散型のガバナンスを基盤とした民主的なサイエンスシステムを形成することをいいます。科学者やITエンジニアによってブロックチェーン上に作られた「分散型自律組織(DAO)」が、助成機関や出版社としての役割を果たします。

分散型科学(DeSci)の主な目的は、研究資金の確保、知識の非連携解消、利益追求を目的とする出版社への非依存、分野をまたいだ共同研究の実現などがあります。

投資家は、支援したい研究を提示した科学者やITエンジニアなどに仮想通貨を介して資金を援助します。研究データなどはDAOが一括管理し、研究内容や取得した特許などはデジタル処理後NFTに取り込み、それらを必要とする企業などに販売することで資金を得ることができます。

得られた資金は研究者やエンジニア、投資家などで貢献度に応じて分配されます。また、現在一般的に、論文の査読料は無報酬となっていますが、分散型科学(DeSci)においては仮想通貨で支払われることになります。

2022年現在、アメリカを中心に40以上の分散型科学(DeSci)プロジェクトが立ち上げられています。

分散型科学(DeSci)が注目される背景

分散型科学(DeSci)が注目されるようになった、主な2つの要因について解説します。

権力の集中

2022年現在のインターネット社会は、アメリカの大手ITテクノロジー企業の台頭による寡占状態となっているのが現状です。分散型科学(DeSci)はこういった「中央集権化」から脱するための、科学者およびITエンジニアなどによる大きな試みといわれています。   
分散型科学研究モデルを確立することで、中央からの照査・管理に対して持続性のあるシステムの構築を目指しているのです。

Web3はそもそも、ブロックチェーン技術を活用することで独占状態から脱し、ユーザー主導のインターネット社会を復することを目的としています。分散型科学(DeSci)のプロジェクトでは、支援するテーマを参加者の投票で決めています。科学者やITエンジニア以外のメンバーにも説明会を設け研究内容をわかりやすく説明し、支援(投資)するかどうかを判断できるようにしています。

研究者の資金難

科学分野に限ったことではありませんが、研究者にとって研究資金を調達することは非常に重要な問題です。一般的に、研究者は研究助成機関に申請し助成機関の審査を受けますが、限られた委員によって実施される審査には時間がかかるばかりか、客観性の面でも懸念があります。より無難で保守的なプロジェクトに資金が集まる傾向もあるようです。

このような状況があるとすれば、本来の研究開発からいうと好ましくない傾向にあるといえるでしょう。重要度の高い研究に資金が集まらないと、今後の科学の発展にも影響を与えるためです。

また、いわゆるオープンアクセスの学術誌等において科学者などが論文を掲載するために支払う掲載料も、中には高額なものもあり研究者の負担になっているという状況もあるようです。

分散型科学(DeSci)がもたらすもの

では、分散型科学(DeSci)が発展することで、具体的にどのような恩恵があるのでしょうか。

権力の分散

科学分野において「科学の叡智はだれに対してもオープンすべき」との考えのもと、ネット上で誰でも論文を閲覧できるようにするなど、「オープンサイエンス」という動きが起こっています。誰でもアクセスできるという大きなメリットがある一方で、論文公表の役を担う出版社に権力が集中しやすい側面もあります。

分散型の研究共同体が誕生し、優れた研究結果を残した研究者やエンジニアにはNFTが与えられることで、NFTを多く保有しているほど高い評価を得ている研究者であることの証明が可能になります。

また、分散化されることで内容の改変が難しくなることから、国家や一部の科学雑誌による検閲に対してより耐性を持つこととなります。

科学者の資金調達が容易に

先にも触れたとおり、科学者やITエンジニアにとって資金調達問題は深刻なものです。しかし、分散型科学(DeSci)が発展すれば、科学者やエンジニアなどは仮想通貨やNFTを発行することで資金調達をしやすくなるとともに、これまで資金調達にかけていた時間を研究に費やすことも可能になると期待できるでしょう。

まとめ

分散型科学(DeSci)とは、ブロックチェーンを用いて民主的な科学研究のシステムを構築するコンセプトです。このシステムは、研究資金の調達を容易にし、科学の民主化と透明性を高めることを目指しています。

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