仮想通貨の年末円転で注意すべき点.webp

「仮想通貨の税金計算は面倒。年末にすべて円転してしまえばシンプルになるのでは?」

このように考えている方は少なくありません。

しかし、年末の一括円転には、税務上の誤解や思わぬ落とし穴が潜んでいる可能性があることをご存じでしょうか。

誤った認識のまま確定申告をしてしまうと、不要な税負担が発生したり、申告漏れに繋がるリスクも考えられます。

この記事では、仮想通貨の年末円転に関する税金計算のポイントと、よくある誤解について分かりやすく解説していきます。

目次

  1. 仮想通貨の年末円転とは?
  2. 仮想通貨の年末円転時の税金計算のポイント  
    2.1. 平均取得価格の算出方法  
    2.2. 誤認による損益計算ミスの具体例


仮想通貨の年末円転とは?

仮想通貨の年末円転とは、年末のタイミングで保有している仮想通貨をすべて売却して日本円に清算することを指します。

「1年間に投入した日本円」と「年末円転後の日本円」の差額を計算するだけで簡単に利益を把握できるという発想によるものです。

よくある年末円転による利益計算

取引所に100万円を投入して仮想通貨取引をはじめた。    
年末に仮想通貨を全て売却したら日本円残高が150万円になった。

→ 150万円 - 100万円 = 50万円の利益

一見するとシンプルで分かりやすい計算方法のように思えます。

しかし、保有を続けようと思っている仮想通貨も売却することになり、その時点で損益認識することになるため、2024年のように年末にかけて価格が上昇していた局面だと、所得が大きくなり、税金を多く払うことになるケースがあります。

また、この原則を正しく理解しないまま、曖昧な認識で年末円転によるシンプルな計算のみを行うと、本当の税務上の利益と誤差が生じてしまう可能性があるのです。

特に所得を実際よりも少なく申告(過少申告)してしまった場合は、脱税として重大な問題に繋がる恐れがあるため注意しなければなりません。

年末に仮想通貨を全て円転すること自体は問題ありませんが、確定申告に向けて、正しい税金計算方法を理解しておくことが重要です。

仮想通貨の年末円転時の税金計算のポイント

仮想通貨の損益計算は取引ごとに行い、それぞれの損益を合算することで1年を通じた損益額を算出するのが基本です。

損益計算の基本式は次のとおりです。

損益の算出方法の原則

売却価格(売却単価 × 売却数量) - 取得価格(平均取得単価 × 売却数量) = 損益

取得価格を把握するには、平均取得単価の計算が欠かせません。    
仮想通貨の税金計算を正しく行うためにも、平均取得単価を正確に把握することが重要なのです。

平均取得価格の算出方法

日本の税制では仮想通貨の平均取得単価を算出する方法として、仮想通貨を購入するたびにその時点での平均取得単価を計算しなおす「移動平均法」と、1年間の購入取引を全て合算して年末に平均取得単価を求める「総平均法」の2つがあります。

