誰でも始めやすい投資として注目されている仮想通貨取引ですが、中でも仮想通貨FXは資金にレバレッジをかけてハイリターンを狙える投資手法として人気を集めています。
仮想通貨FX取引とは、仮想通貨を買った価格と売った価格の差額や、または売った価格とその後に買い戻した価格の差額によって利益を狙っていく差金決済取引のことです。「暗号資産証拠取引」とも呼ばれています。
現物取引とは異なり実際に仮想通貨を保有するのではなく、手元の資金を担保として仮想通貨を売買したと仮定した取引を行います。
この際、レバレッジをかけて担保(証拠金)よりも大きな金額で取引を行えるため、ハイリスク・ハイリターンを好む投資家に人気となっているのです。
しかし取引で利益を得ることができたら、当然考えなければならないのが税金の問題です。
そこで今回は、仮想通貨FXを行った場合の確定申告の要否や、税金対策、計算の手順などについてわかりやすく解説していきます。
手間のかからない簡単な方法も紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
実は仮想通貨と仮想通貨をトレードするだけで、税金計算の対象です。
- 仮想通貨FXの基礎知識:税金
1.1. 仮想通貨FXで得た所得には税金がかかる
1.2. 仮想通貨FXの所得は総合課税の対象
1.3. 仮想通貨FXの損失は繰越控除の対象外
1.4. 異なる税区分の所得と損益通算できない
1.5. 為替FXや仮想通貨の現物取引との税金の違い - 仮想通貨FXの基礎知識:確定申告
2.1. 所得税を納めるにあたり確定申告が必要になる
2.2. 仮想通貨FXの損益と税金の計算方法 - 仮想通貨FXの損益と税金の計算方法
- まとめ
仮想通貨FXの基礎知識:税金
仮想通貨FX取引で利益を得た場合、どのような税金が発生するのでしょうか。発生する税金の特徴を交えながら見ていきましょう。
仮想通貨FXで得た所得には税金がかかる
大前提として、日本国内に居住している個人が所得を得た場合、所得税及び住民税の2種類の税金などを支払う必要があります。
これらの税金は、利益から必要経費を差し引いた金額である「所得」を算出し、その所得金額に対して所定の税率を適用することで税額が決まる仕組みとなっています。
そして、仮想通貨FX取引で得た利益も所得として課税対象にされているのです。
なお、仮想通貨FX取引を行う場合に海外取引所を利用する人も少なくありません。よくある誤解として「海外取引所で得た利益は所得税のことを考えなくてよい」と考えている人が散見されますが、これは大きな間違いです。国内取引所であれ、海外取引所であれ、日本国内に居住している人が仮想通貨FX取引で利益を得たら、日本の税制が適用されるということを覚えておきましょう。
仮想通貨FXの所得は総合課税の対象
仮想通貨FXで得た所得は通常、「雑所得」と呼ばれる所得区分に分類され、「総合課税」と呼ばれる課税方式の対象となります。
「総合課税」とは給与所得や事業所得など、他の所得と合算した課税所得金額に対して税額を計算する方式であり、仮想通貨FXによる「雑所得」も含めて合算することになります。税額を計算する元となる税率については、所得が増えるほど高くなる「累進課税方式」が採用されているため、計算の際には注意が必要です。
累進課税でかかる税率と控除額
参考:国税庁「No.2260 所得税の税率」
上の表のように、仮想通貨FXを含めた全ての所得の合算額(課税所得金額)に応じて、段階的に税率が適用されていく ということを押さえておきましょう。
なお、上記はあくまでも所得税の税率となっています。別途、住民税(約10%)がかかってきます。「仮想通貨や仮想通貨FXで稼いだ利益は、最大で55%の税率がかかり、半分以上が税金となるケースがある」と言われるのは、この所得税最大45% + 住民税約10% = 最大約55% であることに由来します。
仮想通貨FXの損失は繰越控除の対象外
仮想通貨FXの取引で損失が発生した場合、繰越控除を行うことができません。
繰越控除とは、年度内に発生した損失を利益から控除しきれない時に、翌年以降の利益から控除できるように繰り越せる制度のことです。
株式投資や為替FXなどでは利用できる制度ですが、現状は仮想通貨FXでは認められていません。
そのため、例えば仮想通貨FXで2022年に100万円の損失が確定し、2023 年は逆に100万円の利益を得たという場合、年度を跨いで損失の繰り越しができないため、2023年は100万円分の課税所得が発生してしまうということになります。
通算で見ると利益はプラスマイナスゼロであるにも関わらず、概算で約2.6万円ほどの所得税が発生することになります。(2023年に100万円以外の所得が無い場合の概算)
異なる税区分の所得と損益通算できない
仮想通貨FXの取引で発生した損益は、事業所得や給与所得などの異なる税区分の所得と損益通算を行うことができません。
損益通算とは発生した損失を他の所得区分の利益と相殺することです。
