ロックアップつきの仮想通貨の税金計算方法を徹底解説

税金・税制
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ロックアップとは、仮想通貨トークンが一定期間取引や売却ができないように制限される期間のことを指します。仮想通貨が「ロックアップ」されている場合、その取得価額や損益計算に際してどのような点に留意すべきなのでしょうか。

この記事では仮想通貨がロックアップされる主なケースを紹介しつつ、ロックアップつき仮想通貨の税金計算方法や注意点についてわかりやすく解説していきます。

仮想通貨取引の利益を最大化するためには、税金に関する正しい知識と対策が欠かせません。ぜひ最後までご覧ください。

目次

  1. ロックアップつきの仮想通貨とは    
    1.1. ロックアップつき仮想通貨の主なケース
  2. 【タイミング別】ロックアップつきの仮想通貨の税金計算方法      
    2.1. ロックアップつき仮想通貨を取得したときの税金計算方法      
    2.2. ロックアップ期間中の仮想通貨の税金計算方法      
    2.3. ロックアップ期間終了後の仮想通貨の税金計算方法
  3. ロックアップつき仮想通貨の税金に関する注意点
  4. まとめ

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ロックアップつきの仮想通貨とは

ロックアップつきの仮想通貨とは、一定の期間、保有者がその仮想通貨を売却や送金ができないように、システム的に制限されている通貨のことを指します。

仮想通貨にロックアップが設定される理由には多種多様なケースがあり、設定される期間もさまざまです。

一般的に、設定された期限が経過するなどの条件を満たすことでロックアップが解除され、仮想通貨は通常通り取引できるようになります。

ロックアップつき仮想通貨の主なケース

仮想通貨にロックアップが設定されるケースには、主に次のようなものがあります。

● ICOやIEO実施後のロックアップ     
● ステーキング中の仮想通貨のロックアップ     
● ファーミング(流動性提供)中の仮想通貨のロックアップ     
● エアドロップされた仮想通貨のロックアップ     
● プロジェクトメンバー報酬のロックアップ

順に見ていきましょう。

ICOやIEO実施後のロックアップ

仮想通貨プロジェクトの初期段階で、ICO(Initial Coin Offering)やIEO(Initial Exchange Offering)などの資金調達イベント後に、一部の仮想通貨がロックアップされる場合があります。

これは主にプロジェクトの開発者や運営母体が保有するトークンが対象になる場合が多く、市場への流通量を制限することで価格の安定化を図るために行われることが一般的です。

ステーキング中の仮想通貨のロックアップ

仮想通貨のステーキングを行う場合、ステーキングに使用しているトークンはロックアップされることが一般的です。

また、仮想通貨によってはステーキングで得られる報酬に一定期間のロックアップがかかっている場合もあります。

ファーミング(流動性提供)中の仮想通貨のロックアップ

DeFi(分散型金融)プラットフォームでファーミング(流動性提供)を行う場合、その提供期間中はトークンがロックアップされることになります。

ロックアップの詳細な仕組みはプラットフォームによって異なります。

無期限のロックアップの場合は保有者が任意のタイミングで解除できるケースが一般的ですが、解除に一定の要件が設けられているケースもあります。

エアドロップされた仮想通貨のロックアップ

仮想通貨のエアドロップ(無償配布)が行われる際に、配布されるトークンに一定期間のロックアップが設定されている場合があります。

大規模なエアドロップである場合、大量のトークンが市場へ流入することによる急激な価格低下を防ぐ効果があるためです。

プロジェクトメンバー報酬のロックアップ

DAO(分散型自律組織)など、プロジェクトメンバーの報酬を仮想通貨で支払っている場合に、ロックアップが設定される場合があります。

一定期間のロックアップを設定することで、メンバーのプロジェクトへの長期的な参加を促すことができるためと考えられています。

【タイミング別】ロックアップつきの仮想通貨の税金計算方法

仮想通貨取引を通じて得た利益に対しては税金が課せられます。

ロックアップつきの仮想通貨によって利益を得た場合、これらの税金計算はどのようにすべきなのでしょうか。

現状、ロックアップつきの仮想通貨を取得した場合の税務上の取り扱いについて、税務当局から明示的な指針は示されていません。そのため、最終的には個別ケースごとに税務署が判断を下していくことになるでしょう。

しかし、仮想通貨全般の税務上の取り扱いについては国税庁からFAQ*が公開されており、一般的にはこのFAQで示された内容に基づいて判断していくものと考えられています。

ここでは、ロックアップつき仮想通貨の税金計算方法について、国税庁のFAQが示す考え方を基に「取得したとき」「ロックアップ期間中」「ロックアップ期間終了後」に分けて解説していきます。

実際の申告を行う際には、必要に応じて税務署の相談窓口や税理士等に相談をしながら進めると良いでしょう。

*参考:国税庁|暗号資産等に関する税務上の取扱いについて

ロックアップつき仮想通貨を取得したときの税金計算方法

国税庁の指針では、「ステーキング」などにより仮想通貨を取得した場合、その取得した仮想通貨の取得時点の時価を所得として認識することが示されています。

従って、ステーキングの報酬などとしてロックアップつきの仮想通貨を取得した場合であっても、その期限が到来しているか否かを問わず、取得した時点の市場価格を所得として認識する必要があると考えられます。