「総平均法」と「移動平均法」についてはページ下部に記載している関連記事でも詳しく解説していますので、興味のある方は併せてご覧ください。

個人の場合、特に届出をしなければ自動的に「総平均法」を選択したものと見なされますので、ここでは「総平均法」に基づいて考えてみましょう。

総平均法による平均取得単価の計算式

総購入金額 ÷ 総購入数量 = 平均取得単価

総購入金額が500万円で総購入数量が0.5BTCの場合、1BTCあたりの平均取得単価は(500万÷0.5=)1,000万円です。

この平均取得単価がその年を通じて全てのビットコイン取引(売却や交換、決済など)における取得単価として適用されることになります。

では、その後、1,200万円/BTCで0.2BTCを売却したとしましょう。

この場合の損益計算は次のとおりです。

→ 売却価格(1,200万円 × 0.2BTC) - 取得価格(1,000万円 × 0.2BTC) = 40万円の利益

この事例では、一回の買いと売りでしたが、何度も売買を行うケースのほうが多いでしょう。この場合、年内に行った全ての取引における損益を算出して合算しましょう。

誤認による損益計算ミスの具体例

毎年年末に仮想通貨を円転することは、平均取得単価をリセットしたり日本円の利益をわかりやすくするという点で、税金計算をシンプルにする効果があります。

しかし、本来すべき税金計算を正しく理解していないと、誤った金額を税務上の利益と誤認してしまうリスクがあります。

パターン① トレードしている口座だけを円転しているケース

B氏は取引所Zでのみビットコイン取引を行い、年末に全て円転した。取引所Zで投じた金額と円転して残った金額の差額を利益額と認識して確定申告を行った。

なお、この年にガチホ用として取引所Xでビットコインを保有している。

後日、税務署から申告漏れを指摘された。

仮想通貨の損益計算は銘柄単位で行うため、複数の取引所で取引を行っている場合は横断的に平均取得単価を算出する必要があります。

ガチホ用の口座では「売る」行為をしていないので、関係ないと勘違いしている人も多いようですので注意しましょう。

なお、自分のウォレットへ仮想通貨を移動し、取引所の残高だけを年末に円転して計算するのも誤った方法です。

実際にこのような行為をしていたことが発覚し追徴課税をうけた事例もあるようです。取引所からご自身のウォレットの送金についても昨今税務署ではチェックを行っているため、正しく申告するようにしましょう。

パターン② 過去に円転していない仮想通貨があるケース

A氏は取引所Xに昔から保有している1BTCがあり、当時50万円で購入して現在は多額の含み益が生じている。

一方で今年、別の取引所Yで新たにビットコインのトレードを行った。

取引所Yで1BTCを1,000万円で購入したが、年末円転時の売却額は800万円であったため今年の取引所Yだけの取引を見て、200万円の損失として計算していた。

後日、税務署から多額の申告漏れを指摘された。

A氏はなぜ税務署から申告漏れの指摘を受けてしまったのでしょうか。

このケースの場合、今年の取引による損益を計算する際には、以前から保有している取得単価50万円のビットコインを含めた平均取得単価を計算する必要があるのです。

売却時の平均取得単価  
 (50万円 + 1,000万円) ÷ 2BTC = 525万円

本来の損益計算    
 売却価格(800万円 × 1BTC) - 取得価格(525万円 × 1BTC) = 275万円の利益

A氏は取引所Yでの売買のみを計算し赤字と判断してしまいましたが、本来の計算方法ではこの年の取引で多額の利益が生じているため、税務調査で指摘されることになってしまったのです。

年末円転で計算をする場合は、①今年から仮想通貨投資をスタートした場合、もしくは②過去から投資している場合は過去の投資の取引履歴が分析済みの場合、のいずれかの要件が必要になるので留意が必要でしょう。

さらに、円転していない取引所やウォレットに仮想通貨がある場合、それは脱税と見られることになるので、利用している取引所/ウォレットの資産はもれなくすべて円転する対象になることも留意が必要でしょう。

まとめ

正しい理解が乏しいまま税金計算をすると、誤認による申告漏れが発生しやすくなります。確定申告に向けて準備をする際は、必ず全ての取引に対して正確な損益計算を行うようにしましょう。

とはいえ、年内に行った取引の履歴を漏らさず管理したり、全てを一件ずつ計算していくのは非常に手間のかかる作業です。

このような煩雑な作業は、専用の会計ツールを使って自動化することをおすすめします。

仮想通貨専門の損益計算ツール「クリプタクト」であれば、国内外130種類以上の取引所やウォレット、ブロックチェーンなどからデータを取り込むことができるため、面倒な入力の手間を省いて取引履歴を管理できます。

また、24,000銘柄を超える仮想通貨や法定通貨の時価情報も保有されているため、複雑な損益計算も自動的に済ませることが可能です。

こうした機能はいずれも無料のFreeプランでご利用いただくことができます。    
手間をかけずに正しい損益計算を行うために、ぜひこの機会にお試しください。