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この記事では2021年から2022年にかけて、歩いて稼ぐことができるゲームとして大流行したSTEPNでの取引にかかる税金について税理士監修のもと説明していきます。

STEPN(ステップン)とは?

STEPN(ステップン/ステプン)は、ウォーキング・ジョギング・ランニングなど、運動することで暗号資産「GST(Green Satoshi Token)」が得られるNFTゲーム(スマートフォンアプリとして利用可能)です。

STEPNは、ゲームをプレイして暗号資産を得る「Play to Earn」の側面と、運動して暗号資産を得る「Move to Earn」 の側面を兼ね備えています。
2021年12月にベータ版がリリースされて以降、日本を含む多くの国々で利用されており、アプリ内NFTである「スニーカー」を購入することで、誰でも簡単に始められます。

STEPNが流行した理由としては、大きく2つあると考えられています。

1つは、豊かなゲーム性です。

複数のスニーカーを合成(Mint)して新たなスニーカーを得たり、スニーカーのレベルUPをさせたりと、ある種育成ゲームのような面白さがあります。

もう1つは、運動(ウォーキングやジョギング)するだけで、非常に手軽に暗号資産を得られることでしょう。スニーカーの数や能力値によって変動しますが、スニーカーを1足保有し、1日10分程度歩くと、約5〜10円価値相当の暗号資産(GST)を得ることができ、価値のあるスニーカーやGemを装着することでもっと稼ぐことも可能です。
※1GST=1.77円(2024年8月19日現在)に換算

STEPN内で得たGSTは、他の暗号資産に交換できることに加えて、スニーカーのレベルUPや修理、STEPN内アイテムであるGemの購入(スニーカーの能力値を向上させるアイテムのこと)にも利用できます。
育てたスニーカーは、STEPN内で売却することもできます。レベルが高ければ高いほど能力値が高く、需要も高まりますので、売値も高騰する傾向にあります。
以上のように、ゲーム感覚で暗号資産(GST)を得られることがSTEPNの魅力といえるでしょう。STEPN内で得た暗号資産(GST)は、ETH(イーサリアム)など他の暗号資産に交換後、暗号通貨取引所にて法定通貨に交換することも可能です。

STEPNで利益が発生するタイミング・計算方法

個人が得た経済的な利益(収益ー必要経費)には、税金が課されます。
課される税金については後半で説明しますので、まずはSTEPNにおいて収益、必要経費が生じるタイミングを、ゲームの流れに沿って整理していきましょう。

なお、STEPNを法人で行うか、個人で行うか、によって関連する税金が異なります。今回は、個人に限定してご紹介します。

①スニーカー購入時

収益必要経費
××

資産であるスニーカー購入時は、収益、必要経費ともに発生しません。この時点でのスニーカーの価額は、交換した暗号資産の時価と同額です。

なお、購入原資であるGMTを他のコインの交換により取得した場合は、通常の暗号資産交換時と同様、その価格差に損益が生じます。

(例)4,000円分のGMTで1スニーカーを購入


仕分けイメージ

借方貸方
スニーカー(資産) 4,000円GMT 4,000円

なお、上記のとおりスニーカーの購入に対する損益認識は不要ですが、スニーカーを購入するためにGMTなどの仮想通貨を支払った場合、その仮想通貨の決済取引としての側面もある点に注意が必要です。

すなわち、GMTの取得価格と譲渡価格の差額を損益として認識する必要があります。

こちらは仮想通貨に関する一般的な損益認識タイミングであるため、ここでの解説は割愛します。詳しく確認したい場合は、ページ下部の記事をご覧ください。

②運動してGSTを得た時

収益必要経費
×

運動することによりGSTを得た場合は、収益が発生します。 収益の金額は、GSTの時価×GST数です。

(例)1GST=2円の時に5GSTを得た時

取得数量5GST × 取得単価2円 = 10円の収益 
 

仕分けイメージ

借方貸方
GST 10円収益 10円

③スニーカーの修理時

収益必要経費
-×

スニーカーを修理するために消費したGSTは、必要経費に該当すると考えます。 必要経費の金額は、GSTの時価×GST数です。

(例)1GST=2円の時に5GST消費して修理した時

経費計算

2円×5GST=10円が必要経費

仕分けイメージ

借方貸方
必要経費 10円GST 10円

なお、こちらの取引も①と同様に保有するGSTの譲渡取引としての側面がある点に注意しましょう。  

④スニーカーをレベルUPしたとき

収益必要経費
××

スニーカーの能力を向上させるレベルUPは、スニーカーの価値を増大させる行為と捉えられるため、必要GSTが資産であるスニーカーの価額に加算されます。

(例)1GST=2円の時に5GST消費してレベルアップした時

2円×5GST =10円の分だけスニーカーの価値が増大

仕分けイメージ

借方貸方
必要経費 10円GST 10円

これは、消費したGSTの分だけスニーカーの(会計上の)価値が増加しているため、収益や必要経費は発生していないという考え方です。

⑤ミステリーボックス/shoesbox取得時

ミステリーボックス取得時は、その時点で何が入っているのかわからないため、収益、必要経費ともに認識しません。

収益必要経費
××

⑥ミステリーボックス/shoesbox開封時

収益必要経費
中身によって異なる中身によって異なる

ミステリーボックスの中身を得るために必要なGSTは、何を得たかによって捉え方が異なると考えます。 

中身が空の場合は必要経費に該当すると考えますが、gemやGSTを獲得した場合は、 資産であるgemの価格に加算されたり、獲得したGSTとの差額で損益が生じることになるでしょう。
shoesbox開封によるスニーカーの獲得は、その価値が受贈されたと捉えられるので、 収益に該当すると考えます。その金額は、獲得時のスニーカーの時価が妥当でしょう。