1ETHの市場価格が20万円のときに、0.1ETH(ロックアップつき)をステーキング報酬として取得した。

⇒ 20万円 × 0.1ETH = 2万円の所得

なお、エアドロップやその他の報酬などについても明示されてはいませんが、計算の考え方としてはステーキング報酬と同様に取り扱ってよいものと考えられています。

1ETHの市場価格が40万円のときに、0.01ETH(ロックアップつき)をエアドロップで取得した。

⇒ 40万円 × 0.01ETH = 4,000円の所得

これらを合算した総所得に対して、個人であれば「所得税」、法人であれば「法人税」が課税されることになります。

ロックアップ期間中の仮想通貨の税金計算方法

原則として仮想通貨取引においては、取引によって利益が確定したタイミングで所得認識を行う必要があります。

しかし仮想通貨のロックアップ期間中は基本的にその仮想通貨を動かすことができませんので、所得認識すべきイベントが発生せず、税金計算を考慮する必要がないのが一般的です。

ただし、ロックアップ期間に年度末を跨いだ場合は、個人と法人で扱いが異なります。

個人の場合、仮想通貨の保有したまま年度末を跨いだとしても、その含み損益に対して課税されることはありません。

一方で法人の場合は、仮想通貨が法人税法上の期末時価評価の対象となっているため、期末時点の時価をもって評価額とし、評価額と帳簿価格の差額をその年度の損益に算入して法人税額を計算する必要があります。

なお、この点については仮想通貨がロックアップ期間中であっても法人税法上の期末時価評価の対象である旨が国税庁のFAQで明記されています。

(参照:国税庁|暗号資産等に関する税務上の取扱いについて 3-1-6

仮想通貨がロックアップ期間中であるからという理由のみをもって、税務上の取り扱いが特段変化するわけではないと考えて良いでしょう。

ロックアップ期間終了後の仮想通貨の税金計算方法

最後に、ロックアップ期間終了後に仮想通貨を売却した場合の税金計算について見ていきましょう。

一般的に仮想通貨を売却した場合は、売却価格とその仮想通貨の取得原価の差額を所得として認識する必要があります。

1ETHの市場価格が20万円の時に、ロックアップつきの1ETHを取得した。     
数カ月後、期間到来によりロックアップは解除された。     
その後、1ETHの市場価格が30万円の時に、1ETHを売却した。

⇒ 売却価格30万円 - 取得原価 20万円 = 10万円 の所得認識

なお仮想通貨の取得原価には、購入時に支払った対価の額(購入以外の場合は取得時の時価)が該当します。

ロックアップの有無によって取得原価が変わることはありませんので、通常の仮想通貨の売却と同様に取り扱ってよいでしょう。

ロックアップつき仮想通貨の税金に関する注意点

前項では、ロックアップつきの仮想通貨であっても基本的に通常の仮想通貨と同じ税務原則に沿って税金計算を行うことをご紹介しました。

基本的に保有しているだけでは課税されず、損益認識すべきイベント(利益確定など)が発生した際に所得が生じるという点も、通常の仮想通貨と同様です。

ただし、ステーキングやイールドファーミング(流動性提供)のように、仮想通貨をロックアップしていることで報酬が発生するケースもあります。

こうした報酬の取得や売却といった取引も損益認識すべきタイミングとなりますので、税金計算から漏らすことのないように注意が必要でしょう。

ステーキングのためにロックアップ中のETHから、ステーキング報酬として0.01ETHを取得した。報酬取得時点の1ETHの市場価格は20万円であった。     
その後、1ETHの市場価格が30万円に上昇したため、0.01ETHを売却した。

【取得時】     
⇒ 20万円 × 0.01ETH = 2,000円の所得     
【売却時】     
⇒ 売却価額(30万円 × 0.01ETH) - 取得原価(20万円 × 0.01ETH)* = 1,000円の所得

*このケースでは簡略化のため取得原価20万円と仮定していますが、他にもETHを保有している場合は「総平均法」または「移動平均法」による取得原価計算が必要となる点に注意してください。

なお、ロックアップ中の仮想通貨については売却できないことによる税務上のリスクが生じ得る点にも注意が必要です。    

例えばステーキングやエアドロップで仮想通貨を得た場合、取得した時点でその時価評価額を所得として認識する必要があり、日本円で課税されることになります。

しかしこの仮想通貨が年度末を越す期間のロックアップつきであった場合、年内に売却して日本円に換金することができません。

ロックアップ期間終了後にこの仮想通貨の価格が暴落していた場合、極端なケースでは実際に得られる日本円よりも課税された税額の方が多いという事態も考えられます。

このように、場合によってはロックアップつきの仮想通貨を取得することが税務上のリスクとなり得る点については、しっかりと把握しておく必要があるでしょう。

まとめ

この記事では、ロックアップつきの仮想通貨であっても基本的に通常の仮想通貨と同じ税務原則に沿って税金計算を行うことや、そのために考えられるリスクについてご紹介しました。

仮想通貨取引を行う際には、税金上のリスクについてもしっかりと把握したうえで、計画的に取引を行うことが大切です。

なお、もう一つの大きな税務上のリスクとして、誤申告や申告漏れがあります。

仮想通貨取引に関する税金は、正確な内容を期限内に自己申告しなければなりません。

もしも申告を怠ってしまったり、不正な内容の申告を行ってしまった場合は、追徴課税などの重いペナルティを課せられることになりかねません。

そのような事がないように、日頃から正確な記録保管や計算の仕組みを整えておくことが重要です。

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