ここ1年ほどで「メタバース」という言葉を耳にする機会が増えてきました。
米国の大手IT企業であるFacebook社がMeta Platforms(メタプラットフォームズ)という社名に変更したことなどをきっかけに、メタバースに関心を持つ人が増えているのです。
特にここ数カ月では、日本企業においてもメタバースへの参入が加速しています。メタバース空間では、誰もが自由に「土地」を購入し、運用したり転売したりできるため、新しい投資先としても注目を集めています。
しかし、資金が動くところには必ず税金の問題が付きまとうものです。特にまだ新しい分野であるメタバースの課税関係については、どのように考えればよいのか悩んでいる方も多いことでしょう。
そこで今回はメタバースにおいて「土地」を購入し利益を得た場合課税対象になるのか、またその場合の課税対象額算出方法について、事例とともにわかりやすく解説していきます。
できる限り簡単に確定申告を行う方法もご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
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メタバースとは?
メタバースとは「メタ(Meta)」と「ユニバース(Universe)」から生まれた造語です。
メタとは「超越した」「高次の」などの意味があり、ユニバースは「宇宙」を意味します。
もともとは1990年代のアメリカのSF小説内に登場した仮想空間サービスの名称として登場した言葉ですが、次第に一般的に用いられるようになりました。
メタバースという言葉の厳密な定義はまだ確立されていませんが、従来から存在するオンラインRPGゲームなどの仮想空間と区別される重要な要素として、実際の経済活動が行われる空間である点が挙げられます。
また中央集権的なサーバー管理に依存せず、ブロックチェーンとNFTを活用してユーザーの保有資産が証明される点も、メタバースの特徴であると言えるでしょう。
メタバースにおける土地とは?
現在、「The Sandbox」「Decentraland」「Cryptovoxels」などの主要なメタバースにおいては、ユーザーがメタバース内の「土地」を購入して保有できます。
ここでいう「土地」とは、メタバース内における「空間」や「区画」を指す概念です。 ユーザーは「土地」を保有することで、その「土地」に「建物を建てる」ことや、それを誰かに貸し出したり、転売することで利益を得ることができます。
「土地」はNFT(Non-Fungible Token)としてブロックチェーン上に記録され、実際の売買などはこのNFTを売買することで行われます。
メタバースにおける土地の所有権とは?
前述したようにメタバースにおける「土地」とは、NFTとして記録されたデジタルデータであり、現実世界の中で物質的に存在する土地や不動産とは別の物として考える必要があります。民法上、所有権の対象となる「物」とは有体物のことを指し、無体物であるデジタルデータは所有権の対象にはなりません。
つまり「メタバースにおける土地の所有権」という概念は法律上は存在せず、あくまでも比喩的な表現であることに注意が必要です。
メタバースにおける「土地」の購入とはすなわち、コンテンツを一定の方法で利用できる地位を「保有」することであり、この保有がNFTによって証明されているのだという点を押さえておきましょう。
メタバースの土地にかかる課税の種類や法的位置づけ
メタバースの「土地」は現実の不動産ではないため、当然ながら不動産取得税や固定資産税等の不動産税制も適用されません。
一方で、メタバースは注目され始めてからまだ日が浅い分野であるため、当局による法的整備がまだ十分に進んでいないのが現状です。
ただし、日本の所得税法では国内に居住する個人が所得を得た場合は、所得税の課税対象になることが定められていますから、メタバースの「土地」を売買したり活用することで利益が発生する場合は、当然課税対象となってきます。現状、メタバースの「土地」はNFTとして取引されることが一般的であるため、税金について考える際はNFTに対する税制を参考にして考えるのが良いでしょう。
メタバースの土地にかかる課税の算定方法
それでは、メタバースの「土地」に関する計算方法について、主なシチュエーション別にNFTの考え方に沿って見ていきましょう。
ただし、ここで示す考え方はあくまでも一例です。
個別事例については必要に応じて税理士に相談するなど、確認が必要となる可能性がある点にご留意ください。
メタバースの土地を仮想通貨で購入した時
メタバースにおける「土地」の購入自体には課税は発生しませんが、仮想通貨で代金を支払った場合は、仮想通貨の決済として課税が生じる可能性があります。
