近年、身近な投資手段のひとつとして定着してきた仮想通貨取引ですが、一定額以上の所得を得た場合には確定申告をして税金を納める必要があります。
一般的に会社員が副業として仮想通貨の取引を行った場合は、雑所得が20万円を超えた時点で、会社に勤めていない専業主婦や個人事業主などの場合は雑所得が原則48万円を超えた時点で確定申告の対象です。ところが、この認識があったとしても想像以上に利益がでてしまったり、認識の違いにより確定申告の時期に納税資金が足りないというケースもあるかもしれません。
そこで今回は、納税ができない場合に課せられるペナルティや、その際に利用できる制度について解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。
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仮想通貨の税金を払えないときに生じるペナルティ
税金を正しい金額で期限までに納付しなかった場合は追徴課税を受けることになります。
支払い状況に応じて課せされる税金が変わってきますので、その種類について一つひとつ見ていきましょう。
加算税
加算税とは、税金の申告や納付に不備があった際にペナルティとして課せられる税金です。
税金を支払わなかった背景や状況に応じて、以下の4種類の加算税が課せられます。
参考:財務省「加算税の概要」
①無申告加算税
申告期限内に確定申告を行わなかった場合に課せられるペナルティです。
申告期限後に確定申告を行った場合や、確定申告を行わずに税務署による決定が行われた場合、またはこれらに対して修正申告や更正があった場合が該当します。原則として、納付すべき税額に対して15%(50万円を超える部分には20%、令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するもの(令和5年分以降)については、300万円を超える部分は30パーセント)の課税割合で加算されます。
ただし、申告期限から1ヵ月以内に期限後申告を行った場合は原則として不適用になるほか、税務調査による更正・決定を予知する前に申告した場合は課税割合が5%に軽減されるという措置もあります。
【用語解説】
修正申告:税務署から受けた指摘内容を認め、自主的に申告をやり直すこと
更正:修正申告に応じなかった結果、税務署が処分として申告内容を正すこと
決定:申告をしていない人に対し、税務署が調査に基づいて納めるべき税額を指定こと
②過少申告加算税
申告期限内に確定申告を行ったものの、本来あるべき納税額よりも少なく申告していた際にペナルティとして課せられる税金です。
期限内申告について修正申告・更正があった場合が該当し、追加で納める税額(増差税額)に対して10%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分は15%)の課税割合で加算されます。
ただし、税務調査による更正を予知する前に修正申告を行った場合は不適用となる措置もあります。
③不納付加算税
法定納期限内に源泉所得税を納付しなかった際にペナルティとして課せられる税金です。
従業員を雇用している企業などの源泉徴収を行う者が、源泉徴収等による国税を法定納期限後に納付したり、納税の告知を受けた場合に該当します。納付すべき税額に対して10%の課税割合で加算されることになりますが、法定納期限から1ヵ月以内の納付は不適用になるほか、納税の告知を予知する前に納付した場合は5%に軽減される措置もあります。
源泉徴収を行う事業者などが対象ですので、個人が副業で仮想通貨取引を行っている場合は直接関係しない加算税と言って良いでしょう。
④重加算税
仮装や隠蔽など、いわゆる脱税があったと税務署が判断した際にペナルティとして課せられる税金です。
過少申告加算税・不納付加算税に代えて35%、無申告加算税に代えて40%という非常に高い課税割合で加算されることになります。また悪質な場合は加算税に留まらず、刑事罰の対象となる場合もあります。
延滞税
延滞税とは、税金を未納のまま放置している間に利息に相当するものとして課せられる税金です。
原則として、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に対して次の割合を適用して加算されます。
納期限までの期間および納期限の翌日から2ヵ月を経過する日まで | 「年率7.3%」と「延滞税特例基準割合 + 1%」のいずれか低い方の割合 |
納期限の翌日から2ヵ月を経過する日の翌日以降 | 「年率14.6%」と「延滞税特例基準割合 + 7.3%」のいずれか低い方の割合 |
延滞税特例基準割合とは、銀行の新規短期貸出約定平均金利をもとに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合です。令和5年の延滞税特例基準割合は2.4%とされています。
【用語解説】
法定納期限:法律で定められた所得税の納付期限で、通常は確定申告期限と同じ3月15日
納期限 :期限内申告の場合は法定納期限、期限後申告または修正申告の場合は申告書提出日、更正または決定の場合は通知書発行日から1ヵ月
