「NFT取引で得た利益には税金がかかるの?」
「取引内容に応じた、税金額の計算方法を知りたい。」
このようなお悩みを抱えてはいませんか?
私たちにとって身近な存在となってきたNFTですが、価値を取引するものである以上、発生する利益に対する税務上の取り扱いはしっかりと把握しておく必要があります。
この記事では、NFTにおける税金とその税率、ケース毎の所得区分や計算方法などについて税理士法人GLADZの野口税理士に解説してもらいました。
NFTの税金計算を簡単かつ効率的に行う方法もご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
- NFTの取引で得た所得には税金がかかる!
- NFTの取引で得た所得に課される税率は?
- NFTで税金が発生するタイミング・計算方法
- NFTで得た所得の税金を正しく納めるためには?
- NFTの税金に関するよくある疑問
- NFTの税金のまとめ
- NFT関連の税金計算ならクリプタクト
1. NFTの取引で得た所得には税金がかかる!
仮想通貨での利益は原則として雑所得に区分されますが、NFT取引においては取引次第で雑所得、譲渡所得、事業所得のいずれかに区分されます。
自分のNFT取引がどの所得に区分されるのかは、入手経路や個人の状況によって異なりますので、税理士にご相談されることをお勧めします。
2. NFTの取引で得た所得に課される税率は?
NFTの所得には「雑所得」「譲渡所得」「事業所得」の3種類がありますが、どの所得区分に分類されるかによって税務上の取り扱いが異なります。
それぞれについて見ていきましょう。
雑所得・譲渡所得にかかる税率
「雑所得」と「譲渡所得」はその他の所得との合算額に応じて課税する総合課税の対象となっており、なおかつ累進課税方式によって所得金額の総額が大きいほど税率も上がる仕組みとなっています。
所得税の速算表
*1,000未満の端数金額は切り捨て
引用:国税庁|No.2260 所得税の税率
「譲渡所得」に対しては最大50万円までの特別控除が認められていますが、「雑所得」には特別控除が認められていません。
特別控除とは所得額から差し引いて良い金額のことを指し、実質的に50万円までなら「譲渡所得」に対して税金は発生しないと考えてよいでしょう。
一般的に、各所得区分には次のようなケースが該当します。
譲渡所得に該当する取引のケース
一般的に、NFTが譲渡所得の基因となる資産に該当し、営利目的を除く売買によって利益を得た場合は譲渡所得に該当します。
譲渡所得の基因になる資産とは、土地・借地権・建物・株式等・ 宝石・書画・骨とう・特許権・著作権などが幅広く含まれています。国税庁では「デジタルアートの閲覧に関する権利」と紐づいたNFTは譲渡所得の対象になるとの見解を示しており、いわゆるNFTアートなどは対象となる可能性が高いでしょう。
なお、譲渡所得は譲渡資産の種類によって課税方法が異なります。
譲渡した資産の種類別の課税方法の表
引用:国税庁|No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法
上記の表のように、土地建物や一部の株式などの譲渡所得には分離課税が適用されますが、NFTアートを含むその他の資産などについては、総合課税が適用される点に留意しましょう。
雑所得に該当する取引のケース
譲渡所得に該当せず、事業規模ではないもののNFTを営利目的で売買して所得を得た場合は、雑所得に該当します。
また、自身で作成したNFTを売却して所得を得た場合、または作成したNFTに関する著作権料を得た場合なども、雑所得に該当することが一般的です。
事業所得にかかる税率
「事業所得」は「譲渡所得」「雑所得」と同様に総合課税の対象であり、前述した累進課税の一覧表に基づいた税率が適用される点も同じです。
しかし、事業所得の場合は確定申告の際に「青色申告」を選択することで、青色申告特別控除として最大65万円までの所得控除を受けられる制度があります。
また、最大3年にわたって純損失の繰越しが認められているため、もしNFT取引が赤字になってしまったとしても、翌年以降の黒字と相殺することが可能です。
大規模にNFT取引を行う場合は、「事業所得」としての申告可否を検討してみるのも良いでしょう。
事業所得に該当するケース
