
ステーキングとは仮想通貨の保有量に応じて報酬が貰える仕組みのことで、残高さえあれば追加の手続きなしで報酬が自動付与される取引所も少なくありません。
特に労力をかけずに追加収入が得られるのは嬉しいことですが、報酬が課税対象となることで予想外の納税に繋がる可能性があることをご存じでしょうか。
この記事では、2025年の1月に開始された国内取引所Coincheckにおけるイーサリアム(以下、ETH)のステーキングサービス「Coincheckステーキング」を例として、ステーキング報酬の付与や損益計算方法、そして押さえておきたい税金に関する注意点について解説していきます。
CoincheckにおけるETHステーキングの自動付与とは?
まずはじめにステーキングとは何か、そしてCoincheckステーキングの概要と自動付与について見ていきましょう。
そもそもステーキングとは
ステーキングとは、仮想通貨を預けておくだけで報酬が貰える仕組みのことです。
PoS(Proof of Stake)というコンセンサスアルゴリズムを採用したブロックチェーンで行うことができ、ETHなど多くの仮想通貨が対応しています。
本来、ステーキングを行うには自分でブロックチェーンネットワークに接続するサーバー(ノード)を用意する必要があります。
しかし、現在では多くの仮想通貨取引所がこの仕組みを代行しており、口座に仮想通貨を保有しているだけで取引所が代わりにステーキングを行い、その報酬をユーザーに還元してくれるサービスが増えています。
Coincheckステーキングの概要と自動付与について
2025年に大手仮想通貨取引所Coincheckが口座保有者を対象として始めたステーキングサービスが「Coincheck ステーキング」です。
Coincheckの口座でETHを保有しているだけで年率最大約1.9%(記事執筆時点)の報酬を受け取ることができるというサービスとなっています。
報酬は基本的に28日周期で計算され、計算期間経過後の水曜日に口座残高へ付与されるという仕組みです。
口座保有者であれば新たな手続きは一切不要なため、口座にETHを保有しているだけで定期的かつ自動的に残高が増えていくことになります。
特にガチホ(長期保有)戦略をとっている投資家にとっては、これまでは寝かせていただけの残高から報酬が発生することになるため、収益性に大きな影響を与えるサービスと言えるでしょう。
ただし、自動付与であるため「収益が発生している」ことを自覚しにくい点には注意が必要です。
ステーキング報酬は受け取った時点で税務上の利益認識が生じるため、自動付与された報酬を見落とすと、確定申告などの際に申告漏れとなる恐れがあるのです。
たとえガチホ(長期保有)戦略によって1年間に売買取引を行わなかったとしても、ステーキング報酬についてはしっかり確認しておく 必要があるでしょう。
CoincheckにおけるETHステーキングの損益計算方法
ステーキングによって得た利益は原則、課税対象となり、その利益は原則下記の計算式によって算出できます。
計算式
報酬額(ETHの数量 × ETHの時価) - 必要経費 = 利益額 |
ここでいう必要経費とは、ETHのステーキング報酬を得るために要した費用のことを指します。
一般的にはステーキング手数料などが該当する可能性がありますが、Coincheckステーキングの手数料規定によると、手数料を差し引いた後の金額が付与報酬となることが推測されます。
この場合は追加で差し引ける必要経費はあまりなく、基本的には付与報酬の日本円換算額がほぼそのまま利益額になると考えて良いでしょう。
ステーキング報酬の利益計算例
10ETHを28日間保有していたところ、ステーキング報酬として0.015ETHが付与された。付与日におけるETH価格は1ETH = 300,000円であった。 報酬額(0.015ETH × 300,000円)= 4,500円 |
このようにして算出した利益を、1月1日から12月31日までの1年分合算することでステーキング報酬による年間所得額を把握することができます。
また、ほかに売買取引などの仮想通貨取引を行っている場合は、それらの損益も含めて計算する必要があります。
こうして算出できた仮想通貨取引による所得は10種類ある所得の中の「雑所得」に区分されます。
「雑所得」は「総合課税」の対象であるため、「給与所得」などと合算して最終的な課税所得額が決まります。
税金の詳しい計算方法や確定申告についてはページ下部の関連記事でも解説していますので、確認したい方はぜひ併せてご覧ください。
CoincheckにおけるETHステーキングの税金に関する注意点
口座に仮想通貨を保有しているだけで収入が増える「Coincheckステーキング」ですが、税金面を考慮すると注意点も存在します。具体的に見ていきましょう。