そのため、給与所得が500万ある会社員の方が、仮想通貨FXで300万円の損失をした場合であっても、損益通算がされないために給料に係る税金は一切減らないこととなります。
損益通算は、赤字が出た分だけ他の利益を減らすことができるため、節税対策として有効ですが、仮想通貨FXにおいては使えません。仮想通貨FXにおいては、同じ税区分である場合にだけ認められています。
例えば、仮想通貨の現物取引で20万円の損失を出し、仮想通貨FXで50万円の利益が出ているようなケースでは、どちらも同じ雑所得として申告している場合は損益合算を行うことができます。この場合は、仮想通貨FXの所得50万円のうち差引30万分のみ課税されるため、節税効果が得られるのです。
為替FXや仮想通貨の現物取引との税金の違い
本来、FX(Foreign Exchange)は「外国為替証拠金取引」(いわゆる為替FX)を指す言葉でしたが、近年では取引方法が似ている「暗号資産証拠金取引」を「仮想通貨FX」と呼ぶことが定着しています。
しかし、同じ「FX」という名がついていても両者の課税方法は全く異なるため、為替FXの税金知識を流用することはできません。
ここで仮想通貨FXと他の投資形態について 課税方法の比較を整理しておきましょう。
このように、投資形態によって課税方法や計算の考え方が異なることがお分かりいただけると思います。
仮想通貨投資と株式投資、仮想通貨FXと為替FXは、それぞれ投資の形態が似ていますので感覚的に混同してしまいがちです。
誤った申告を行ったり申告自体を怠ったりすると、延滞税や加算税といったペナルティが課せられ、税額の不足分を合算した追徴課税の対象となります。
税務調査で指摘されないためにも、かかる税金の特徴をしっかりと把握し、1年間の損益と税金の計算を正しく行うようにしましょう。
関連記事:ばれないのは間違い!仮想通貨の税金を未払いで放置すると起きること
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仮想通貨FX取引で利益を得た場合、どのような税金が発生し、どのような手続きを行う必要があるのでしょうか。それぞれ見ていきましょう。
仮想通貨FXの基礎知識:確定申告
ここからは、仮想通貨FX取引を行う際に必要な基礎知識として、確定申告について見ていきましょう。
所得税を納めるにあたり確定申告が必要になる
前段では仮想通貨FX取引で得た利益には所得税や住民税などがかかることをご説明しましたが、これらの税金を納めるためには確定申告を行う必要があります。
残念ながら、仮想通貨FX取引で得た利益に対する源泉徴収や申告分離課税の制度はありません。例えば証券会社で株式投資を行う場合、源泉徴収ありの特定口座を開設することで株式投資の税金を他の所得と切り離すことができます。
そして面倒な税金の処理は証券会社が行ってくれるという制度なのですが、仮想通貨FXの場合は現状こうした仕組みがないのです。そのため、実際に自分がいくら所得税を納税する必要があるのかを計算し、税務署へ申告する必要があります。この手続きのことを確定申告と呼びます。具体的にどの程度の所得を得たら確定申告が必要になるのかは人によって異なりますので、ここでは代表的な例について見ていきましょう。
なお、この記事では所得税の確定申告についてご紹介します。確定申告は所得税と住民税両方の申告を兼ねているため、確定申告を行った場合は住民税の申告は必要ありません。しかし、確定申告が不要な人については別途住民税の申告が必要な場合があります。
住民税の申告についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
会社員が副業で仮想通貨取引を行っている場合
会社員やパート、アルバイトなどの給与所得を得ている人の場合、通常は勤務先で年末調整を行うことで確定申告が不要となります。いうなれば年末調整は、企業を経由した簡易的な確定申告の役割を果たしているのです。しかし、年末調整はあくまでも給与所得の税額計算や過不足清算を行うための仕組みですので、基本的に給与所得以外の申告ができません。そのため、年末調整を受けた給与所得以外の所得(仮想通貨FXによる所得を含む)が20万円を超える場合は、確定申告を行う必要があります。なお、仮想通貨取引や仮想通貨FX取引による所得は基本的に雑所得に該当します。
個人事業主や被扶養者が仮想通貨取引を行っている場合
個人事業主や被扶養者(専業主婦や学生)など、給与所得が無い人は年末調整がありません。そのため所得を得た場合、まずは所得税が発生するのかを自分で確認する必要があります。そして、所得税が発生する場合には確定申告を行わなければなりません。
では、どのようなケースで所得税が発生するのでしょうか。
簡易的な見分け方として、所得が基礎控除の範囲内であるかを確認する方法があります。基礎控除とは、年間所得2,400万円以下の人であれば税金を計算する際の課税所得から48万円を控除できる、つまり差し引ける制度です。すなわち年間所得が100万円の専業主婦であれば、課税所得は52万円になるということです。