一般的に個人の所得が「事業所得」に該当するかどうかは、その所得が事業規模であるか否か、そして継続的・反復的に行われているかといった観点から判断されます。
主な収入を給与所得に頼るサラリーマンが副業としてNFT取引を行っている場合は、雑所得などに該当するのが一般的です。一方で、NFT取引で生計を立てている場合は「事業所得」が認められる可能性が高いと言えるでしょう。
3. 【NFT取引のパターン別】所得の計算方法
NFTの扱いや入手経路などにより発生する税金が違うことはご理解いただけたかと思います。
ではその税金が発生するタイミングや、それぞれの計算方法はどのように処理すべきなのでしょうか。国税庁が公表している見解を元に以下の例を参考に整理してみましょう。
パターン1 NFTを仮想通貨で取得したとき
こちらはOpensea等のマーケットでNFTを購入する際に、仮想通貨で代金を支払ったというパターンです。NFT購入そのものには課税は発生しませんが、NFT購入時に支払った「仮想通貨」の時価上昇に伴う課税が生じる可能性があります。
仮想通貨の交換と同様に、NFT購入時の仮想通貨の時価が、その仮想通貨の取得時よりも高ければ、その差分が利益となりますので、仮想通貨の売却益が発生する可能性があります。
以下はNFTをイーサリアムで購入したケースを想定した計算式です。
例
NFTを1ETHで購入した。この時点のETHの時価は30万円だった。ETHは1年前に購入したもので、その時点のETHの時価は20万円だった。 → 30万円 - 20万円=10万円が利益となります。 |
パターン2 NFTを無償で取得したとき
また、購入以外の経路から無償でNFTを取得した場合は以下のような区分に分類されます。
NFTの時価分を無償で得たメリットに対する課税です。
役務提供の対価として取得:事業所得、給与又は雑所得 臨時、偶発的な取得:一時所得 それ以外の取得:雑所得 |
NFTを取得した時点の時価が、利益額となります。
例
NFTを無償で取得した。この時点のNFTの時価は30万円だった。 → 30万円が利益となります。 |
なお、個人からの無償取得の場合には、贈与税の対象となる可能性があり、かつ所得税に関して時価を取得原価とする取り扱いも考えられます。ただし、NFTの無償取得に関して国税庁からの見解は発表されていないため、個別事例については税理士にご相談下さい。
パターン3 NFTを譲渡し仮想通貨を取得したとき
先程とは対照に、保有しているNFT売却の対価として仮想通貨を受け取ったというパターンです。
この場合は、NFTゲームでアイテムを売却した際、「NFTの売却価格 - NFTの取得原価」が利益額となります。
例
NFTを1ETHで購入した。この時点のETHの時価は20万円だった。1年後に、このNFTを1ETHで売却した。この時点のETHの時価は30万円だった。 → 30万円 - 20万円 = 10万円が利益となります。 |
なお、前提として、国税庁では「NFTが仮想通貨などの財産的価値を有する資産と交換できる物である場合、その取引は所得税の課税対象になる」と見解を示しています。従って、財産的価値が無い資産と交換出来ないNFTは課税対象となりません。
では、個人がに発生する税金はどのような捉え方になるのでしょうか。
まず、NFTの譲渡(売却)ですが、その取引が営利目的かつ継続的に行われている場合には、雑所得や事業所得に区分されます。
しかし、取引が単発的であり、たまたま譲渡したNFTの値上がり益(キャピタルゲイン)と認められる場合は、譲渡所得として区分される可能性も考えられます。
自身がどのようにNFT取引を行っているかで所得区分が変わりますので、しっかりと認識しておきましょう。
パターン4 NFT同士を交換したとき
これまでの仮想通貨を介した取引とは違い、NFT同士の交換のように時価が存在しない資産同士の取引の課税関係は、やや煩雑になると考えられます。
原則として、交換したNFT同士の時価の差額が、得た利益と考えられますが、そのNFTが必ずしも時価評価ができるとは限りません 。
現実的には、交換後のNFTが最終的に時価評価可能な仮想通貨や法定通貨と取引されたタイミングで、最初のNFT取得時に係った費用の差分を利益として計算を行う方法に帰着するのではないでしょうか。
NFTに係る税金の計算方法に対する国税庁の見解は、まだまだ解釈の余地が残るところが多く、個人の取引内容や目的などから妥当と考えられる計算を行うほかありません。