報酬が付与されるたびに利益が発生する
損益計算のセクションでも解説したように、ステーキング報酬による税務上の利益は報酬が付与されるたびに発生します。
「Coincheckステーキング」では報酬付与日が28日間周期の水曜日となっていますので、付与日は毎月異なります。1年間におおよそ13回付与されることになり、報酬が2回付与される月もあるということです。
そのため損益計算の際には抜け漏れがないように注意しましょう。
相場変動によっては利益より課税額が高くなる(それゆえ税金が高くなる)可能性もある
相場の変動によっては、実際に手元に残る利益よりも課税額が大きくなる可能性もあります。
ステーキング報酬に対する税務上の所得は、報酬が付与された時点の時価で計算されます。そのため、たとえばETH(イーサ)の価格が高騰しているタイミングで報酬を受け取り、その後価格が暴落してからETHを売却した場合、売却時に得られる日本円よりも、課税対象となる所得額の方が大きくなる可能性があります。
結果として、実際の売却益よりも納税額の方が高く感じられるケースもあるのです。
事例①
ステーキング報酬で30万円分の仮想通貨を得た。しかしその後に仮想通貨が暴落して価値がほぼゼロになってしまった。 |
たとえ仮想通貨の価値が暴落してしまったとしても、取得時点の時価に基づいて30万円の所得が課税対象となり、納税義務は残ります。ステーキング報酬を得るということは、同時に価格変動リスクも負っていると言えます。
このような場合、年内に仮想通貨を売却することで損失を計上し、利益と相殺することで課税所得を抑える方法が対策として考えられます。
事例②
ステーキング報酬で30万円分の仮想通貨を得た。この仮想通貨はそのままガチホ(長期保有)するため、年内には売却しないつもりだ。 |
このようにステーキング報酬を年内に売却しない方針である場合も、報酬に伴う利益に対する税金は日本円で支払う必要があります。
その場合はあらかじめ税金額を把握して、計画的に納税資金の確保をしておく必要があるでしょう。
事例③
ステーキング報酬を1回目に16万円分、2回目に14万円分と複数回にわたって受け取り、年末にまとめて売却した。 |
Coincheckステーキングでは28日周期でステーキング報酬を得られるため、実際にこのように複数回報酬を受け取るケースが多いことが予想されます。
仮想通貨の価格は常に変動していますので、たとえステーキング報酬として得る仮想通貨の数量が同じであったとしても、その時点での時価によって日本円換算額(=課税対象となる所得額)は毎回異なることになります。
正確に税額や損益を把握するには、それぞれの報酬受取時の時価をしっかり記録管理しておくことが重要です。
受け取ったステーキング報酬の売却時も所得が発生する
先ほどの事例のケースでステーキング報酬として受け取った、0.015ETHを後日、1ETH = 350,000円のときに売却した場合、報酬による所得に加えて売却による所得が発生します。
売却による所得⇒(350,000-300,000)×0.015=750円 |
このように報酬で受け取ったものを売っただけという行為も所得となるため、利益を2段階(報酬受け取り時及び報酬売却時)で計算しなければならない点については留意しておく必要があるでしょう。
受け取りたくない場合は設定が必要
もしステーキング報酬によるメリットよりも税務上のデメリットの方が大きいと判断した場合は、設定を行うことで受け取りを停止することも可能です。
これは一般的に「オプトアウト」と呼ばれる多くの取引所で提供されている機能ですので、意図しない報酬を避けたい場合はお使いの取引所が対応しているか確認してみると良いでしょう。
「Coincheckステーキング」の場合は、Webサイトでは「取引の設定」より、スマホアプリではウォレット内右上のアカウントより受取停止手続きを行えます。
まとめ
「Coincheckステーキング」をはじめとする仮想通貨取引所のステーキングサービスは、口座の残高を有効活用して報酬を得ることができる魅力的な手法です。
しかし、付与された報酬には税金がかかることや、付与時点の時価に基づいて所得が算出されるため、意図せず価格変動リスクを負うことになる点には注意が必要です。
こうしたリスクへの対策として、仮想通貨の損益計算を効率的かつ迅速に行える仕組みを整えておくことが重要です。
仮想通貨専門の損益計算ツール「クリプタクト」であれば、Coincheckを含む国内外130種類以上の取引所やブロックチェーンから取引履歴を取り込むことができ、1分単位の時価情報に基づいて正確な損益を自動計算することが可能です。
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