延滞税の計算方法
延滞税は、次の計算式で求めることができます。
本来納付すべき税額 × 延滞税の割合 × 納期限の翌日から納付日までの日数/365(日) = 延滞税額 |
なお、納付日までの日数が2ヵ月を超える場合は、2ヵ月以内の分と2ヵ月を超える分をそれぞれ計算し、合算する必要があります。
延滞税は日数に応じて加算されるため数日の延滞であれば少額で済む場合もありますが、長期間になると非常に大きな負担となります。
例:納付日まで2か月と10日かかった場合
項目 | ①2ヵ月を経過するまで | ②2ヵ月を超える分 |
本来納付すべき税額 | ¥1,000,000 | ¥1,000,000 |
延滞税の割合 | 7.3% | 14.6% |
納付日までの日数 | 60 | 10 |
¥12,000 | ¥4,000 |
①+②=16,000
仮想通貨の税金が払えないときにかかる追徴課税の具体例
ここでは、追徴課税が発生する具体例を2つご紹介します。
●例1 .納付期限内に確定申告は行ったものの、申告した納税額が少ないと税務署から指摘を受けたAさんの場合
Aさんはイーサリアムのトレードやアルトコインのマイニングによる所得がありましたが、マイニング報酬は売却して利益確定するまで所得にならないと勘違いした結果、一部の所得金額を含めずに確定申告を行ってしまいました。後日、税務署から申告漏れの指摘を受けて過少申告が判明しました。 本来納付すべき所得税 : 100万円 |
知識不足によりマイニングの所得額を正しく申告できなかったAさんは、過少申告加算税の対象となるほか、不足額を納税するまでの184日分が延滞税の対象になります。
所得税額 | 100万円 - 50万円 = 50万円(増差税額) |
過少申告加算税 | 50万円(増差税額) × 10%(課税割合) = 5万円 |
延滞税 | 50万円(増差税額) × 2.4%(延滞税特例基準割合 + 1%) × 184日 / 365日 = 6,000円(100円未満切り捨て) |
追徴課税合計額 | 55万6,000円 |
Aさんは5万円以上の税金を余計に支払うことになりました。自分の行っている取引について誤解による過少申告を防ぐためには、税務上の取り扱いをしっかりと把握しておくことが重要です。
●例2 .故意に確定申告を行っていないと税務署から指摘を受けたBさんの場合
Bさんは「海外取引所で得た所得であれば確定申告を行わなくてもバレないのでは」と安易に考え、海外取引所で行った売買による課税所得を隠蔽し、確定申告を行いませんでした。その結果故意に確定申告を行っていないと税務署に判断され、9月15日に決定通知書が発行されました。 本来納付すべき所得税 : 100万円 |
Bさんは期限までに確定申告を行わなかったため、通常であれば無申告加算税の対象となりますが、税務署が隠蔽があったと判断したことで重加算税の対象となりました。この場合、無申告加算税に代えて40%の重加算税が加算されることになります。
また、決定通知書発行日から1ヵ月以上経過してから納付したため、延滞税についても一部の期間で高い割合が適用されます。
所得税額 | 100万円(増差税額) |
重加算税 | 100万円(増差税額) × 40%(課税割合) = 40万円 |
延滞税 | 100万円(増差税額) × 2.4%(延滞税特例基準割合 + 1%) × 214日 / 365日 = 14,071円(①) 100万円(増差税額) × 8.7%(延滞税特例基準割合 + 7.3%) × 15日 / 365日 = 3,575円(②) |
追徴課税合計額 | ① + ② = 17,600円(100円未満切り捨て) 141万7,600円 |
安易な考えで故意に確定申告を行わなかったBさんは、結果的に40万円以上も余計な税金を支払うことになりました。また、悪質な場合は刑事罰の対象となる場合もあります。所得隠しは絶対にしないようにしましょう。
仮想通貨の税金が払えないときにできること
税金を払う意思はあるもののどうしても納税資金を用意できない場合は、納税を猶予してくれる制度があります。それぞれを見ていきましょう。
換価の猶予
国税をまとめて納付すると事業の継続や生活の維持が困難になる恐れがあると認められる場合、納期限から6ヵ月以内に申請することで原則1年間、財産の差し押さえや換価(売却)が猶予される制度です。
納税の猶予
納税者が納付すべき国税をまとめて納付することができないと認められる場合、原則1年間納税が猶予されるほか、延滞税の全部または一部が免除される制度です。
どちらも申請と担保の提供が必要
どちらの猶予も税務署に申請を行う必要があるほか、原則として猶予を受ける金額に相当する担保を提供する必要があります。
ただし、以下に該当する場合は担保提供をする必要はありません。
● 猶予を受ける金額が100万円以下である場合
● 猶予を受ける期間が3ヵ月以内である場合
● 担保として提供できる種類の財産がないなどの事情がある場合
参考:国税庁「国税を一時に納付できない方のために猶予制度があります」
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