⑦gem獲得時

収益必要経費
-

運動中や、ミステリーボックス開封によるgemの獲得は、その価値が受贈された(無償で譲り受けた)と捉えられるので、収益に該当すると考えます。その金額は、獲得時のgemの時価が妥当でしょう。

(例)1GMT=20円の時に時価30GMT相当のgemを獲得した時

gemの価値(30GMT×単価20円)= 600円の収益

仕分けイメージ

借方貸方
gem(資産)600円収益 600円

⑧ソケットオープン+gem装着時

収益必要経費
××

スニーカーの能力を向上させる、ソケットをオープンしてgemを装着する一連の行為は、スニーカーの価値を増大させる行為と捉えられます。よって、ソケットをオープンするために必要なGSTの時価が、資産であるスニーカーの価額に加算されます。加えて、装着するgemの獲得時の価額も、スニーカーの価額に加算されます。

(例)1GST=2円の時に2GST消費してソケットをオープンした時
2円×2GST = 4円 の分だけスニーカーの価値が増大

仕分けイメージ

借方貸方
スニーカー(資産) 4円GST 4円

(例)獲得時100円相当のgemを装着した時
gemの価値(100円)の分だけスニーカーの価値が増大

仕分けイメージ

借方貸方
スニーカー(資産) 100円gem 100円

⑨スニーカーをmint(ミント)したとき

収益必要経費
××

mintに必要なgstの時価と、mintスクロールの取得価額が、新しいスニーカーの価額になると考えます。

(例)2,000円価値相当のmintスクロール2枚と、1GMT=15円の時に40GMT、1GST=1.5円の時に360GSTを消費してmintしたとき

mintにかかったコスト

(mintスクロール2枚 × 2,000円) + (40GMT × 15円) + (360GST × 1.5円)
= 5,140円

仕分けイメージ

借方貸方
新しいスニーカー(資産)5,140円mintスクロール 4,000円
GMT 600円
GST 540円

⑩gem合成に成功したとき

収益必要経費
××

材料となったgemの獲得時価額と、合成に必要なGSTの時価が、新しいgemの価額になると考えます。

(例)獲得時1,000円価値相当と2,000円価値相当の旧gemを合成し、1GST=2円の時に50GST消費して合成したとき

合成にかかったコスト

旧gem1,000円+旧gem2,000円+(50GST×2円)= 3,100円

仕分けイメージ

借方貸方
新しいgem(資産)3,100円旧gem 3,000円
GST 100円

※上記は新しいgemの時価がわからない前提となります。時価がわかる場合は異なる処理が考えられます。

⑪gem合成に失敗したとき

収益必要経費
×

材料となったgemが消失するため、その獲得時価額が必要経費になると考えます。

(例)獲得時1,000円価値相当と2,000円価値相当の旧gemを合成して失敗したとき

合成にかかったコスト
旧gem1,000円 + 旧gem2,000円 = 3,000円

仕分けイメージ

借方貸方
必要経費 3,000円旧gem 3,000円

⑫gemを売却したとき

収益必要経費

売却したgemの獲得時価額と、獲得したGMTの差額を損益として認識する必要があります。

損益がプラスの場合は収益となり、マイナスの場合は必要経費として認識できるものと考えられます。

(例)獲得時1,000円価値相当のgemを売却し、5,000円分のGMTを得たとき
譲渡価格5,000円-取得価格1,000円 =4,000円の収益

仕分けイメージ

借方貸方
GMT 5,000円gem 1,000円
収益 4,000円

⑬スニーカーを売却したとき

収益必要経費

売却したスニーカーの売却時価額と、獲得したGMTの差額を損益として認識する必要があります。

損益がプラスの場合は収益となり、マイナスの場合は必要経費として認識できるものと考えられます。

(例)獲得時4,000円価値相当のスニーカーを売却し、1,000円分のGMTを得たとき
譲渡価格10,000円-取得価格4,000円=6,000円の収益

借方貸方
GMT 10,000円スニーカー 4,000円
収益 6,000円

⑭アプリ内で得たGSTを他の暗号資産に交換したとき

収益経費計上

通常の暗号資産取引と同様、暗号資産の交換に該当します。交換した暗号資産の価額差に応じて、収益もしくは必要経費が発生します。なお、交換元の暗号資産の価額は、総平均法もしくは移動平均法にて求めます。

(例)獲得時1,000円価値相当のGSTを売却し、2,000円分のETHを得たとき

譲渡価格2,000円-取得価格1,000円 =1,000円の収益

仕分けイメージ

借方貸方
ETH 2,000円GST 1,000円
収益 1,000円

(+α)STEPNで運動するための、現実世界の靴やトレーニングウェアは必要経費になるの?