法人がNFTを保有し続けた場合、期末に時価評価を行うかという論点があります。時価評価を行うためには、仮想通貨のように「活発な市場を有する」必要があるのですが、NFTが活発な市場を有している場合というのは、まだまだ少ない現状だと思われます。
NFTの期末時価が何等かの情報により得られる場合は時価評価をお勧めしますが、現実的に取得原価のままにせざるを得ない事態も残ると思われます。
関連して、仮想通貨の期末時価課税が改正される可能性が出てきています。
現在は期末の評価損益を課税の対象としていますが、実現利益が無い中で求められる課税であり、ブロックチェーン技術の発展を阻害するとして改正の声が挙げられていました。
この税制について、令和5年税制改正要望には「自社発行のトークンについては、期末時価評価課税の対象外とすること」と記載されており、税制が変更される可能性があります。
パターン5 流通時にプログラムされた収入を受け取ったとき
NFTの二次流通時に製作者が報酬として受け取る「ロイヤリティ」は、課税対象です。
制作者の方の事業形態にもよりますが、雑所得もしくは事業所得に該当すると考えられます。
パターン6 NFTの保有者から著作権料を受け取ったとき
先程のロイヤリティと似たような印象を受けますが、ロイヤリティは各マーケットで定められた二次流通時の規定でしかなく、一種の利益を得られるシステムを利用している場合のみ生ずると考えられます。
それに対し、著作権料というのはNFTの保有者が作品の編集や複製及び販売する場合に支払う使用料です。
NFTを購入した時点ではデータを保有している証明を得ただけであり、その作品を自由に扱って良いという意味ではありません。あくまで、著作権は製作者に帰属します。
例を挙げると、NFTゲーム内の土地を購入したとして、その土地は誰でも見れますし管理しているのはゲーム制作者側です。あくまでも土地を購入したデータを保有しているだけです。
この保有しているデータを編集・複製を行うには、著作権者に使用料を支払う必要があります。これがこの例での著作権料となるイメージですね。
税金の区分としてはロイヤリティと同様で、著作権者の状況によって、事業所得または雑所得に区分されると考えられます。
4. NFTで得た所得の税金を正しく納めるためには?
購入時や交換時にどのような計算方法となるか考え方をご説明しましたが、基本的に仮想通貨とは違い取引所から取引履歴が抽出できるわけではありません。
正確に計算を行うにはそれぞれのNFTに対し、購入時の時価や支払った通貨、マーケット名など取引の詳細を随時メモするのが最善策でしょう。
ただし、その他の仮想通貨取引をしていた場合、それらの取引履歴を後から統合するのは大変な作業となります。
そこで、NFTの取引については必要情報(日時、取引種類、主軸通貨、決済通貨、取引数量、取引価格、手数料 手数料通貨)をエクセルに入力し、アップロードするだけで自動で損益計算を行ってくれるツールの利用がおすすめです。
仮想通貨とNFTの取引を一括で管理できるツールを活用することで、面倒な税金計算を簡単に効率化することができるでしょう。
5. NFTの税金に関するよくある疑問
ここでは、NFTの税金に関するよくある疑問とその回答をまとめています。
それぞれ見ていきましょう。
NFTの確定申告は必要ですか?
基本的には利益を得た場合に確定申告を行い、納税の必要があります。
確定申告の必要性の有無は納税する対象者によって異なりますので注意が必要です。
- 会社員:暗号資産(NFT)取引で20万円以上の所得が出た場合
- 総所得金額が1,000万円以上の方
- 専業主婦、学生(被扶養者):暗号資産(NFT)取引で48万円以上の所得が出た場合
- 個人事業主:所得の金額に関係なく確定申告を実施
また、上記のような例に当てはまらなくても確定申告と納税が必要となる可能性があります。
今回は所得税(雑所得など)の話であり、個人の所得に課される税金として住民税があります。住民税はどんな場合も申告が必要ですので、ご注意ください。
例えば、会社員の方がNFT取引の利益が20万円以下だったために所得税の申告は不要と認識されていても、住民税の申告は必要となります。
住民税の税率は自治体によって異なりますが、概ね10%程度となっています。申告漏れに注意!住民税の申告手続についての詳細記事はこちら
NFTの税金を払わないときの罰金金額はいくらですか?