例:メタバースの土地を1ETHで購入した。この時点でETHの時価は25万円だったが、ETHの取得時の時価は20万円だった。 ⇒ 25万円 ー 20万円 = 5万円が課税対象になる |
メタバースの土地を無償で取得した時
贈与等によりメタバースの「土地」を無償で取得した場合、その「土地」の時価分が課税対象になります。
例:メタバースの「土地」をプレゼントキャンペーンで取得した。プレゼント時において非常に類似している「土地」の価格は1ETHで取引されており、プレゼント時のETHの時価は20万円である。 ⇒ 20万円が課税対象になる可能性がある |
なお、この際の「土地」の時価の評価方法については、明確な定めがありません。市場レートが存在する仮想通貨とは異なり、一つひとつが唯一無二であるNFTを無償で取得した場合は、その時価をどう評価するのかが悩ましい点となります。
国税庁の評価通達では「評価方法の定めのない財産の価額は、この通達に定める評価方法に準じて評価する。」とされており、書画骨とう品の評価基準に準じて「その内容や性質、取引実態等を勘案し、 売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価」することが考えられます。そのため、今回のケースでは非常に類似している「土地」の売買実例価額があることを想定してその売買実例価額を評価に採用していますが、実際には個別の事例に応じて判断することになるでしょう。また、個人からの譲渡の場合は上記の他に贈与税の対象となる可能性もありますので留意が必要です。
メタバースの土地を転売または仮想通貨と交換した時
メタバースの「土地」を転売した場合、その売却益が課税対象となります。
例:1ETHの時価が20万円の時に、メタバースの「土地」を1ETHで購入した。その後、メタバースの「土地」を1ETHで転売した。この時点でETHの時価は30万円だった。 ⇒ 30万円 ー 20万円 = 10万円が課税対象になる |
メタバースの土地を貸し出して仮想通貨を得た時
メタバースの「土地」を貸し出して仮想通貨を得た場合、その収入が課税対象となります。
例:保有しているメタバースの「土地」を貸し出して、0.1ETHの収入を得た。この時点で1ETHの価格は20万円であった。 ⇒ 0.1ETH × 20万円 = 2万円が課税対象になる |
メタバースの土地に関する税制の最新情報
メタバースの「土地」取引は注目されてからまだ日が浅い分野であるため、当局による法的整備がまだ十分に進んでいない状態です。
そのため、2023年3月現在ではメタバースの「土地」に関する税務上の取り扱いについての当局見解などは発表されていません。しかし、類似する情報として「NFTに関する税務上の取り扱いについて(FAQ)」が2023年1月13日に国税庁から発表されています。これによって従前に発表されていた仮想通貨の課税関係を解説する資料に加えて、NFTに特化した資料も公開された形です。
国税庁はFAQの中でNFTを「ブロックチェーン上で、デジタルデータに唯一の性質を付与して真贋性を担保する機能や、取引履歴を追跡できる機能をもつトークン」と定義しており、主に「デジタルアートを紐づけたNFT」を想定して課税関係を解説しています。
基本的にメタバースの「土地」取引は仮想通貨を使ってNFTを取引する形態をとっているという点で、「デジタルアートを紐づけたNFT」と共通性があると言えます。メタバースの「土地」取引に関する課税関係を考える際には、これらのFAQを事例に応じて適宜読み替えながら、判断していくことになるでしょう。
参考:国税庁「NFTに関する税務上の取り扱いについて(FAQ)」(2023年1月13日)
参考:国税庁「暗号資産に関する税務上の取り扱いについて(FAQ)」(2022年12月22日)
仮想通貨に関する税金計算には「クリプタクト」がおすすめ
いかがでしたか。メタバースの「土地」取引は、仮想通貨を使ってNFTを売買する形態が一般的です。そのため、メタバースの「土地」取引における所得を算出するためには、保有している仮想通貨の正確な時価算定が必要不可欠となります。
保有している仮想通貨の時価をしっかり把握していないと、場合によってはメタバースの「土地」を購入しただけで売却益が発生したと見なされ、思わぬ課税に直面する可能性があります。そこで頼りになるのが、仮想通貨の損益計算ツール「クリプタクト」です。「クリプタクト」を活用することで、仮想通貨の損益計算を自動化し、リアルタイムに正確な時価を把握することが可能になります。余計な手間とコストをかけずに、メタバースの「土地」取引を存分に楽しみたいという方は、「クリプタクト」のご利用をぜひ検討してみてください。