このことから、仮想通貨FXを含む所得額が48万円を超えると課税所得がプラスになり、確定申告が必要になると判断できるのです。
なお、青色申告を行うことで更に最大65万円の青色申告特別控除を受けることもできます。この場合、基礎控除とあわせて最大113万円まで所得控除を受けられることになりますが、注意点として青色申告特別控除を受けるためには、事前に税務署に開業届や青色申告承認申請書などの書類の提出が必要ですし、事業に係る帳簿保存などが必要になります。
仮想通貨FXの損益と税金の計算方法
さて、それでは仮想通貨FXの損益認識が発生するタイミングと税金の計算について、具体的な事例に基づいてイメージを確認していきましょう。
事例1:副業で仮想通貨FX取引を行う会社員Aさんのケース
例
年収800万円の会社員Aさんは、副業として仮想通貨FX取引や株式投資を行っています。
仮想通貨FXでは以下の取引を行いました。
・3月15日 1ビットコイン100万円の時に1ビットコインを「買い」
・3月20日 1ビットコイン130万円の時に1ビットコインを「売り」
仮想通貨FXの利益は、雑所得として確定申告を行うつもりです。
(簡潔化のため基礎控除と給与所得控除以外の控除は考慮しません。)
このケースの場合、100万円で買った1ビットコインを130万円で売っているため、売却したタイミングで仮想通貨FXの利益として雑所得が30万円発生しています。
仮想通貨FXによる雑所得は総合課税の対象であるため、給与所得800万円と合算した830万円から基礎控除(48万円)と給与所得控除を引いた額が課税所得金額となります。
(なお、このケースにおいては、給料に係る社会保険料については考慮外とします)
給与所得控除は給与の収入金額によって異なりますが、このケースでは190万円となるため、課税所得額は592万円、総合課税の所得税額は75万6500円となります。
給与控除参考:国税庁「No.1410 給与所得控除」
補足となりますが、このケースの場合、所得税については、給料の天引きとしてすでに支払い済みの部分があります。実際には総合課税の所得税75万6500円から、給料の天引きとして支払い済みの所得税を控除した額を確定申告で納税することとなります。
事例2:副業で仮想通貨のFXや現物取引を行う個人事業主Bさんのケース
例
個人事業主Bさんは、本業の個人事業で700万円の事業所得があります。
仮想通貨FXでは以下の取引を行いました。
・5月10日 1ビットコイン140万円の時に1ビットコインを「売り」
・5月15日 1ビットコイン100万円の時に1ビットコインを「買い」
仮想通貨現物取引では以下の取引を行いました。
・6月20日 1アルトコイン30万円の時に1アルトコインを購入
・6月25日 1アルトコイン20万円の時に1アルトコインを売却
仮想通貨の利益は雑所得として確定申告をするつもりです。
また、65万円の青色申告特別控除を受けられます。
(簡潔化のため基礎控除と青色申告特別控除以外の控除は考慮しません。)
このケースの場合、仮想通貨FXの売り注文から入って安値で買い戻ししているため、買戻しのタイミングで40万円の利益が発生しています。
一方で仮想通貨現物取引では10万円の損失が発生しており、これらは損益通算が可能なため、仮想通貨による雑所得は30万円となります。
総合課税の課税所得金額は事業所得700万円と雑所得30万円の合計から、基礎控除48万円と青色申告特別控除65万円を引いた617万円となり、総合課税の所得税額は80万6500円となります。
事例3:仮想通貨FX取引をしている学生Cさんのケース
例
被扶養者の学生Cさんは、小遣い稼ぎとして仮想通貨FXで以下の取引を行いました。
・3月15日 1ビットコイン100万円の時に0.5ビットコインを「買い」
・3月20日 1ビットコイン130万円の時に0.5ビットコインを「売り」
(簡潔化のため基礎控除以外の控除は考慮しません。また、アルバイト等はしていないものとします。)
このケースでは売却取引のタイミングで仮想通貨FXの利益として15万円の雑所得が発生しています。
しかし基礎控除48万円の範囲内であるため課税所得はなく、確定申告は必要ありません。
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いかがでしたでしょうか。
仮想通貨FX取引で利益を得た場合は確定申告の要否を確認し、必要な場合は正確に納税額を申告しなければならないことを、具体的にイメージしていただけたことと思います。
今回ご紹介した事例では、わかりやすさを重視して仮想通貨FX取引の回数を最小限に抑えていますが、実際には値動きに応じて1日に何度も売買を行うケースが多いことでしょう。
年間の取引量が膨大になると、取引履歴の管理や、手作業で正確な損益を計算するのは非常に煩雑になります。
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