確定申告と納税の必要があるのに何も行わなかった場合、脱税とみなされる可能性があります。附帯税という罰金が課されるので、より多くの税金を支払う必要があります。
【無申告加算税】
原則3月15日の申告期限までに確定申告を行わなかった時に課税される加算税です。
各年度分の納付すべき税額に対し、50万円までは15%、50万円超の部分は20%を乗じた金額が課税されてしまいます。
例外として、税務署から調査される前に自主的に納付した場合は5%分軽減されます。
期限から1か月以内に自主的に申告する場合は、期限後の申告であっても無申告加算税は課税されません。なので、確定申告期限を超えてしまった場合でも、一日でも早い申告をお勧めします。
また、無申告加算税に関して、事実の仮装や隠蔽を行うなNo.9205 延滞税について|国税庁ど悪質な不正を行い申告を行っていないことが発覚した場合、無申告加算税に加えて40%に相当する重加算税が課せられます。
【延滞税】
期限までに税金が納められない場合、法定納付期限の翌日から納付日までの延滞税が課せられます。
他にも、期限後の修正申告時や、更正の請求または決定の処分を受けた際も日数に応じた延滞税を納付する必要があります。
実際に納付税が発生した場合ですが、2か月までは「原則7.3%」と比較的低い税率が設定されています。それ以降は「原則14.6%」とされています。
しかし、いずれも特定基準割合を基準とした割合との比較で低い方が適用されることになります。
延滞税は日割計算ですので、数日の延滞であれば大きな負担とはなりませんが2か月が経過すると大きな税額になりかねないので、注意が必要です。
その他にも、実際の所得より少なく申告した場合の「過少申告加算税」がありますので、確定申告後に計算間違いに気付いた場合は、お早目の修正をお勧めします。
暗号資産やNFTは匿名性が高いので、自分は大丈夫と安心してはいけません。
最近では法整備が進み、国税庁が取引所に対しユーザーの取引履歴を照会出来るようになりました。無申告はバレないという考えは今すぐに捨てて、きちんと確定申告を行いましょう。
NFTの税金は法人化した方がお得なのですか?
法人でのNFT取引には、法人税が課されます。
利益の考え方は個人の場合と同様ですが、最終の利益合計にかかる税率が異なるため、法人化した方がお得になると考える方もいらっしゃるでしょう。
法人税の税率は、以下のようになっています。
法人税の税率
(注3)平成31年4月1日以後に開始する事業年度において適用除外事業者(その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人等をいいます。以下同じです。)(令和4年4月1日以後に開始する事業年度においては、通算制度における適用除外事業者(注2)を含みます。) に該当する法人の年800万円以下の部分については、19パーセントの税率が適用されます。
【参考】「No.5759 法人税の税率」(国税庁)
注意点としては、法人の場合は期末に保有しているNFTを時価評価する必要があります。
取引からの利益以外に期末の評価損益も加味する必要があることから、取引からの利益のみの比較では、個人と法人どちらがお得かは考えられません。詳しくは、税理士にご相談されることをお勧めします。
NFTの税金のまとめ
いかがでしたでしょうか。
この記事では、NFT取引で得た利益に対する税金は、その所得金額に応じて申告方法や税率が異なることをお伝えしました。
そのため、NFTの税金を正しく納めるためには、所得金額の正確な把握は必要不可欠です。
特にNFTや仮想通貨の取引は時価が常に変動しているため、全ての取引について漏らさず記録し、日々の損益計算を行うプロセスが非常に重要となります。
とはいえ、日常反復的に取引を行うようなケースでは、全ての取引履歴を手作業で管理するのは非常に煩雑で負担が大きい作業となります。
そのような場合、仮想通貨専用の損益計算ツールを活用することで、作業負担を軽減することが可能です。
NFT関連の税金計算ならクリプタクト
仮想通貨の損益計算ツール「クリプタクト」であれば、多くの国内外仮想通貨取引所とのAPI連携に対応しているほか、ウォレットアドレスを指定することでブロックチェーンからの取引履歴取得にも対応しているため、煩雑な管理作業を行わずとも仮想通貨の税金計算を簡単に行うことが可能です。
またNFTの取引履歴も登録できることから、仮想通貨と併せてポートフォリオを一元管理する際にも非常に便利なツールとなっています。
「クリプタクト」でウォレット接続をして取引内容を自動識別する機能付きのプランは有料プランとなりますが、無料で体験できるデモ画面も準備されているので見てみるのがおすすめです。
なお当サイトでは、今後もNFTや仮想通貨の税金に関する最新情報をご紹介していきます。更新情報を知りたい方はぜひX(Twitter)のアカウントをフォローしてみてください。