→認められない可能性が高いと考えます。

必要経費とは、その収益を獲得するため「だけ」に要したものを指します。
現実世界の靴や服は、STEPNプレイ時以外にも使用できるものです。STEPNのため「だけ」に必要だったと主張することが極めて難しいことが予想されます。この他にも、必要経費に該当するか悩まれた場合は、税理士にご相談されることをお勧めします。

 

STEPNに係る利益計算時の注意点

STEPNは、オフチェーンでの取引が多いため、収益や必要経費の補足が難しいです。そのため、日頃から利益額やWallet、Spending内の資産状況をメモすることが重要です。

普段から記録しておくべき項目の例は、以下のとおりです。

  • 獲得GST、GMTなどの時価と数
  • 消費GST、GMTなどの時価と数
  • スニーカー、gemの価額と数
  • SpendingからWalletへの移動
  • 取引手数料

スプレッドシートなどに記録しておくだけでなく、証拠としてスクリーンショットも併せて保存しておくとより良いでしょう。

以上が、STEPNに係る収益と必要経費が生じるタイミングでした。 利益は、上記収益と必要経費を集計し、その差額から求めます。 次は、その利益に係る税金についてご説明します。

 

STEPN(ステップン)に係る税金

個人が得た利益に対して課される税金は、所得税と住民税に分けられます。

(1)所得税

所得税は、個人が1年間(1月1日~12月31日)に得た利益に対して課される税金です。所得は10種類に区分され、各所得ごとに異なる計算方法が規定されています。暗号資産やNFTに係る所得は、10種類のうちの「雑所得」に該当する場合が多いと考えられています。STEPNで得た利益も、雑所得に該当する場合が多いことでしょう。

暗号資産の売買が事業所得に、NFTの売買が譲渡所得に、該当する可能性も考えられますが、お客様の取引状況に応じての判断になります。現時点では、雑所得以外が認められることは極めて稀だと考えております。

所得税の金額は、総所得金額×税率-控除額にて求められます。

総所得金額は、10種類の所得区分それぞれの利益を合計した金額です。
税率と控除額は、その総所得金額の大きさに応じて決定されます。

所得税の税率と控除額早見表.webp

(2)住民税

住民税も、個人が1年間に得た利益に対して課される税金です。その税率は、市町村により変動しますが、おおむね10%です。

仮に、暗号資産取引で1年間に1億円の利益があった人は、最高45%の所得税+10%の住民税が加算され、利益の約55%近くの税金を国と地方公共団体自治体に納めていただくことになります。

 

STEPNと確定申告

上記所得税や住民税の金額を計算し、税務署に申告+納税する行為を、「確定申告」といいます。以下では、STEPNをプレイすることにより、確定申告が必要となる場面に触れておきます。

〈確定申告が必要な可能性が高い方〉

・給与所得者(サラリーマン)であって、STEPNによる利益が20万円を超えた方
・総所得金額が1,000万円以上の方

(注)確定申告の必要性は、個人によって異なります。詳細はお近くの税理士または所轄の税務署などにご相談されることをお勧めします。

 

確定申告の注意点

計算を誤ったり、確定申告義務があるにも関わらず確定申告をしなかった場合は、ペナルティが課され、追加の納税が生じることもあります。
下記はペナルティの種類と、増額される税金の割合です。

過少申告加算税:納めるべき税金が少なすぎた場合10~20%
無申告加算税:確定申告をしなかった場合10~20%
重加算税:悪質とみなされた場合35~40%
延滞税:納税が遅れた場合7.3~14.6%年

このようなペナルティを避けるためにも、確定申告が必要な条件に該当する方は申告期限内に確定申告を行いましょう。

 

まとめ

STEPNを含む暗号資産取引に係る税金の考え方は、とても複雑です。法整備は日々整いつつありますが、不確定な論点はまだまだ残っています。

暗号資産に係る税金計算には、収益と必要経費の把握が非常に重要です。日々の取引記録を行うことで、税金計算の負担軽減につながります。

また、計算が複雑すぎて手に負えない方には、「クリプタクト」がおすすめです。

国内外120カ所以上の仮想通貨取引所などからの取引履歴取り込みにも対応しているだけではなく、DeFiやNFTの取引もウォレットアドレスを接続するだけで取引を自動識別、損益計算を行うことが可能です。それゆえ、日々の取引記録の負担を大幅に軽減することができます。

注意:STEPNや暗号資産について、日本ではまだ法整備がなされていない部分が多いです。本記事の内容は、税金の計算方法を担保するものではありません。あくまで、参考事例の1つとしてご参照ください。

無料で使えるプランもありますので是非試してみてください。